第15話 嚆矢

 目覚めから体が怠かった。

 それに、腹部の鈍痛。




 食中しょくあたり―—という訳でもなさそうだし、風邪かな?

 いや、これはもしかして…。




 そらは急いでパソコンを立ち上げる。

 調べたかったのは”生理”について。


 女性の服装や所作については、色々調べて勉強してきたが、一つ大事なことを忘れていた。体は完全な女性なのだから、もある。




 生理とは、周期的に子宮内膜が出血(経血)を伴って剥がれ落ち、体外へ排出される。生理が始まった日から次の生理が始まる前の日までが月経周期であり、約4週間(28日前後)の周期で起きる現象。

 生理期の症状には、下腹部痛、頭痛や倦怠けんたい感など体の症状の他に、イライラしたり、逆に気分が落ち込むなどの心の症状も現れる。痛みや気分の抑揚は、子宮が収縮することによる生理痛やホルモンバランスの変化に依るもの。

 対処法としては、鎮痛剤を服用したり、入浴や温かい飲食で体を温める。また、ストレッチなどの軽度な運動をするのも効果的。


 大まかな概要を調べた後に、生理時に必要なものを抽出してみた。

 ・生理用ナプキン(昼用/夜用)

 ・生理用ショーツ

 ・ナプキンを入れるポーチ(2~3時間毎に交換するので、必要枚数を入れておくためのもの)




 今のところ経血漏れはしていないようだが、すぐにでも用意しておかなければならないだろう。

 ナプキン一つ取っても、どういうものが自分に合うのか、使い方すらも良く分からない。しかし、そこまで念入りに熟考している時間はなさそうだ。

 みなみに、授業に少し遅れる旨を伝えて、早い時間から開いている薬局へ行くことにした。初めての生理用品の購入は、なんだかちょっと恥ずかしい気分。やはり他人に知られたくないから、という気持ちが先行するからだろうか。薬局でも気を利かせてか、中身が見えない袋に入れてくれる。




 2時限目の授業から出席した天。

 女子たちは、南から天が遅れて出席する旨を聞いたと思われる。天に起きていることを何となく察している様子で、特に心配されるとか、遅れた理由を聞かれるということもなかった。考えてみれば、生理は小学校高学年頃から始まり、毎月の行事のようなものだ。彼女たちにしてみれば、すでに手慣れたもの。「ああ、いつものアレか」くらいに思っているのかもしれない。


 大学生活が始まって1か月近く経つ。ということは、女子たちの中には、今現在、進行中の人もいれば、ひと段落着いた人もいるのだろう。しかし、全くと言っていいほど気付くことができなかった。

 これまでの自分なら、「今日はこの子、調子が悪いのかな」程度にしか感じなかったことが、生理の症状に依るものだったんだな、と気付かされた。


 近年は中学校でも、男子生徒が生理について学ぶ機会があると聞いたことがある。調子が悪そうな女子に対して、どう接するかの良い機会になると思う。

 体調を気にかけてくれるのはありがたいが、その反面、女子には生理期間中であることに恥じらいを感じたり、隠したい思いもあるだろう。女子は女子なりに対処しているので、恋人など親しい間柄でもない限りは、深入りしない方がいいのかな、と思ったりもする。




 使い方を読んで装着はしてきたのだが、なんだかゴワゴワするし、動くとガサガサと音がする―—ような気がして、周りの反応が気になって仕方ない。

 授業にも身が入らず、この状況が1週間程度続くかと思うと気が滅入ってしまう。  

 これも生理症状の弊害か? 気力の問題なのか?





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