第8話 旅立ち

「クレス君、クリフ君。残念だけど君のお父さんは戦死した」

「嘘だろ」

「信じられないよ。何かの間違いじゃないのボディエさん」


 俺達は集落で強い方の鬼人族の剣士ボディエ・オーガスタに父の訃報を聞いた。父はゴブリンとではなく狐亜人の男と戦っていたらしい。


「アベル・クリムトが裏切った。もともとあいつは信用できない奴だったが、ゴブリンを呼び出したのもあいつらしい」

「あんな数のゴブリンを呼び出す?」

「ああ、召喚魔術によって魔物を呼び出す。それがあいつの得意技だった。外の奴らと内通していたのだろう。人間もその時には混じっていたよ」

「それでも父さんは助かる道はあったはずだが、どうして死んだんだ?」

「クリフ、クレス。お前たちの父さんはその人間と戦って死んだ。相手は勇者と名乗っていたそうだ」


 勇者と聞いてふざけるなと思う。この集落は亜人たちが平和に住んでいた。だが、勇者と自ら名乗る人間にその平和を乱された。俺はその人間に怒りを覚えた。


「クレス。ここから行く当てもないし、俺は勇者と自ら名乗ってるやつを強くなって殺しに行く」

「クリフ。そんな無茶な」

「クリフ、それ俺も連れていけ」


 ボッツが短い黒髪を搔きながら、黄色い目で食い入るように見ながら話に割り込んできた。ボッツは今回ゴブリン達と戦って勇士を見せた。連れて行くのもいいだろう。


「クリフ。私も行かせろ」


 アルマもそれに続いた。炎のような赤髪を揺らしてそのサファイアのように青い目をこちらに向けて走ってきた。アルマがついてきてくれるのならかなり心強い。


「私も連れて行ってもらえませんか。魔法はたくさん使えますから」


 ネルが銀髪を靡かせながら走ってきた。緑色の瞳がこちらを見据えている。おどおどしていてとがった耳がしょげていたが、ゴブリンとの戦闘時の回復魔法はありがたかったし連れて行ってもいいと思っている。


「分かった。みんなで行こう。クレスはついてくるか」

「......やめておく。僕は集落の復興を手伝うことにするよ」

「分かった。お前がそう言うなら俺は口出ししない。みんな、ついてきてくれるのはありがとう。一緒に勇者と名乗る愚か者を倒しに行こう」

「おう、クリフお前も強くなったもんだよなあの暴走した時も含めて俺はお前の強さを信じてるよ」

「クリフ、私はお前の父が殺されたことは直接的な恨みではないが、お前が行くというなら私はお前の復讐にも付き合おう」

「よろしくお願いします。クリフさん」


 こうして、俺達は父を殺した自称勇者とアベル・クリムトを倒す旅に出ることになった。アベルは、俺が父に拾われた時に一緒にいたらしいが記憶は前に暴走した時にその記憶も復活した。あの時のアベルは父を慕っているみたいだったが何があったのだろうか。それを聞くのも含めて俺は自称勇者の方を倒しに行こうと思っている。やはり父が殺されたもあるが、そちらの方が記憶の中では黒幕としては臭う気がしたからからだ。


「クリフ。これから冒険者をやって生計を立ててこうぜ。魔物を殺して稼げて行動範囲も自由人に近いからよ」

「そうだなボッツ。俺達は冒険者をやろう」

「クラン名は何にするんだ」

「どうしましょう。何がいいですかね」


 俺達は1週間くらい傷を治すために休んだ後、冒険者をするにあたってクランを考えた。結果、襲撃之反逆レイドレジスタンスに決まり、冒険者として戦っていくことになった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る