第108話織田軍の特徴
時間を進めて丑三つ時。武田勝頼別動隊が到着した場所。そこは極楽寺。
少し時間を戻して。
内藤昌豊「高坂の策を申し上げます。」
更に戻って武田勝頼本陣。
高坂昌信「馬場様に伝えていただきたい事があります。」
内藤昌豊「こんな余分な荷物を押し付けて来るのには理由があるのだろう?逆に無かったら怒るぞ。」
高坂昌信「はい。此度のいくさで我らが勝利を収めるためには織田を倒さなければなりません。」
内藤昌豊「しかし正面からでは難しい。」
高坂昌信「はい。」
内藤昌豊「故に今、酒井を倒しに向かっている馬場山県の働きが重要となって来る?」
高坂昌信「その通りであります。」
内藤昌豊「で。首尾よく馬場と私が合流出来た後の事を伝えたいのだな?」
高坂昌信「はい。」
内藤昌豊「教えてくれ。」
高坂昌信「はい。まず織田軍についてであります。信長のこれまでのいくさ。勝ったもの負けたものそれぞれを調べました所、1つの特徴を掴む事が出来ました。それは……。」
織田信長が動いた所に他の武将がついて行く。
高坂昌信「であります。今川義元を斃した時もそうでありましたし、浅井長政の裏切りを察知した後もそうでありました。姉川の時もそうでありましたし、高天神の時も然りでありました。信長が進めば他の将も後を追い掛けて行きますし、逃げる時も同様であります。信長が踏み留まれば家臣も踏ん張りますし、いくさを回避する時もその動きに応じます。つまり織田信長を亡き者にする事が出来れば、自動的に織田軍は瓦解の道を歩む事になります。
今回、酒井忠次の奇襲部隊を倒すために馬場様他主力部隊を進ませているのはそのためであります。目的は酒井ではありません。最低でも信長を逃走させるためであります。その信長は今……。」
織田本隊から離れた極楽山に対陣中。
内藤昌豊「そこを狙えと?」
高坂昌信「はい。今、当地に居るものの中で、彼の地について詳しいのは2人。酒井と同行している奥平貞能と山県昌景であります。」
内藤昌豊「となると酒井とのいくさの時に、まず仕留めなければならないのは奥平?」
高坂昌信「はい。それは絶対であります。もし逃がしてしまったのでありましたら、戻って来るように伝えて下さい。」
内藤昌豊「奥平を仕留める事が出来たら?」
高坂昌信「信長を含む織田、徳川全ての者に気付かれぬよう極楽寺へ進み、信長の陣所を取り囲んで下さい。」
内藤昌豊「わかった。それでさっきから気になっているのだけれども……。」
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