第2話 決心

 もともとそらは中性的な顔立ちをしている。小学校の高学年頃から女の子と間違われることが良くあった。不動産屋との初見でもボーイッシュな女子大生と間違われたばかりだ。



 「さて、どうするかな」

 少し落ち着きを取り戻して、今後のことを考え始める。

 明後日には大学のガイダンスがあるため、人の目に付くことになる。できるだけ男らしい格好をすれば誰にも気付かれずに済むかもしれない。

 そう思って、革ジャンを羽織って鏡の前に立ってみたものの、ショートカットなのに顔立ちが完全に女性であるため、”カッコいい女の人”にしか見えない。

 パーカーのフードを被って、サングラスにマスク姿なら顔が見えないのでは? いやいや、これでは不審者として警備員に捕まりそうだ。


 あれこれ考えた挙句、「ガイダンスはただの説明会だから、このまま行ってしまっても大丈夫だろう」という結論を出した。


 「入学式だって、周りは誰も知らない人ばかりで、誰とも話をしないうちに終わったし」



 とは言ったものの、やはりちょっと不安なので、練習がてらに近所を歩いてみることにした。

 男物の服を着ているが、この体が華奢なのか、いかにも彼氏から借りてきたというような、まるでサイズ感が合っていないダボダボな服を着ている感じが否めない。



 小さめの服を買わないとダメかな?

 この時はまだ呑気に構えていたのだが、外を歩き始めて気付いた。



 …胸が揺れる。



 女性化しているということは、胸も出ていて、歩けば揺れる。

 そんなに大きな胸というわけではないけど、体の構造上、突き出した胸の先が服と擦れる。少々変な気持ちになって、思わず顔を赤らめてしまう。

 今すれ違った子連れの人が、不審な目で見ていたような…。



 こ、これは何とかしないと…。

 そらは慌てて家に戻った。



 もはや迷いはなかった。もう女になるしかない。

 パソコンを立ち上げ、通販サイトで婦人服を探し始める。それと下着もだ。





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