第11話 共鳴
いよいよ今日から授業(講義)が始まる。学科ごとにクラス分けをされていて、通常はクラス単位で授業が行われる。選択科目など履修教科によっては個々に授業を受けることもある。
ちなみに
最初の授業では自己紹介の時間があり、クラス全員との初顔合わせをした。和やかな始まりではあったが、初対面の者同士がすぐに親しくなるのはなかなか難しいようで、お互いに仲良くはなりたいものの、相手の出方を窺っている様相だ。
ただ、それは男子に限ったことかもしれない。
昼の休憩時間には、学食にクラスの全女子6人が集まって、談笑しながら昼食を摂っていた。
まぁ、
天も朝の嫌な出来事を忘れたかのように
ちなみに、この時のガールズトークの内容は___
最初に出たのが授業時間の話題。
高校では1時限50分の授業という学校が殆どであったのに、大学の1時限は90分と長い。しかも大学の場合は教授が延々と話し続ける”講義”も多く、慣れないと飽きてしまい、「いつになったら終わるの?」と
続いて男子の話題。
誰々君がカッコ良いとか、芸能人の誰々に似ているとか…。自己紹介の時に言っていた出身校が名門で凄いとか。逆にオカッパ頭君とかオタクっぽいとか、散々な言葉を投げかけられている人もいた。「人は見た目…」って本当なんだなぁ、とつくづく感じる。
あとは女子にありがちなスイーツの話。
学内にあるカフェに、美味しそうなスイーツが沢山あったという話を南がしたとたんにみんなが食いついた。やはり女子は甘いものに目がないのか。天も甘いものは好きだけど、種類が多すぎて名前を出されても想像がつかないものがある。キッシュ、タルト、パイの違いも判らない。プリンとババロアも違うものなの?
他人の噂話や食べ物の話。どうでもいいような話に、よくぞこんなに花が咲くものだと、ちょっと感心したほどだ。でも、女子同士のコミュニケーションを取るためには、閑話もできた方がいいんだろうな。
窓の外では、サークル・部活動の勧誘をしている。大学には勉学だけでなく、様々な活動の場がある。運動系、文化系、芸術や音楽、ボランティアからイベント系を行うものまであり、学部や学年に関係なく同じ嗜好の人たちと知り合える場は交友関係も広まる。社会に出てからの人脈作りに欠かせない活動とも言える。
天も当初は、テニスサークルにでも入って大学生活を楽しみたいなんて思っていたのだが、”女性”でいるために、予期せぬ出費が嵩んでしまい、楽しむどころではないのが実状だ。
天が外を眺めていることに気付いた一人が、話しかけてきた。
銀縁の眼鏡が知的な雰囲気を醸し出している
「テンちゃんはサークルに入るの?」
南が「テンちゃん」と呼ぶから、皆はその読み方だと思っているようだ。天は南を恨めしそうに見てから、
「私は…、アルバイトをしたいから、サークル活動はできないかな」
「ええっ、テンちゃんアルバイトするの? 何やるの?」
と、南が食いつく。
「それはまだ決めてないけど…」
「私もサークルやらないで、テンちゃんと一緒にバイトしようかなぁ」
彼女か!
「私ハッカー部に入る」
割って入るように答えたのは、
「ハッカー部なんてないでしょ。エレンはどうする?」
と、再び榎飛鳥が聞いたのは、ハーフで長身の
「茶道を習ってみたい。日本らしい文化でしょ?」
「いいね。私も気になっていたんだ。あとで一緒に見に行こうよ」
どうやら榎飛鳥は議長的な役割が好きなようだ。授業でも積極的に質問していたし、話の振り方が上手だ。南も話上手だけど、どちらかというと人の懐に入るのが上手いタイプかな。
「あなたは…?」
榎飛鳥の視線の先に居たのは、漫画のような牛乳瓶眼鏡をかけた子。小さくてぽっちゃり体形の
「そうね。私はミステリー研究会に入るって決めてるの。子供の頃から文学が好きで、国内外の作品を読んだわ。中でも推理物が好きで………」
一同:「入る学部を間違えてない?」
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