第3話 計測

 そらが通販サイトで購入したものは、幸いなことに翌日の午前中には手元に届いた。物流の手際の良さには感謝しかない。

 残念なのは、「目が覚めたら元の姿に戻っている」「あれは夢だった」とはならなかったことだ。



 ネットで”女子大生のコーデ”を調べて、着回せるような服を数点選んだ。体のサイズは自らメジャーで測ったのだが、婦人服のサイズ表が5号や7号という見慣れない表記で、どう選ぶのかイマイチ良くわからない。

 他にも、体形を”A” ”Y” ”B”で表したり、身長を”T” ”R” ”P”で分類するなど、男の服選びとはだいぶ違う様相である。

 これらの表記もネットで調べ、自身のサイズと比較して近いものを選んだ。服のセンスまでは考えている余裕がなかったので、「おすすめ」を真に受けて購入した。


 大変だったのが下着だ。

 パンツはヒップサイズで選べばいいのだが、問題はブラジャー。とにかく、立体構造物を包むものだから、寸法をしっかり調べ、自分のバストに合ったものを選ばないといけない。


 まずは、トップバストとアンダーバストを測る。

 トップとアンダーの差がアルファベットで表すカップのサイズ記号となる。(例:差が15cm = Cカップ)

 カップサイズの記号とアンダーバストサイズを組み合わせた「C70」というような表記が、自身のブラジャーのサイズになるようだ。


 そしてノースリーブや薄手の服を着ている時に、脇からブラが見えてしまったり、他人からブラが透けて見えないようにするために、キャミソールを重ねるらしいので、こちらも購入しておく。

 ちなみに、キャミソールはトップバストのサイズだけで選べる。


 いづれも、男目線で選ばないように気を付けて、少し地味目のものにしてみた。

 中身は男とはいえ、下着を見られたくはない。もっと言えば、こうやって下着を吟味している姿ですら見られたくもないのだが…。



 さて、一通り揃ったところで、明日に備えて試着をしてみよう。

 姿見は持っていないので、この部屋で一番大きな鏡がある洗面所へ向かう。



 服を脱ぎ、改めて鏡の前で自分の見る。まごうことなき女性であることに動揺を隠せない。顔だけが”女性っぽい”のならまだしも、均整の取れた体躯というのも服で誤魔化せない理由なのだろう。



 「キミはいったい誰なんだ?」


 鏡の艶美な女性は天を見つめ返すのみ。

 誰かと入れ替わっているのだとしたら、元の自分の姿をした人がどこかにいるのだろうか。その人もきっと困っているだろうな。





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