第107話誤配

 内藤昌豊率いる小荷駄隊が持って来た馬と軍装を受け取る武田の別動隊。そこで……。




真田昌輝「内藤様。申し訳御座いません。」


内藤昌豊「如何致した?」


真田昌輝「……あの。これ私の物ではありませんが……。」


山県昌景「おい内藤!俺のも違うぞ!」


真田信綱「私のもであります。」


馬場信春「其方が間違えるとは珍しい。他人ごとにせず戒めと捉える事にする。」


内藤昌豊「1つ宜しいでしょうか?」


山県昌景「どうした?」


内藤昌豊「今、皆が気にしている物なのだが。これら全てを持って行くよう指示を出したのは……。」




 高坂昌信。




山県昌景「本当かそれは?」


内藤昌豊「ここに来て嘘つく理由なんか無い。私は最初。皆が必要としている物を準備しておった。そこに高坂がやって来て


『此度は必要ありません。こちらを彼らに持って行って下さい。』


と渡された。」


真田昌輝「えっ!これは内藤様が手配された物では?」


内藤昌豊「するわけ無いであろう。ただでさえ制限が多いいくさの場である。無駄な物は極力排除せねばならぬ。」


真田信綱「しかしどう致します。これですと……。」


内藤昌豊「あとこれも渡しておく。これを見て俺の苦労をわかってくれ。」




 受け取る一同。




山県昌景「何だ。持って来ているでは無いか。最初からこれを渡してくれれば良かったものを。」


内藤昌豊「高坂からは


『そちらは荷物になりますから、持って行かなくて結構であります。』


と言われたのだが、現地で絶対私の間違いと言われるに決まっている故。」


真田信綱「意地で運んだのでありますか?」


内藤昌豊「あぁ。その分、本来必要な物を用意する事が出来なかった。申し訳無い。」


馬場信春「因みに省いたものは……。」




 内藤の話を聞く一同。




馬場信春「山県の判断。正解だったな。」


内藤昌豊「と言いますと?」


山県昌景「さっき其方に指摘された事。反省している。反省しているのであるが、今回に関しては行って正解であった。」


内藤昌豊「うちの戦い方を考えれば、最優先では無いと見ていたのだが?」


馬場信春「あるに越した事は無いであろう。」


内藤昌豊「確かに。」


真田信綱「それで如何致しましょう?」


馬場信春「高坂が言うのであれば、何か策があっての事。内藤。何か聞いているか?」


内藤昌豊「伝言を頼まれてはいる。」


馬場信春「それを聞いてから決めようでは無いか?」




 頷く一同。高坂からの策を内藤昌豊から聞いた結果。




山県昌景「高坂の案に乗ってみるか?」


真田信綱「そうですね。ここまで来たら、高坂様に全乗りしましょう。」


馬場信春「高坂から預かった物。受け取っておく。」


内藤昌豊「では私が持って来た物は?」


山県昌景「持って行くには荷物になってしまう。ここに置いておくと痕跡を残す事になってしまう。故に申し訳ないが、本陣まで持って帰ってくれ。」


内藤昌豊「えっ!?」

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