第10話 情事 1 茶楽雄

【下司野 茶楽雄 Side 】


 羅怜央といよなが課題の資料を学校に忘れたらしく取りに行っている。


「いよなお前が持って帰ってくるって言ったじゃねぇか!」


「言ってないもん!ラーくんが言ったんだもん!」


「いよなだ!」


「ラーくん!」


「どーでもいいから取りに行ってこい」


 ケリのつかない言い争いしてもしゃーねーだろうが、コイツラはよくこーやってじゃれ合う。


「ああ、行ってくるわ」


「ラーくん信用できないから自分の資料使う!だからあたしも行くぅ」


 いよながまた意味不明なこと言ってやがるな。まあ単純に羅怜央と一緒に行きたいだけだろう。

 こいつも存外諦めが悪い、その割になんのアクションも起こさない。ホントに欲しいなら奪えよって話だ。まあまだ奪い切れてない俺が言えたことじゃねぇな……


 


 ガキの頃から莉音に惚れていた。ただ莉音が俺達4人で居るのが好きなのを知っていたし、俺自身も羅怜央を核とした4人の空気が心地良かったのもあってなにもアクションを起こさなかった。

 

 中学にあがって周囲の莉音といよなを見る目に色がつきはじめたのを感じ、俺もアクションを起こすべきかと思い始めた矢先に羅怜央に横から掻っ攫われた……


「茶楽雄、聞いてくれ!莉音と付き合うことになった!」


 あのときは不覚にも目の前が真っ暗になりかけて、前後の記憶があやふやになって自分が何を話したか覚えていない……ただ照れた羅怜央の笑顔と少し困ったような顔で笑う莉音の顔だけはやけに記憶に残っている。


 多分羅怜央の嬉しそうな様子といよなの怪訝な顔から類推するに俺は羅怜央を祝福したのだろう……

 無意識とはいえ祝福したのは、相手がまがりなりにも親友だと認めている羅怜央だったからだろう。それなら俺はすっぱり諦めるべきなんだろうと、他の女と付き合ったりもしたがあまり長続きしなかった。


 そんな状況でも俺達4人の関係は歪ながらもクルクル淀みなく回り続けている。と思っていた、羅怜央と莉音の雰囲気から一線を越えた事を感じ取るまでは。


 男と女が付き合っているんだあり得る話だった、俺だって経験をしているのだからこいつらがしない道理はない。頭ではそう理解しているが、こいつらの関係に思い至った瞬間の激情を俺は忘れないだろう……


 ああ俺はこんなに狂おしいまでに莉音を愛しているんだ、羅怜央を殺してしまいたくなるほどに……


 そこからはどうやって莉音を奪い取るかそればかりを考えるようになった。力尽く?論外だ……薬でも盛るか?馬鹿か俺は。羅怜央を陥れて嵌めるか?ちょっと考えた……

 考えて考えて出てきた答えが正攻法だった……莉音を近くの公園に呼び出して、ストレートに口説いた。

 

「気持ちは嬉しいけど私には羅怜央くんが居るの」


「やっぱりあいつの……事が好きか?」


「当たり前です」


「分かった……お前のことは……諦める」


「ごめんなさい」


「だから俺に思い出をくれないか?」


 これが俺の考えた真の答えだった、みっともなかろうがなんだろうが想いを遂げてみせる。1回既成事実を作ってしまえば虜に出来る自信がある。身体から奪って最後には心も奪ってやる!


 実際そうなった……

 

「あっすごいっ……なにこれ……こんなの知らない……」

「だめぇ……いい……あっそこだめぇ」

「あっダメダメダメダメぇ……あっー!」

「ハァハァハァハァ───」


「羅怜央とどっちが良かった?」


「ハァハァ……知らないわよ」


 他の女なら次からは誘えばホイホイ乗ってきたが、

莉音もそんなに変わらなかったな……


「あのときだけって約束だよ?」


「そんなこと言ってもよぉ」


「やめてあなたを嫌いになりたくないの……」


 でもよ俺とふたりで会うって事はそういうことだよなぁ?


「ハァハァハァハァ……嫌いよ……」


「クククッそうかよ?その割には……なぁ」


「えっうそまた?……あんっ」


 逢瀬を重ねていっても、しかし唇だけは莉音は許さなかった……それがお前を認めないと言ってるようで、それさえ莉音に求めさせたらこいつは俺のものになると確信できた。



 今日ここで、羅怜央の部屋でお前の全部を奪ってみせる。






◇◆◇◆


お読みいただきありがとうございます。



これ消されないかな?大丈夫ですよね?今時これくらいねぇ……あれはマッサージです!(暴論)


次回は莉音sideです。


次回も読んでいただけると嬉しいです。


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