第4話 浮気 2


 ホテルの出入り口から腕を組んだ2人が出てくるところが見える。茶楽雄はどこか満足気で勝ち誇っている。莉音はちょっとうつむき気味で表情は見えないが、腕をしっかり茶楽雄の腕に絡めている。さっきまでこいつらこのホテルで……と思った瞬間胃から込み上げてくるものがあり、


「うげええええええええええええ」


 あまりの悍ましさに怖気と不快感が全身を駆け巡る。


「ラーくん?ラーくんしっかり!」

 

 いよなが背中をさすってくれるがそれすらも不快で、払いのけたくなる衝動を必死にこらえて胃の中のものを吐き出す。


「うえっぷ……悪い水買ってきてくれないか?」


「うん!急いで買ってくるから待っててね?」


 ホントに急いで行ってくれた。

 その背中を見ていてふと莉音とセックスしたときに見た莉音のスラっとした肢体に、茶楽雄が絡みついているところを想像してしまった。


「おごぇーええええ……うぐえええー」


 もう胃の中にものは残っていないので胃液を吐き出すが苦しさがハンパない……

 意識して考えないようにしようとするが、そう思えば思うほど莉音と茶楽雄のあられもない姿を想像してしまいその度に嘔吐感を感じるという悪循環に陥っている。


 ひとしきり吐いて嘔吐感も落ち着いてきたころ、いよながコンビニで買って来てくれたのだろう2リットルのペットボトルを渡してきた。


「ラーくん水だよ飲める?口移ししようか?」


 なんでだよ!この状況でツッコミさせるなよ!うんと言ったらするのかよ!

 ツッこむ代わりにちょっと乱暴にいよなから水を受取り、ゆすいで口内の嫌なにおいを追い出す。


「助かったサンキュ……いくらだった?」


「いいよぉ、ただのお水だし」


「ありがとう」





「すまんな、気持ち悪いもの見せた」


 やっと落ち着いて話ができるまでになったので、とりあえず詫びを入れた。


「そんな事ないよぉ、それだけショックだったんでしょ?こっちこそごめんね口移し出来なかったねぇ」


「まだ言うんかい!頼むから今はまだツッコミやらせんなよ!」


「クスクス……ごめんねぇ」


 クスクス笑いながら大粒の涙を流して泣いているいよなに気付いてギョッとする。


「なんでお前が泣くんだよ?」


「だってラーくんが泣かないんだもん……ラーくん泣いてもいいんだよ?私ですら泣いちゃうくらいなんだから、ラーくんが泣きたくないわけないんだよ?ホントはラーくん自身も気付いてるんでしょ?自分が泣きたいんだって……ただ男の子だから泣いちゃ駄目だって勘違いしてるだけなんだよね?」


 やめてくれ!そんな事言われたらずっと我慢してるのに涙が出ちまうだろうが!


「泣けるかよ!男が泣いていい理由は3つだけだ……生まれたときと親が死ん……とき……と……ざい゙……を゙お゙どじ……だときだ……だ」


 駄目だ我慢できねぇ。両膝を地面について拳で地面を殴りつける……


「うわぁあああああーーりおんーなんでだよー!茶楽雄なんでだーおれがなにがわる゙い゙ことしだか?お゙まえがら何かとっ゙たが?おれがら莉音をとら゙な゙いでくれよ゙ーうぁあああ」


「ラーくん!ラーくん……悲しいときはいっぱいいっぱい泣いていいんだよ?」


 いよなが涙を零しながら優しく抱きしめてくれた……いよなの体温が暖かくて涙が止まらなかった……







◇◆◇◆


お読みいただきありがとうございます。


浮気が発覚したら羅怜央くんが大号泣するのは私の作品の様式美です。


次回も読んでいただけると嬉しいです。



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