第109話逃がしては
高坂昌信「ここからは連絡が出来なくなります。疑問点ありましたら何なりと。」
内藤昌豊「お前から渡されたこれ何だけど……。」
異変に気付いた極楽寺。
「何の騒ぎだ!?」
「周りが囲まれています。」
「武田の奇襲か?」
「いえ。」
極楽寺を囲む集団が差していた旗に記された家紋は丸の内に三引両。
内藤昌豊「佐久間の旗だよな。これ?」
織田信長重臣筆頭。佐久間信盛の旗印。
高坂昌信「はい。」
内藤昌豊「何故そのような物を?持って行くべきは酒井と戦うべく進んでいる馬場山県。そして真田の旗指物を持って行くべきでは?」
高坂昌信「これには理由がありまして。」
内藤昌豊「どのような理由だ?持って行く私を納得させる事が出来なければ断るぞ。」
高坂昌信「先程私は信長を仕留めるもしくは逃走させる事が必要と申しました。」
内藤昌豊「聞いておる。」
高坂昌信「しかし信長を逃がす事は最善ではありませんし、次善でもありません。むしろ悪手であります。」
内藤昌豊「次善でも無い?」
高坂昌信「はい。これまでの信長を見ればわかります。
1つは美濃攻略。長年苦戦を強いられていた信長が目を付けたのが近江の浅井長政。彼に妹を嫁がせる事により、浅井と境を接する西美濃の安藤に稲葉。そして氏家の有力者に圧力を掛け、織田陣営に引き入れる事により稲葉山の斎藤は孤立。美濃攻略に成功しています。
2つ目は朝倉浅井とのいくさにおいてであります。朝倉と浅井の抵抗の対し信長は
『天下は朝倉義景様の物です。』
と言った屈辱的な文言で以て和睦した信長はその後どうしたでしょうか?美濃尾張に引き籠ったでしょうか?違います。朝倉浅井を滅亡させています。その布石として信長が行った事があります。そうです。彼らが抵抗の拠点とした比叡山の焼討であります。これにより信長は京までの安全な道の確保並びに朝倉の進出拠点を潰す事に成功しています。
そして最後3つ目が長島であります。幾度となく苦汁を舐めさせられた信長は大船を長島に派遣。海上封鎖する事により、各島々を各個撃破。長島の一向宗は壊滅に追いやられてしまいました。
これら全ての発案者は織田信長。その人であります。」
内藤昌豊「つまりこのいくさで信長を仕留めない事には、更なる対策を講じて我らに襲い掛かって来る事になる?」
高坂昌信「その通りであります。」
内藤昌豊「そこまではわかった。」
高坂昌信「ありがとうございます。」
内藤昌豊「ただそのために何で佐久間の旗を持って行かなければならないのだ?それを教えてくれ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます