54話 ダンジョンは休業中でござる
「な、なんっすか!? これえ」
「ホ、ホントね。どうしちゃったのかしら……」
次元の穴を抜けて久しぶりにやってきた【生態系の迷宮】の様子に、アキナとレナは驚きを隠せなかった。
「う、受付に配信者が1人もいねえっす。ジン君もいねえっす」
「売店も閉まってて、棚に商品がなにもないわ。灯りまで消えちゃってるし」
なにが起こったのか分からず、周囲をキョロキョロと見回しながら、レナに話しかける。
「レナちゃん、どうしてこんな事になってるのか×とかLINEで他の配信者さん達からなにか連絡はなかったの?」
「LINEじゃダンジョン配信やってる配信者からは最近はなんの連絡もないっす……。×も最近ウチは見てなくて。アキさんはどうなんっすか?」
「私は×はアカウントだけ作ってる感じだから。ずっと施設の仕事が忙しかったしSNSは勿論、ニュースを見る暇もなかったわ」
「そうっすよね。ウチもそんな感じっす」
なにか不測の事態が起こってしまったのかと、アキナは考え始めた。
(もしかして、ジン君とゴンザレスがやられちゃったの? ……ううん。それはないわ。あのクラスを倒せる人は異世界でもごくわずかだし。仮にやられたとしてもジン君は、元々は神様だから、ちょっとしたらまた復活するだろうし……)
「理由分かったっす。ちょっと来て欲しいっす」
「う、うん」
レナが少し離れた場所で、怒りの表情を浮かべ仁王立ちしている。
(いったいなにがあったのかしら?)
「これ見て欲しいっす」
そう言って、あるものを指差した。
「え? 募金箱? こんなの今まで無かったわね。どうしたのかしら?」
「後ろの壁に貼り紙が貼ってあるから読んで欲しいっす」
「う、うん」
”安全が確保されるまでダンジョンは休業中でござる。つきましては再開と復興のために皆さん寄付をして欲しいでござる。”
「商人の子孫は日本人みたいだから日本語もかけるんっすか?」
「う、うん勇者の里の人達は、そうね。でも横のQRコードはいったいなんなのかしら?」
「アイツ、現金だけじゃなくPayPayでもカネ集めるつもりなんじゃないっすか? マジで意地汚ねえっす。ついでに字も汚いっすし」
「でも、どうしようかしら? 休業中みたいだから、やっぱり今日は帰った方が」
「アキさん、甘すぎっす」
「え? あまい?」
「商人の性格から考えて、色々やるのがめんどくさくなったから、何もやらずに楽にカネを儲けようと思って、こんな募金詐欺みたいなことしてるっす」
「うーん。運営は実質ジン君が全部取り仕切ってるし、普通に開けといた方がおカネになるだろうからそれは無いと思うけど」
「分かった! じゃあ商人はダンジョンで物凄いレアなアイテムを見つけたんで、誰にもそれ盗られない様にしてるんす! 多分向こうの世界の入り口にも立て札とかたてて、冒険者が入れない様にしてると思うっす」
「……それは、あるかも知れないわね」
「アキさん今日の企画変更っす! 商人が隠している物凄く高いレアアイテムを見つけ出して晒すLIVE配信をするっす!」
「いつか、れなちゃんが私に言った様に、物凄い金銀宝石とかじゃなけりゃ、見てる人の大半は、どれくらい凄い価値のものなのか分からないって思うから盛り上がらなそうだけど」
「大丈夫っす! 商人を痛い目に合わせれば、よく分かんなくても視聴者は、みんな喜ぶっす!」
(うーん、そんなものなのかしら。大丈夫かな?)
レナの企画は勿論、推測した休業の理由にもアキナは、疑問しか感じなかった。
(……本当に撮影に行って大丈夫なのかな?)
しかし、レナに引きずられる形で結局一緒に行くことになってしまった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ご拝読いただききありがとうございました。
っと言う訳で、ダンジョンを危機に陥れた何者かにアキナはこれから遭遇します。
思いっきり章のタイトルでネタバレしていますが、生暖かい目で許してください。
この小説を面白いと感じて頂けたなら★とフォローを頂ければ嬉しいです。
よろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます