第12話 不安

 あっという間に1週間が過ぎようとしている。

 そらは授業の合間にアルバイトをしようと、近隣のカフェを調べていた。ガイダンスの際に、学内にあるカフェの雰囲気に惹かれて店員を募集していないか聞いてみたのだが、残念なことに現在は募集していないとのことだった。

 ならばと、通学路の途中にある店を色々探してみてはいるのだが、大抵は入学前に募集を終えてしまったと断られるケースが大半だ。


 一方で、同じクラスの女子グループ(3組ガールズ、略して3ギャルとみなみが名付けた)は、それぞれサークルに入って楽しんでいるようだが、当の南は…。


 『私もテンちゃんと一緒にアルバイトする』

 などと言っていた割には、授業が終わった途端にスッと居なくなってしまう。


 まぁ、いいけど…。


 おかげで自分のペースでバイト探しができるのだから―— と、気にも留めていなかった。




 ある日、大学の掲示板に通知があった。



「 当大学内の新入生歓迎コンパに於いて、未成年の飲酒および、不適切な行動があったとの通報があり、現在調査をしております。20歳未満の飲酒は法律で禁止されており、大学内外を問わず、飲酒の強要や猥褻行為などの事実が発覚した場合は懲戒処分の対象となります。

                                 学生課 」




 その日は朝から南の姿がなかった。

 えのき飛鳥あすかは数日前に、南がサークルメンバーにに新勧コンパに誘われているのを目撃している。サークル勧誘に限らず、南がキャンパスを歩いているだけで、軟派な男子から声を掛けられることも多かったようだ。


 南は誰が見ても可愛いし、アイドルみたいな感じだから、人を惹きつけるだけの魅力があるのだろう。だけど、当の本人はいつものことと慣れたようで、意に介さず、さらりとかわしていたように感じる。


 花ノ木はなのき千晴ちはるが不穏なネット記事を見つける。

 某大学のサークルで、1年生の女子大生を勧誘。コンパでアルコール度数が強い酒を飲ませ、酩酊めいてい状態にしたうえでメンバーのマンションに”お持ち帰り”された、という内容だ。




 天:「それで、南に連絡を取ろうとしたんだけど…」


 飛鳥:「つながらない…のね?」


 天:「うん」


 エレン:「でも、この記事が南のこととは限らないわ」


 飛鳥:「そうね。ちょっと冷静になりましょう」




 南はサークルには入らないと言っていた。それが本心かどうかはわからない。放課後にそそくさと居なくなるのも気になる。

 けれど、安っぽい勧誘に引っかかるだろうか?





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