第13話 所在

 翌日もみなみの姿は無かった。顔を見合わせる女子5人。いや、女子だけではなく、クラス全体が南の噂で騒めき立っている。


 「変な噂を流さないで欲しいよね」

 例のネット記事の続報を見ながら花之木はなのき千晴ちはるが言う。


 「なにか出てる?」

 とえのき飛鳥あすかが千晴のノートPCを覗き込みながら聞く。


 千晴:「いや、なにも…。SNSも調べたけど、それらしい情報は今のところないね。それより南からの連絡は?」


 天:「まだ返事は来てない」


 どうしたんだ、南。このまま大学に来ないなんてことないよね?

 不安な気持ちになりつつも、今は無事を祈ることしかできない。もっと気にかけておけば良かったと後悔の念を感じずにはいられない。




 クラスの混乱の渦中、ミステリ好きの前里まえさとあおいが動いた。

 近くで噂話をしていた男子の会話で「あいつらの所為せいじゃないか」という言葉を聞き逃さなかった。


 碧:「ねぇ、今の話、どういうこと? って誰?」


 碧が声を掛けたのは同じクラスの六ッ川むつかわ陽翔はると吉野よしの茂雄しげお


 二人の話によれば、南が教室を移動する時や、帰る時などいつも付き纏うように行動している男を何度か見かけたと言うのだ。

 それは同一人物だったり、別人だったり、複数人の時もあり、その日、その時によって違うらしい。学部が違うのか、普段は見かけることがない人たちで、上級生っぽい人もいた、とのことだ。




 昼休み。

 六ッ川と吉野の話をもとに、南がストーカー被害に遭っているのではないか、と碧は推測し、みんなに話した。


 「どういうこと?」

 「そんなにたくさんのストーカーがいるの?」

 「この大学内に犯人が?」

 「ずっと狙われていたってこと?」


 みんなは口々に疑問を投げかける。


 言われてみれば、南の近くには常に男子が集まっていたけれど、それは単に人気があったからだと思っていた。その中にストーカーが紛れていたのかもしれないな。サークルの勧誘に見せかけて、南を連れ去ったのかも…。

 碧の推測が当たっているなら、いつもストーカーを避けるために、授業が終えて逃げるように帰っていたというのか。

 どうして気付いてあげられなかったんだ。


 連絡が取れない南は今どこに——。





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