青く光る星々よ

レイノルズ

凡人は天才に勝てないのかな…

もう嫌になった。何にって?自分が平凡なことにだよ。

いつも僕は受験に向けて、毎日4時間とか勉強しているし、授業も寝ずにちゃんと受けているし、塾にだって行っている。それなのに、授業は寝るし、自学は適当だし、ゲームはすごいする奴は僕よりもテストの点は20点も上だ。


したいことも見つからないし、将来も不安だし…

とにかく、息苦しい


勉強に疲れたから少し自暴自棄になって、深夜の公園に来てみた。時刻は午前1時過ぎ、誰も来るはずがない。缶コーヒーを買ってベンチで飲んだりした。最初は温かかったのに、飲み干すとすぐ冷たくなってしまった。


一人だけの夜の公園はとてもむなしくて、悲しくて、寒くて…。


帰ろう。そう思ったとき後ろから声をかけられる。


「君、こんな時間に何してんの?」


同い年ぐらいのパーカーを着た綺麗な女の子だった。


「え、あ、いや、休憩してて…、勉強に疲れたから…」


「ふ~ん、名前は?」


「え、ええと、泉良太いずみりょうた。君は?」


「私?彼岸ひぎしあやね。よろしく!」


差し出された手のひら、自分も差し出す


無機物の缶コーヒーよりも温かい、人の温かさだった。


ベンチに座り、話を始める。

「こんな時間まで勉強とは、ご苦労なこったね。今日は何の勉強したんだい?」


「今日は数学を、ちょっとね。微分積分の問題がまだいまいちわからなくて…。」


「あ~、微積ね、はいはい、わかるよ。確かにあそこ難しいよね~。」


「ですよね、難しいですよね、普通は。でも…」


あいつの点数が頭をかすめる。


「なんだい、悩んでることがあるなら私に言いなよ~。相談ならのるよ。こう見えて

私、何人もの友達の相談を聞いてきたんだから!」


「いや、いいですよ。自分が悪いんですから…。努力が足りてないだけですし。」


自分の頑張りが足りてないのだ、そう思うことにしたのだ…。


「もしかして、自分よりも点数の高いやつがいる、とかかな?」


「……なんで、…わかったんですか?」


「お、当たった?結構、当てずっぽうだったんだけれどね。」


ニヤニヤ笑いながら顔を覗いてくる。なんだか恥ずかしいような…。


「まあ、上ばっかり見ていてもしょうがないよ。」


「…そうですよね。自分に合ったところで戦わないといけませんよね。」


あいつと僕は違うんだ…。僕は凡人で、あいつは天才で…。


「そういえば、君って将来の夢とか決まってんの?」


「いや、じつは、全く考えてなくて。どこに行きたいかも曖昧だし…。」


将来のこと…偏差値にあった大学に行くことしか考えてなかった。

でも、それでも、勉強は頑張ってきたんだ。それなのにあいつは…。


「自分が何をしたいのかもわからないですし。それに僕は凡人で、天才にはかなわないし、頑張ったところで…。」


「もしかして、凡人は天才にかなわないって思ってる?」


「だって、そうですよね。実際、僕がどれだけひたむきに頑張っても、簡単に僕よりもいい成績が取れる人が何人もいるんですし…。」


「確かにね。」


彼女は一呼吸おいてから、僕に向かっていった。


「…だけれど、その考え方は違うと思う。だって、凡人は生きながらに得たもので戦う人たちのことだよ。確かに努力も大切だけれど、競うところはそこじゃない。経験を通して見つけた、自分だけの価値でこの世を生き抜こうとするんだから。」


自分だけの価値で生き抜く…自分とは違う考え方だった。結果だけを必死に追い求めて生きてきた僕とは違う、前向きな考え方。


「実は私、プロのカメラマンになることが夢なんだ…。今日は家に置いてきちゃったんだけどね。数年やってきて、コンテストに何枚か送ってるんだけれど、全っ然だめなんだ。それでも、あきらめようとは思わない。私は私を信じているから。」


なんだか、急にまぶしく見えてきた。

ひたむきに自分の中のきらめきを探そうとするその姿に…


俺も、そんな姿になりたい。心の底から湧き出た本音。

点数じゃない、誰にも図れない自分だけの価値、か…





「や、調子はどう?」


「元気だよ、そっちは?」


「いい感じ。あ、それで小説のほうはどうなったの?」


「なんと!今日は2人も見てくれたんだ、これぞ夢への第一歩ってやつかな。」


「お、おお?なんか少ないね…?軽く100人は超えるって言ってた気が…」


「そんなこと、言った覚えないね。そっちの写真は?」


「入選、したんだよ。」 ……

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