第5話 証拠集め

……パラヤ家の屋敷……


『ここは!!凄い!凄いよ!』

林の小屋にいた女の子たちを屋敷に招き入れるのをレビンソン様が許可してくれた。のでその子たちと一緒に帰った。


『ライナ、僕にはやらないといけないことがある。また、後でな。それとライナ……君はまた宿に泊まるのか?できればこの屋敷で暮らしてほしい』


『え』

母が死んでそこら辺のことを考えてこなかった。


『ふーん。ライナちゃん一緒にここにすも!』

後ろにいた保護した女性の一人がそういった。

ここに泊まるのも悪くない。ご飯は美味しいし、何よりレビンソン様にいつでも会える。


『はい、レビンソン様、私も泊まらせてもらいたいです』


『そっか。よかった。それとライナ……僕のことはレビンソンでいいよ。様をつけられたくない。ライナとはもっと親密になりたい』

そう言って彼は何処かへ行った。


『ねえ、あの人あんたの男?めっちゃイケメンやん……あの感じあんたに惚れてるよ』

『そうよ!』

『ライナちゃんが取らないなら私とっちゃうよ』


『え、でも』


『あんた、がんばんなよ』

私の方を叩いて応援してきた。私も彼が好き。でも、あの時の言葉は信じられない。ただ単に私を励ましただけなのかもしれない。有効な地図の所有者だから手綱を握っていたいだけかもしれない。そんな不安と疑いがある。地図をなくしたら前みたいに捨てられるかもしれない。もう誰かに裏切られるのは嫌だ。



……翌朝……


あのあとレビンソン様とはお会いすることはなかった。とは言ってもすぐに就寝したからだけど。


『ねえーライナちゃんもう彼と付き合っちゃいなよーいけるってー』

昨日からずっと彼女たちはそんなことしか言ってこない。



『お、おはよう、ライナ……』


『おはようございます。レビンソン様』

なんだかバタバタしていて考える余裕はなかったけど、あの夜から彼の様子が少し違う気がする。なんだか近いように思う。


『ライナ……様はいらないよ。僕はライナにそう言われるのは悲しい』

少し寂しそうに彼は言う。


『レビンソンさん?』

ただの名前を呼ぶだけなのになんだかドキドキしてしまう。


『う、うん。そっちの方が好きだ』


『え、好き』

なんだか変に感じてしまう。


『うん…………』

彼は顔を赤くして目線を逸らしてきた


『元気になってくれたみたいでよかった』

彼はそう言って沈黙を消した。


『え』

母が死んであんなに悲しかったのに今はそこまで悲しくない。彼が居るとなんだか母が消えた悲しみが薄れてくる。


『ライナ、改めてお願いしたい。僕はあの男に復讐したい。手伝ってくれ。僕は君の悲しみを消したい。あいつに君の母を殺した報いを受けさせたい。お願いだ!』

彼はそう訴えてきた。


『はい、よろしくお願いします』

私は母を殺された時から、あの小さな小屋だ苦しむ彼女たちを見た時から決めている。あの男に全ての報いを受けさせると。



……書斎……


『何か、あの男の秘密はないのー?』

『あ!敵国のアナ法王国と内通してるて噂あるよ!』

『そんな証拠ないじゃんてきとうなこと言わないのナナ!』

『ちープリスのいじわるー』


私とレビンソン様と小屋で出会った彼女たちとあの男(元夫で今世ではエル・クル・ハリス)についての話し合いをしに書斎に集まった。


『エル・クル・ハリス……一級貴族で次期女王陛下の婿候補……そんな人にやましい事ないの?』


『あなたたちを襲ったて事があるじゃない』

そうだ、王女と婚約する人が市民を強姦したなんて一大事なはず


『そうだけど、証拠がないの……私たちだって最初はこの事を知らない人に話したわ、でもみんな信じてくれなかった。それぐらいあの男の評価は高いの』

なるほどあの男は前世でも外面だけはよかったからねここでも同じか。


そういえば婿の話がくるような男がなぜ軍務大臣の地位を狙ったの?別に婿になればそれと同等になるはずじゃ。もしかしてあの男がレビンソン様を狙った理由は他に?

『レイビンソンさ、さんはあの男に暗殺される理由に軍務大臣の件があるて言いましたよね。その会議にあいつはきましたか?』


『いや、来てないね。元々彼は候補になってなかった』

彼は候補になってない?どう言うこと?もしかして本当は別に理由が?


『レビンソン様、ここ最近まであの男に要求されていたことは何かありますか?』


『ん…………君は軍務大臣にふさわしくないとかしか…………あ!そういえばちょくちょく国家書庫の警備権を渡せてうるさかったきが……』


『国家書庫て?』

『国家書庫は国が作った書類全てを保管しているところだよ』

国の書類てことは国家機密もあるんじゃ……それも軍事関係とかの。確かこの国はアナ法王国と戦争状態……


『ナナさんそういえばさっき敵国との内通とかなんとか言っていたよね』

『え、そうだけど……確たる証拠なんてないよ』

戦争に必要なのは相手国の情報、それを手に入れれば相当の手柄のはず。内通、そうよ、あの不倫相手は国関係できたて言ってた確かあの女はアナ法王国の貴族。内通相手としては十分だし。現にあいつらは密会していた。


あの男が何からの重要書類を国外に出したのが露呈すれば……あの男を落とせる。

『レビンソン様!……あの男は本当に国家書庫の警備権を要求したんですよね!?』

『え? あ、うんそうだよ』

『ナナさん本当にその噂あるんですね?』

『うん、たまに聞くよ』


『なら、わかりました。あの男は敵国アナ法王国と内通していて国家書庫にある重要書類を横流ししようとしています』


『え、で、でも…………そうか、確かに』

どうやらレビンソン様も気づいてくれたみたい。


『で、どうやって証拠を集めるの』

小屋で出会った少女の一人が聞いてくる。


『まず、レビンソン様が書庫の警備権をハリス家に譲渡します。そしたら確実にあの男は重要書類を外に出すはずです。そこをとらえます』


『んーでも、どうやって?するんだ?ライナ?』

レビンソン様が質問してくる。


ここで詳細を言うのは小屋で拾った彼女たちのいないところがいい。

『みんな、その、レビンソン様と二人で相談したいの。できれば少しだけ外に出ててくれる?』


『えーここまでわかったのにー私も話したいー』

『私もー』

やっぱりダメかな?


『いいわ、ライナちゃんの言う通りいくよみんな。人の恋路を邪魔しないの』

彼女たちのまとめ役のリリさんがみんなを収めてくれた。でも、そんなんじゃないんだけど……でも、そう言われると二人っきりだって意識し始めてしまった。


『その、レビンソン様、また、<死神の地図>を使おうと思うの……』

さっきまで勢いよく進んだのに彼だけの空間になった瞬間、口がガクガク震えてしまう。


『うん、わかってる。で、どうやるの?僕は体を動かすことしか脳が無いんだ。考えてもうまくいかない。ライナが頼りだよ。教えて』

彼は優しく聞いてくれる。なんだかホッとする。


『まず、書庫の警備権を譲渡する正式書類をハマス家に渡す。警備員の交換が行われる直前に書庫にある一番重要な書類の一部を<死神の地図>で調べる。多分あの男はすぐに行動に移すはずだから三日分の未来だけでも王都外に出るのはわかるはず。そして、その書類があの男の手で王都外に出たらすぐに私たちがその様子をおさえる。そうすれば内通の証拠ができるわ』


『なるほど、うん。やってみよう』




……エル・クル・ハリス邸の門の前……


私とレビンソン様は国家書庫の警備権譲渡の正式書類をあのクソ男に私に屋敷にきた。


『貴様ら!また何しにしに来た!?』

兵士が高圧的に聞いてくる。レビンソン様は貴族の人間なのだからこんな態度は許されるはずがない。でも、ここで問題を起こすのはよくないとわかっているのか彼は何も文句を言わずに冷静だった。

『私たちはハリス家に我々の国家書庫の警備権を譲渡しに来た。屋敷の主人エル・クル・ハリスに会わせてくれ』


『な、国家書庫……少し待て』

兵士は慌てて屋敷の方へ走って行った。


……書斎……


『ようやく、お前も俺の言うことを聞くようになったか』

私たちはあのクソ男の書斎に通されて部屋に入るとあいつはそう偉そうに言った。


『はー』

『それに、月子、お前もようやく俺に逆らうとどうなるかわかったか、ま……もう遅いが、お前はもう要らねえよ』

不倫元夫はそう私をばかにした。


『はい、これ』

私は持ってきた譲渡に関する正式書類を机の上に投げつけた。


『ち、反抗的じゃねえか……まあ、いい』

不倫元夫は書類に目を通し始めた。


『ふん、どうやら本物なようだな。早速お前たちの警備兵士を引き払わせろ。明日我々の兵士を国家書庫に送る。それまでに準備しろ』

高圧的にそう書類を見終えるなりそう言った。


『ああ、わかってるよ』

レビンソン様が答えた。



……翌日……


私とレビンソン様は国家書庫、機密書類保管室にいる。あと数時間であのクソ男の兵士が来る。その前に私たちはあのクソ男が確実に持ち出しそうな書類の未来を見る必要があった。


『どれがいいかな、ライナ?』

『え、軍事関係の重要書類が必要なの』

『軍事関係……これだ』

レビンソン様は一冊の書類を見せてきた。

<極秘年間予定軍事配置図>

書類のタイトルにそう書かれていた。


『これね』

(お願い!この書類の未来を見せて)

私は早速書類に手に持ちもう片方の手で<死神の地図>に触れながらそう願った。


『あ』

<死神の地図>は国家書庫の周辺を表した。でも青い線はただ一点で動かずにいた。


『なんで!?』

意味がわからない。なんでこんな重要な書類を盗まないの?


『ライナ、落ち着こう。もう一日見てみよう』

レビンソン様が優しく諭してくれる。

そのまま彼は私を抱きしめてくる。

『ギフト』

彼がそう言うと周りが緑色の光に包まれた。暖かい。


『もう一度やろ』

『うん』

(もう一度、この書類の未来を見せて)

もう1日分を調べてみた。

『なんで……』

もう1日調べても何一つも変化していなかった。

あと1日しかない。この書類は二日も経ったのに持ち出されなかった。どうしてなのかわからない。この書類以外に確実な候補なんてない。

どうしたら。どうしたら。


『ライナ、この書類は二日も経ったのに盗まれていない。他にあるはずだ。探そう』

レビンソン様が励ましてきてくれる。


『違う、あいつはそもそもこんな危ないことなんてしないんだ。もうすでに十分なまでに権力もある。そもそも内通なんてしてないのかも……』


『違うだろ!ライナ!……もっと自信を持ってよ、あいつは確実に内通している。思い出んだ。あの夜に出会ったあの女、あいつは敵国アナ法王国の財務大臣の娘だ!それも、侵略派の貴族だ。確実にあのエルは敵国に繋がっている。ここまできたんだ諦めないでくれ。考えてくれ』

彼は私の肩を強く揺らして促してくる。


『うん……』

(あいつはよく何を求めていた?)

私が考えることができるのはあの男が普段何を求めていたのか、何をしていたのか、それだけ。


あいつはいつもギャンブルばかりしていた。私と結婚してからは急に仕事を辞めて家に居座ったと思ったら急にギャンブルとキャバクラにつぎ込み出した。

そうだ……あの男は金を第一にしていた。怒る時はいつだってお金のこと…………そうよ、あいつはいつも金を求めていた。


『レビンソン様、ここにお金関係の書類はありますか?』

あの男が一番欲しいのはお金。国家のお金は欲しいはず、埋蔵金とかの地図があれば欲しがるはず。


『お金?……何枚かあったよ、国が密かに隠している金庫の地図があったきが……』


『それよ!それをちょうだい!』

『わかった。待っていてくれ』




『はい、ライナ。これだけど……』

レビンソン様が十数枚の古い地図を持ってきてくれた。


『これが……』

そこには200万、500万、などたくさんの数字とバツ印がたくさんあった。


『多分、この地図だけで、数千万バリス分の埋蔵金の地図がある……』


『こ、これよ』

(この地図の未来を見せて!)

<死神の地図>は王都全体を写した。

そして青い線が王都の中を走っていた。


『やった!』

ようやくだ、嬉しい。


『いや、待って、これじゃ』

レビンソン様が何かに気づいた。


『この青い線、王都の中で止まっている』

『え』

改めて地図を見た確かに青い線は王都を走っている。でも城門とは違う方向に向かっていた。そして線は王都の途中で止まっていた。


『もう1日分必要なんだ』

私は再び地図に手をかざした。


『ダメだ!!ライナ!!』

レビンソン様が私を止めてきた。


『な、なんで!?……あと少しじゃない!?』

急なことで強く言ってしまった。


『なんでて、君の、君の寿命がこれ以上やったら減っちゃうんだよ』

そうだ、これ以上やれば私の寿命が半年減る。


『でも!ここでやらないと!』

今ここで辞めてはどこで、いつこの埋蔵金の地図が王都を抜けるのかわからない。王都を出なければ犯罪として扱えない。


『でも、僕は君と居る時間が減るのは嫌だ!』


『じゃ!どうしたらいいのよ!』

(もう一度!)

私は彼の手が緩んだ瞬間に地図に触れて<死神の地図>を使った。


地図は青い線を伸ばして行き、最終的に王都を超えてアナ法王国の方へと向かっていた。


『な、なんで……なんで!どうして!そんなことをするんだ!!!もっと方法が…………いや、ごめん、そうだよね。無いか。ごめん、ごめん』

いきなり私が寿命を減らして<死神の地図>を使ったこのとに彼はすごい怒ってきたけど。すぐに収まりその代わりに私の胸に頭を埋めて泣きながら謝ってきた。


『どういう事?』

私は改めて地図を見た。

青い線は王都を確実に出ているだけど、王都の城門を一つも通っていなかった。

非公式の通路を使っていた。


『ん?…………これは!スラム街の!?』

レビンソン様はすごく驚きながら地図を見た。

『スラム街?』

『ああ、この地図は城壁を越えるお時はいつもスラム街それも犯罪組織の地域を通っている。これはエル・クル・ハリスは犯罪組織に繋がっているかもしれない』

『それって』

『ああ、機密書類の流出と貴族が犯罪組織に繋がっていたていう二つの巨大な問題が出てきたぞ!ま、まずは城門の警備をしているところに連絡だな』

『ええ』



……翌日の夜、王都の外……


王都は南と北を天然の城壁である山脈が走っていて西と東に城壁が続いている。基本的に城門はその西と東にある。山脈の南と北は城門がない。でも青い線は北を通っていた。


そして今、私、レビンソン様と城壁警備隊第二部隊の数十人の兵士で<死神の地図>で現れた青い線の地点にきた。


山地なだけあって森が生い茂っている。けどまるで街道のように森の木が生えない一本の道があった。もちろんこれは公式な地図には存在すら記載されていない。間違いなく犯罪組織が作った道。


『すごいですな、レビンソン閣下、我々ですら見つけることができなかった犯罪組織の秘密街道を見つけるとは、いやーありがたい』

連れてきた部隊の隊長が話かけてきた。この人は警備隊の中でも世間からの信頼が高く、女王陛下からの信頼が厚いらしい。この人が証人になってくれれば確実らしい。


『いやーにしてもどうやって見つけたんですか?』

でも、私たちはどうしてここの街道を見つけたのかとか本当の目的はあのくそ男が国家機密の書類を運んでいたことを発見させるためだとかは隊長たちには教えてない。あくまで秘密街道を見つけただけにしている。


『秘密ですよ。当家から昔からある秘術です』

いい感じにレビンソン様が誤魔化してくれた。


『そうですか、まあ、貴族様には極秘機密が多いですからね。もうすぐ夜です。では』

日の光が消えかけ、あたりは暗くなっていた。

あの埋蔵金の地図がここを通るのは日付変更後1時間後だった。それまで別の無関係の馬車がここを通らないことを祈るしかない。


……数時間後……


(ガラガラガラガラガラガラ)

馬車が街道を走る音がした。


『きたぞ』

隊長が静かにみんなに言った。


『行けーーー!!!』

(ガラガラガラガラ)

馬車が私たちの真横に来た時、一斉に兵士が街道に出た。


(ひひひーーー)

馬車の馬が驚いて馬車は急停車した。



『警備隊だ!!扉を開けて手を上げろ!!!』

兵士の一人が馬車の扉に向かって叫んだ。



『わ、わわ、わかりまいた!!』

女性の怯えた声が馬車の中から聞こえた。

少し聞き覚えがある声だった。



(ギギギギギギギギ)

扉が開いた。


『え』

『あんたは』

扉から出てきたのは元夫の不倫相手だった。









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