第24話
掲示板【銀座にも負けない】奥多摩迷宮スレ5【満員御礼】
・嵐にはティルトウェイトの祝福を
ささやき - いのり - えいしょう - ねんじろ!
:今日の奥多摩迷宮は立ち入り禁止だ
:入るなら俺を倒してからいけ!
:遠慮なく
:ウグワー
:朝から奥多摩くんだりしたのにイーターがいねえ
:ふざけんな
:安口女史ならいるぞ
:今日も美人だな
:安口女史はいつでも美人だ
:現地組はどれくらいいるんだ
:ノシ
:(*´▽`)ノ ハーイ♪
:挙手
:(´∀`∩
:おっさんが紛れてるなw
:うるせーどうせオッサン探索者だよ
:ってことはかなりに古株?
:魔女とは同期だ
:リアルオッサン降臨
:んなことはいいからイーターはいつ来るんだ?
:現地はのんびりしてるぜ
:配信野郎どもと野次馬でごった返してる
:ギルド職員は対応で忙しそうだ
:駐車場待ち渋滞がすげえぜ
:イーターのせいだな
:どっちかってーとギルド本部のせいだろw
:を、シャイニングがいるぞ
:なんだそれ
:露骨に話題そらされた
:大宮迷宮のトップパーティだ。国内でも少ない5階到達組だな
:すごいじゃん
:俺の方が凄い
:おっさんはハウス!
:俺はおっさんじゃねえ!
:俺のために喧嘩はやめて!
:きもいからハウス!
:ひでぇw
:シャイニングってやつらが潜るのか?
:魔女がローブ着てるぜ
:マジか?
:リアル魔女?
:リアル美魔女ではあるな
:現役復帰か!?
:イーター、寝坊で立川にいるとか?
:寝坊w
:立川と奥多摩なら車で1時間ちょいだろ
:早く始めろよー、トイレが混むんだよ
:過疎の奥多摩だからな
:探索者の数でトイレの数が決まります
:それな
:割と切実
:維持費もバカにならんし
:イーターきた
:いつものパーカーで草
:迷宮外に武具は持ち出せねーよ
:魔女から短刀を受け取ってる
:なお、それだけの模様w
:まじかw
:迷宮舐めすぎ
:今日が命日になるな
:縁起の悪いことを言うな
:イーター+魔女+シャイニング4人で潜るらしいというか潜ってった
:ソロで行くんじゃないのか
:魔女がカメラを持って行ったから撮影を兼ねると思われ
:フラック戦を公開するって噂が流れてる
:どこでだよw
:ここ奥多摩で
:余裕ありすぎだろ
:これで失敗したら笑い種だな
:潜ったからしばらくは暇だな
:外に行っても店はねえしなー
:スーパーで食材を買い込むのが奥多摩仕草だ
:BBQじゃねーしw
:待ってる間暇だな
:しりとりでもするか?
:イーターがフラックを倒せるか賭けしねえ?
:俺は倒せるほうに賭けるぞ
:俺もだ
:同じく
:なんだかんだでイーターの信頼度が高いw
:暇だな
:かれこれ3時間は放置プレイだしな
:イーター帰還
:転移の呪文で帰ってきやがった
:魔女に説教されてるw
:そこんとこ詳しく
:迷宮への階段付近に突然6人が現れる→荷物が多くて歩くのが面倒だとイーターが地下6階から転移の呪文をつかう→もともと人払いをしていたから事故にはならなかったが一歩間違えば融合事故→イーター正座で説教w
:それはダメだろw
:面倒も極まったなw
:なにやってんだよ
:【朗報】武具沢山ゲットの様子
:マ?
:まじか!
:複数の剣と鎧一式と盾も見えた
:シャイニングの連中ほくほく顔
:留守番メンバーもそろってゲット喜んでる
:これは茜の姐御からも説教だなw
:羨ましい俺と変われ
:変態だ―
:里奈さんにも怒られるやつだろ
:なにをゲットしたかは本部が発表するだろ
:それ待ちか
:魔女から発表、フラック倒して6階踏破
:うぉぉぉぉ!
:怪我人とかいるのか?
:全員ピンピンしてるぜ
:無事で何より
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その夜、ギルド本部の公式チャンネルでフラック戦の動画が流された。柊と茜はスライム迷宮の休憩スペースにノートPCを持ち込んで有線接続によるネット回線でそれを見ている。迷宮内に電波は飛ばないがケーブルを引くことで通信は可能だった。里奈は精神的な疲労は激しいので部屋で就寝だ。
動画はフラックのボス部屋前から始まり、今まさに柊が扉を開けるところだ。画面の背後には多くのコメントが流れており、期待が高いことを示している。
「柊少年だけパーカーだな」
「……防具を着ても意味ないっぽいですし」
「同じような考えで転移の呪文を使ったのかー」
「痛、痛いです茜さん!」
茜に頭を掴まれこめかみを拳でぐりぐりされる柊。茜の腕の筋肉が盛り上がっているのでかなり本気だ。それだけのことをしでかしたのだから仕方がない。
「フラックが召喚したのは武士だけど外国だとその国の戦士とかなんですかね」
「中国の迷宮でもマイナーダイミョウは出るぞ」
「そこは同じなんですね」
「日本の迷宮でもゾンビとかワーウルフが出るだろ?」
「まぁ、そうですね」
フラックが当世具足の武士を召喚したあたりでまたコメントが激しくなる。安口が呪文を唱えた時が最高潮だ。
「久しぶりに大暴れできて師匠も楽しそうだな」
茜が楽しそうに笑っている。のんきに見ていられるのは結果を知っているからと柊の強さの信頼からだ。
場面はフラックを倒した後になっている。シャイニングの面々がドロップ品を鑑定している後ろで柊が下に続く階段を覗いているのが映されている。
「柊、普通の迷宮に行きたいか?」
ふと言われた言葉に、柊は茜を見た。茜はちょっと寂しそうな顔で柊を見つめている。
フラックを余裕で倒したことによってほぼ日本で一番の探索者となってしまった柊は、どこの迷宮にも行ける。その力を存分にふるって活躍するはずだ。潜っても益がないこのスライム迷宮にいなくてもいいのだ。
茜としてはどうなのだろうと柊は思うが、その答えがこの表情なのだろうと結論付けた。
柊の答えは簡単だ。
茜の手を取り両手で包み、じっと目を見つめる。
「茜さんがいれば行きます」
「……いなきゃいかねえのか?」
「……茜さん同伴とか日帰り出張くらいなら考えますけど」
「ぶれねえなぁお前は」
「茜さんが好きですから。離れませんよ?」
「もったいねえことするな、お前も」
茜がくしゃっと笑った。どこかで「ギルドの壁は薄いんだかんね!」と叫んでいる声が聞こえた。
一方、報告のためにギルド本部に向かっていた安口は新宿の本部の会議室で配信の様子を眺めていた。
「フラックにつくまでの動画も公開したら大騒ぎだろうな」
柊のLKの高さで戦闘後に入手したアイテムが普段からは考えられない数になっていたのだ。
「本当ならほかの迷宮に送り込みたいところだが、まぁ本人は拒否するだろうな」
忠犬のごとく茜になついている柊を見ていた安口は、断念せざるを得なかった。他の迷宮に無理矢理に連れていくことは可能だが迷宮に入った柊を止める者がいない。ギルドで暴れれば死傷者がでるのは間違いない。それに、柊の変わりはいない。唯一の最高戦力の機嫌を損ねるのはギルドとしてもよくない。
できれば茜にうまく立ち回ってもらってたまには他の迷宮にと仕向けることくらいかと考えていた時、安口のスマホが鳴った。相手は城内だ。
「私だ……テレビ? ちょっと待て」
通話相手の城内の要望で配信画面を止めテレビに変更した。画面上にテロップが流れている。
『東京湾に浮かぶ男性の遺体発見』
甲賀のことだろうと安口は確信した。そうしたのだから。結局、甲賀ことカーズはハメられたのだ。
柊がフラックを倒すこと自体が餌だった。その時間帯はスライム迷宮に柊も安口もおらず手薄だ。甲賀自身が探索者で腕に自信があるだろうことと焦りを考慮すれば何らかのアクションを起こすと予想できた。
里奈の目の前で捕縛し、もう安全なんだと知らしめることも目的だった。
尋問で口を割ることも考えられたがカーズが応じるとも思えない。迷宮内では事故は起こる。それはスライム迷宮でも、だ。実際には無力化する迷宮外で事は起こされたのだが。
大きなスーツケースに詰め込まれたカーズは御庭番の仲間によって処され、東京湾に放り投げられた。餅屋は餅屋だ。
「反社の繋がりが切れてしまったのは痛手だがまぁ公安も御庭番もいる。そのうち鏖だろう」
安口は里奈にどう説明するかを考えることにした。
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