第101話恐れていた事
軍議は一時休憩。外の空気を吸いに出た高坂昌信の所に
「お見事でした。」
の声……。
高坂昌信「おぉ何だ。喜兵衛か……。別に私が何をしたわけでは無い。全ては長坂様のおかげである。」
武藤喜兵衛「長坂様が『酒井の動きに注意せよ。』仰るとは思いもよりませんでした。」
高坂昌信「『織田徳川が揉めている隙に正面突破を図れ!!』と言いそうな方だからな……。」
武藤喜兵衛「正直な話。信長と激突するのは……。」
高坂昌信「高天神の時もそうであったが、大きな危険を伴ういくさは避けたいのが本音である。これは山県も同じ。ただ彼は奥平の件があるから無理をしてしまっている節が見られる。」
武藤喜兵衛「あと跡部様。」
高坂昌信「上杉北条との折衝は跡部の力が無ければ叶わなかった。それだけの事をしたのだから成果を上げてもらわねば。の思いは良くわかる。ただいくさは不確定要素が多過ぎる。状況によっては回避するのも立派な選択肢。それをわかって欲しい所はある。まぁそれも長坂の発言で跡部も落ち着くであろう。」
武藤喜兵衛「殿も変わりましたし。」
高坂昌信「あそこまで無茶しなくても我らが殿を見限らない事に気付いていただく事は難しいのかな?と正直思っていた。相当痛い目にでも遭わない限り、聞く耳を持つ事は無いのだろうな。と半ば諦めていたのだが……。」
武藤喜兵衛「今は気持ち悪くなるぐらい聞いて来る?」
高坂昌信「……まぁそうだな……。ただ酒井の件を聞いて安堵した事がある。」
武藤喜兵衛「何でありましょうか?」
高坂昌信「馬場や内藤。そして山県と話していて此度のいくさで最も恐れていたのは、信長が正面からいくさを挑んで来ることであった。個々の力は我らに分があるかもしれないが、数は如何ともし難い。装備も同様。もし信長が鉄砲を使った攻めに特化した策を持っていたら、恐らく勝つ事は出来なかった。
加えて最初に信長と戦う事になるのは有海村に居る山県。何かあったら退却の報せを出す。と言っているが、恐らく彼自身は留まると見ている。長篠攻略が出来なかった事の責任を取って。その山県の動きを見た他の者が山県救援に回る可能性も十分にある。悪戯に被害を増やしてしまう危険性があった。しかしその心配は無くなった。何故なら酒井の策を信長が一蹴したからである。
武藤喜兵衛「織田軍全体で動く策では無いものが採用されたから?」
高坂昌信「そう。ただ問題は酒井が我らを何処から狙って来るかである。」
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