第14話 真相
上弦を過ぎた月が浮かぶ静かな夜。淡いブルーのカーテンで閉ざされた部屋の奥では、夕食を終えた
料理も簡単なものなら作れるようになった。女子力を上げるためというよりは、身の回りに必要なものが多すぎるから、節約するために自炊をしている。
早くアルバイト先を探さないといけないんだけど…。
スマホの着信メロディが鳴る。
画面には
「み、南!?」
「あ、テンちゃん? メール見たよ。ゴメン、電源落ちてたの」
「大丈夫なのか?」
「鼻詰まりが酷くて、声も出なかった」
「…鼻?」
「花粉症が超しんどくて休んじゃった」
「…はぁっ?」
即座には状況が飲み込めなかったが、話を聞く限りでは、怪しい新歓コンパに参加したわけでも、ストーカー被害に遭っていたわけでもなさそうだ。
花粉症の症状が酷すぎて、薬を飲んで眠り続けていた―—という様相。
皆が心配していたことを話したら、電話口で何度も「ごめんなさい」と言いながら泣き出した。
とても怒る気にはなれない。ともあれ、無事で良かった。
南との通話を終えてから、事の顛末を他の女子たちに一斉メールで報告した。
翌日は南も登校してきた。流石に気まずそうな顔をしていたが、皆も無事を喜び、何も悪いことが起きなかったのなら―—と強く当たる者はいなかった。
とは言ったものの、
「とっ捕まえよう」
勇ましく声を上げたのが
「待って。それって多分…」
南が思い当たるように声を上げた。
「え、なに? 南の知り合いとか?」
南は高校時代にも同じように付き纏われたことがあったらしい。ファンクラブまで自然発生した。当初は南の姿見たさに教室を覗き込んでいるだけだったのだが、放置していたら次第にストーカー化してきて、高校の校則に”付き纏い行為の禁止”が盛り込まれる事態となった。
そして大学でも同じ様なことが起こり、それは徐々にエスカレートして帰りを待ち伏せするようになってきた。南は授業が終わるとすぐに大学を出て、念のため寄り道をして後を付けられていないことを確認してから帰宅していたと言うことだった。
「そういう理由ですぐに帰ってたの?」
「そういうことなら皆に相談しなよ」
「ていうか、本物のアイドルみたい」
みんなは呆れるやら、南の人気に驚くやら…。
一人だけ怒り心頭だったのは飛鳥で、すぐに南を連れて学生課へ連絡。「対応しないなら警察沙汰になりますよ」とまで脅しを入れたらしい。
その甲斐あってか、大学側からすぐに
「付き纏いなどの迷惑行為も規則違反のため、懲戒処分とする」と通達が出た。
同時に、新歓コンパで起きたとされる飲酒や猥褻行為の件は、他校の出来事であったと通知された。
掲示板を眺め、「なんとも呆気ないミステリだった」と碧が嘆く。
天は笑って、「でもストーカーの件は、碧が探偵のように聞き込みをした成果があったんじゃない? 今後は南も気楽にキャンパスを歩けるよ」と名探偵を労った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます