エピローグ
「クリフ。戻って来たんだね。集落の復興は順調だよ」
「ったく。戦いのときには逃げるのにこういうことは逃げないのは立派だとは思うわ」
「ベラ。そんなこと言わないでよ。傷つくなあ」
「冗談よ。それにあの時の勇気を忘れたりしないわ」
「あの時って」
「ただいまクレス。集落の復興順調でよかったよ」
久しぶりに見る集落だが、もうそのほとんどが戻っている。クレスをはじめとするみんなが頑張ってくれたおかげだろう。
「アベルさんは倒してきたよ」
「そっか。お疲れ様」
「黒幕も倒してきたし今日は集落でゆっくりしていこうと思うよ」
「そういえば冒険者始めたんだって。ボッツも一緒なのは怖いけど」
「ボッツはいい奴だぞクレス」
「そうだよ。何だって人をそんなふうに見るんだ」
「あわわわわ」
クレスにボッツが言い争うのが始まるが一方的だ。この展開も懐かしいものだ。
「クリフ。後で話がある」
「何だ。アルマ。改まって」
俺は、アルマの方向に向き直るが様子が少しおかしい。顔を赤らめているような。
「クリフさん。気付いてないんですね。まあ、後でのお楽しみに」
「茶化すなネル」
「はわわ。すみません」
「後で森に来いクリフ」
「分かった。なんでも話していいよ」
そして約束通り森に来た。この森も随分と懐かしく感じる。冒険者での期間が長かっただろうか。
「この辺りでいいか」
「で、何なの」
「その、クリフ。私はお前のことが......好きだ」
自分の中のイヴが現れる。だが、樹が止める。そもそもこれはクリフ・サンドワームとしての俺の恋愛事情なのだ。
「ありがとう。一緒に付き合おっか」
「いいのか。こんな女気無い私でも」
「そんなことないよ。アルマも女の子だってあった時にすぐにわかったから」
こうして、俺はアルマと付き合うことになった。その日の夜は集落の復興のパーティーだった。
「ほらほらどんどん飲みな」
すでに何倍ものエール酒を注がれている。俺は悪酔いして頭が痛くなっていた。
「それでよー。お前はアルマとどこまで進んだんだー」
「何もしてない。まだ何も。屈頭が痛い」
「クリフー。まだ飲めそして■■■」
「まだそういうことは」
アルマに押し倒される。だが、そこへボディエが割って入りアルマを止めた。
「ありがとうございますボディエさん。アルマちょっと酔ってて」
「はあ、酒の席になるとこういうことが増えて困っているものだよ。それよりお前たちの武勇伝を聞かせてもらおうじゃないか」
こうして、俺達は集落の皆の前で冒険の話をした。仲間でアベルを倒し魔王を倒したことも脚色して言ってその場が盛り上がった。この冒険の日々には仲間の絆がより深まったし、良かったと思っている。
その後日俺は、墓参りに行った。アルマやボッツ、ネルもついてきてくれた。
「なあ、この勇者とは昔どういう関係だったんだクリフ」
「教師と生徒みたいなもんかな」
「その教師が別の人格によって生徒を殺してしまったわけかよ。でも墓参りちゃんとしてることはえらいと思うぞ。俺なら逃げ出す」
「未霊。本当にごめんな」
墓の前で涙を流しながら謝罪する。
「クリフ。お前には私たちがいる。何があってもお前を見捨てることはない。例え生徒を殺した教師であってもだ」
「その心には感謝するよ」
涙をぬぐい。俺は立つ。今日も、新しい一日が始まる。
君トノ傷ナノ物語 禿鷹吟 @akumanoko9777
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