第106話合流
少し進めて。
真田昌輝「来ましたね。」
松山観音堂から兵を進める武田勝頼別動隊の所にやって来たのは……。
内藤昌豊「難渋を極めたよ。ったく……。」
内藤昌豊率いる小荷駄隊。
山県昌景「何処が難渋だよ。どうせこれに跨って来たんだろ?」
内藤昌豊「何言ってんだよ!お前らがこれから使うんだろうが!引っ張って来たに決まってるだろ!!こんな厄介な荷物初めてだよ……。」
内藤昌豊が運んで来たもの。それは大量の馬。
馬場信春「内藤。お疲れ。」
内藤昌豊「……本当に疲れました。」
馬場信春「高坂が示した道。とてもでは無いが馬を連れて行くわけにはいかなかった故、其方に無理をお願いする事になった。申し訳ない。」
真田信綱「途中敵に遭遇されましたか?」
内藤昌豊「高坂から『注意して下さい。』と言われた場所はあったのだが、出くわす事は無かった。」
真田昌輝「そうなりますとやはり……。」
内藤昌豊「何かあったのか?」
山県昌景「いや。高坂に言われた松山観音堂。あそこに敵が集まっておって。」
内藤昌豊「いくさになったのか?」
馬場信春「ああ。ただそこで装備を整える手筈になっていたらしく、その最中に到着する事が出来たのが幸いした。」
山県昌景「恐らくであるが、そこから鳶ヶ巣を目指す者と内藤が通って来た方面を目指す者とに分ける予定では無かったかと。」
馬場信春「少しでも遅れていたら、観音堂で屍を晒す事になっていたのは我らかも知れぬ。」
山県昌景「奇襲の部隊だけで数千居た。」
内藤昌豊「そうなると連吾川には……。」
山県昌景「正面から戦って勝てる相手では無い。」
馬場信春「故に今からの策が大事になる。」
内藤昌豊「わかりました。殿に伝えます。」
山県昌景「それで内藤。」
内藤昌豊「どうした?」
山県昌景「観音堂にまだ戦利品が残っている。」
内藤昌豊「拾って帰れって事ですか?」
山県昌景「お前。帰りは俺らが来た道を通るのだろ?馬も無いし。丁度良いだろう?」
内藤昌豊「ここは敵地であります。それに板垣様や甘利様が村上義清とのいくさで討ち死にした理由を御存知でしょう。」
板垣信方と甘利虎泰は武田信玄の元重臣。村上義清とのいくさの最中に首実検を始めた所を反撃され討ち死に。
内藤昌豊「それにそのような物は、いくさで迷惑を掛けた民が手に入れるべきと考えています。我らは略奪のためにいくさをしているのではありません。さもしい真似はお止め下さい。」
山県昌景「勝ちに驕っていた。申し訳ない。」
馬場信春「本来であれば私が言わなければならぬ事であった。私も驕っていた。忠告。肝に銘じる。」
内藤昌豊「出過ぎてしまいました。すみません。ここからが本当のいくさになります。御武運を。」
馬場信春「内藤も気をつけて戻るように。」
内藤昌豊「わかりました。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます