雑兵

第77話弱点

長篠城に到着して……。




高坂昌信「(菅沼正貞から聞いていたが)……思っていた以上に丸裸だな。」




 小諸。




菅沼正貞「高坂様も御存知の通り、我ら山家三方衆はこれまで三河北部一帯を連携して勢力の維持に務めて来ました。その中にありまして私の居城でありました長篠城は南東部に位置しています。北と西は安全でありますので、敵からの備えは南と東。2つの川を使って縄張りをしています。しかし今、その防備だけでは不十分となってしまっています。」




 武田は安全であるハズだった北から攻めて寄せて来る。




 長篠城。




高坂昌信「その弱点を克服するべく、家康。いや奥平貞能が縄張りを施し鬼門からの攻めを防ぐ手立てを講じてはいるのであるが……。」


山県昌景「どうした?」


高坂昌信「あれが気になってな……。」


山県昌景「あぁあれか……。」


高坂昌信「どう思う?」


山県昌景「敢えてそうしているのか?それとも……。」




 翌日。武田勝頼は川を渡って南の野牛郭を。北東から新たに構築された郭を。そして北西の追手門を同時に侵攻。長篠城主奥平貞昌はこれに対抗。見事撃退に成功したのでありました。しかし……。




 小諸。




菅沼正貞「長篠の兵糧庫は城の北側。それも城の外にあります。理由は攻め込まれる心配が無かったから。兵糧庫が奪われた時には既に城が落ちている事を意味しているからでありました。しかし今は違います。兵糧庫のある場所が最も危険な場所になってしまいました。新たな備えをしなければなりません。しかし優先されるのは敵の攻撃を撃退する事。それに必要なのは鉄砲と弾薬。しかも大量の数を必要とします。本丸などにも倉はありますが、優先されるのは弾薬でありますので……どうやら後回しになってしまっていますね。」




 突如、長篠城外で火の手が。そこに蓄えられていたのは……。




内藤昌豊「城の狼狽ぶりを見る限り、予想が的中しましたね。」




 燃え盛る火の粉の燃料となっているのは……。




馬場信春「『兵糧庫に対する備えを見落としていた。』と言う事だな……。」


内藤昌豊「間違いありません。」


高坂昌信「徳川は兵站を軽視している?」


山県昌景「(長篠は)徳川の城になって日が経っていない事を考慮に入れてやらなければならないぞ。」


高坂昌信「しかしあまりにもお粗末なのでは?」


山県昌景「まぁそう言われても仕方無いかもしれないか……。」


高坂昌信「何か思う所でも?」


山県昌景「いや。跡部に言われた『この1年。何をやっていたんですか!』を思い出しておった。う~~~ん。殿の手を煩わす前。鉄砲弾薬が備蓄される前に片づけておくべきだったか。」


高坂昌信「もっと大きな収穫物を得るために使った1年と割り切りましょう。」


山県昌景「わかった。」

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