第6話 復讐

『なんで、あんたがいるの?…………まあ、いいわ、あの人がなんとかしてくれる』

馬車から降りた不倫女が私を見て少し驚いていたけど、それでもすぐに私を馬鹿にしたような顔で笑ってきた。


『中を調べるぞ!』

兵士の一人が馬車の中に入った。


『おい!』

『キャ!レディーに何すんの!?触らないで気持ち悪い!』

彼女は捕まってもなお反抗的だった。



……城壁警備隊北側基地……


『ふん!あんたたちこんなことしてタダで済むと思っているの!?』

元夫の不倫相手の女は取り調べ室に入っても反抗的で強気な態度は変わらなかった。女性なので拷問までは行ってないけど、それでも何かしらしたほうが良い気がする。違う……私はあの女が苦しんでいるのが見たいんだ。そんなことを思う自分が気持ち悪い。


『行きましょ。レビンソン様。あの調子だと何も進展がなさそうです』

彼女を見るのに嫌気がさいてきた。もう2度と見たくない。



私たちは馬車から押収した積荷の開封しているとこにきた。


『あ!レビンソン様!ちょうど積荷の開封を始めるとことだったんですよ』

そう、兵士の一人が言った。


『全体でどれくらいあっるんだ?』

『大体、5トンちょいあります。どうやら馬車いっぱいに積荷を乗せていたようです』


あたりにはいくつかの巨大な木箱と小さな木箱があった。


『では、開けますよ』

兵士の一人が小さな木箱をあけじめた。


(ギギギギギギ、が!)

木箱が開いた。中には沢山の書類や、本が入っていた。


『なんだろう?…………こ、これは!?』

兵士がそのうちの書類の一枚を取って読むと、すぐに驚いて私たちに見せてきた。


<国家機密王都流出厳禁、兵器設計図>

見せてきた書類にはそう書いてあった。


『これもだ!レビンソン様!』

また兵士は見せてくる。


『え?!』

<極秘年間予定軍事配置図>

見せられたのは未来を見ても盗まれるはずじゃなかった書類だった。


『どういうことだ?』

レビンソン様も驚いていた。



(ガシャ、ジャラジャラジャラジャラ!!)

大きな木箱を開けた音がしたと思ったら硬貨が雪崩のように流れる音がした。


『な、なんだあれは!?』

『何あれ?!』

音のした方を見ると大量の金貨が山になっている。


『おい!こっちもそうじゃねえか!?』

(ガシャ、ジャラジャラジャラジャラ!!)

別の木箱からも金貨の山が出てきた。


『おい!これもだろ!!?』

次々と木箱から金貨が出てきた。



最終的に金貨は積荷の9割以上を占めていた。

意味がわからない。


『おい、もしかしてこの地図から掘り出したんじゃ……』

一人の兵士から小さな木箱に入っていた書類の束を見てそういった。


<国家緊急用埋蔵金>

兵士の手で隠れていたけどそう書いてあった。


『そうよ!!あの男はこの埋蔵金の地図を使ってここにある金貨を集めて国外に運ぼうとしたんだわ!』

ようやく元夫のやろうとしていたことがわかった。


『そうか、それと加えて国家機密の情報をもてば亡命が容易い。そして積荷を運んでいたのは他国の貴族の娘……亡命の手助けをしていたのか。だとしたらあの女も同罪だな』


『ここまでわかったらあの男に報いを受けさせよう』

『ええ』


兵士の一人が聞いてきた。

『レビンソン閣下これはどうしたら……我々は警備隊ですのでこのような事案は……』


すぐにレビンソン様が答えた。

『ここは私たちパラヤ家が処理します。ひとまずこれらの金貨とあの女性はそちらが保管しておいてください』

『はい、わかりました』


『え』

少し驚いていた私に彼は答えた。

『これで、僕たちだけがこの情報を待つことになる。他の捜査組織が入っちゃ都合よく情報が使えないだろ。情報は独占した方がいい』



……パラヤ邸……


『えええ!!!本当なんですか!?5億バリス相当の金貨が!?!?』

あれから出てきた金貨の総額を計算した結果を林の小屋で出会った彼女たちに伝えたらすごい驚かれた。それもその筈だ、5億バリスは小国の国家予算と同等レベルの大金なのだから。


『本当よ、それにこの国の国家機密の書類が大量に出てきたわ』


『て、ことはあの男をどん底に落とせるの?』

そんな質問が来た瞬間、一瞬で彼女たちは静まりじっと私の答えを待ってきた。無言も圧力が私にくる。


『ええ』

『やったーーー!!』

『あの男に私と同じ苦しみを味あわせられるー!!』

『死ね!クソ貴族!』

出来ると聞いた瞬間彼女たちは今まで見たことないぐらい喜び出した。


『で、でもね、あの男の地位を落とすにはまだ、必要なことがあるの』

今回露呈した話が世間に広まってもあの男はすぐに反論を広めて鎮静化してしまうかもしれない。だからこの話はあの男が居て、尚且つ国家の重鎮がいるようなところで一気に話て反論する隙を与えずに重鎮からの評価を下げる必要がある。

だから私はあの男が必ず現れる女王陛下の婿選定会議で暴露することにした。この会議は国の重鎮が一堂に会する会議、これほど絶好な機会はない。


『暴露するにあたって詳しくあの男にされたこと言って欲しいの。辛いだろうけどお願い』


『なんだあーそんなことねいいわよ』

彼女たちの一人が頼もしい答えをくれた。

『ありがとう』

『いいのよ……あ、そんなに感謝されるなら一つだけお願いしようかなー』


『え』

『うん……ライナちゃん!今回のことが終わったら愛しのレビンソン様に想いを伝えるのよ。ウジウジしているの見るに耐えないからお願いね、じゃーねー』

彼女たちは私から離れて食堂の方へ向かって行った。



……書斎……


『ライナ、彼女たちは協力してくれるて?』

レビンソン様が聞いてきた。


『え、うん、あ、はい。彼女たちは証言してくれるそうです』

さっきの彼女たちの言葉のせいで変に彼を意識してしまう。


『これであの男に多くの人を傷つけた報いを受けさせることが出来るね。ライナの寿命を半年も使ったんだ成功させよう』

寿命半年程度だけど、私はもう30年も使っている。これで最後にしてあの<死神の地図>は封印しよう。


『もう一度作戦を確認しよう……今から3日後にある女王陛下の婿選定会議で僕たちがこれまで見つけたエル・クル・ハリスの悪事を暴露する。そしてあの男の地位も名誉も落とさせる。……考えてみると自己満みたいなことだけど僕は君の母親を殺した奴に報いを受けさせたいこれでいいんだ。ライナこれでいいよね?』


これで前世で私を裏切ったこと、今世で出会った大事は母親を殺されたことを許せるわけではないけど。これでいい。


『まずは当日にあの敵国アナ法王国の内通者を会議場に連れて行き、待機させ、僕たちが会場で埋蔵金の地図を盗んで大金を手に入れたこと、国家機密を盗んだことを暴露してあの女を登場させてそれら全ての行動は法王国に亡命するためだと裏付けさせる。それで信用が失った後で林の小屋で出会った彼女たちの話をすればいい。これで行こう』

『そうね……』

なんだか不安はあるけどそれで行こう。



……王城……


私たちは王城に入った。連れてきた元夫の不倫相手の女は手錠とローブを着させている。少し警備の人に怪しまれたけどなんだかんだ城に入れた。



会議を行なう部屋に入った。急遽参加を要請したのでテーブルが追加され私たち二人分の椅子が不自然においてある。


『なんで……』

もうすでに候補者、選定委員の全員が揃っていた。

もちろんあの不倫元夫も席に座っていた。私たちを見て少し驚いている。


『ではこれより、選定会議を始める』

議長っぽい男がそう言った。


『その前になぜ彼らがいるんだ?』

不倫元夫が早速私たちに絡んできた。


『それは本日、候補者エル・クル・ハリスの重大な法律違反についてお話しするためです』

レビンソン様が怯むことなく受け返した。その目は自信に溢れている。

『はああ!?言いがかりはやめろ!』

不倫元夫は声を荒げて反抗してきた。


『落ち着いてください。エル・クル・ハリスさん……で、レビンソン・クル・パラヤさん具体的にはどのような?』

重鎮の一人がそういうと、その人は人差し指を横にスライドさせるとさっきまでギャアギャア言っていた元夫を黙らせた。


『はい、まずお話したいのは彼の敵国アナ法王国への内通です。つい先日、我々は王都から伸びる犯罪組織の秘密街道を見つけました。そしてそこの調査をしておりましたところ、とある女性を見つけました……』

私はレビンソン様が合図を出したので連れてきた元夫の不倫相手の女を連れてきた。また、彼は押収した機密書類を机に並べた。重鎮たちはそれらに目を通し始める。


元夫が連れてきた彼女を見るとあの怒りの顔が一瞬で困惑の顔になった。

『あ!阿良くん!助けて!このお婆さんにいじめられたよー』

不倫相手の女は元夫を見るなりそう訴えてた。


『この女性は我が国の敵対国アナ法王国の貴族アルデバランの娘になります。そして我々は彼女とエル様は内通関係にあると考えています。なぜなら、彼女は以前からエル・クル・ハリス様と内通関係にあると噂がありましたし、何よりこれらの機密書類は彼の協力なしでは国家書庫、機密書類保管室からこれらを入手することはできません。ここの警備をしておりました我々にはわかります。


そして機密情報ならまだしも、その上で、国家が緊急時に使う埋蔵金を盗み国外に運ぼうとしておりました。これがその金貨の総量です』

押収した金貨についての書類を重鎮に回した。


『これは!!???』

流石の重鎮もその額に驚いていた。小国の国家予算並みの金額には流石に驚くだろう。


『エル・クル・ハリス!!!これはどういうことだ!?国家機密の漏洩、それだけでは飽き足らずこの大量の埋蔵金を盗むとは!どう説明をするつもりだ!!』

重鎮の一人がそう元夫に怒鳴った。


『ん、はあーはあーふう…………みなさん、憶測で物事を考えないで欲しい。まず、わたしは内通などしておりません。私はこの女なんて知りませんよ。誰ですか?それに内通の噂?噂程度の話を持ってきたことに驚きですよ』

元夫は鎖で繋がれた不倫相手の女を見てなんの抵抗もなく切り捨てた。


『え?阿良くん、どう、いうこと?……』

さっきまで余裕な表情だった不倫相手の彼女は元夫の発言で一瞬で顔を青ざめ出しながらダラダラと額に汗を流し始める。


『確かに機密書類は外に露呈しました。が、それは私が手助けしたわけではないのです。実は、ついこの前パラヤ家から警備権の譲渡がありまして、そのせいで警備が不完全でその結果この女に盗まれてしまいました』


『ふむ、その説もありそうだが、だが、その彼女はどうやら君のことを知っているようだが……』


『彼女は私の本名を知りません。私の名前は阿良ではありませんから。彼女はでたらめに言っているだけでしょう』


元夫は私たちを見てニタリと笑いながら

『それにレビンソン様が持ってきて下さった金貨の総量の額面を見てください。5億バリスと書いてあります。そしてそちらにおいてあります機密書類の山にある埋蔵金の地図を見てください。計算してみますと総額1億バリス分ぐらいしかありません。明らかに4億バリス足りません。そしてある別の情報を紹介したい。ここ最近、王都や周辺の都市で話題になっている<怪盗ルッツ>についてです。我々の最近の調査で彼による被害の総額は大体4億バリスだとなっています。現に我が当家でも家宝のネックレスが盗まれました。そのネックレスは大体2500万バリス相当でした。

その屈辱から我々は調査を行い、犯人の拿捕に成功しまいた』

そう不倫元夫が言うと手錠を掛けられた複数名の男性が部屋に入ってきた。


『彼らが<怪盗ルッツ>です。そして彼らを拷問した結果彼らの主人がレビンソン・クル・パラヤと判明いたしました』


『え!?』

『は?』

唐突にレビンソン様の名前が出てきて驚いた。レビンソン様も驚いていた。


『秘密が露呈したからって驚かないでください』

不倫元夫はわざとらしく笑いながら続けた。

『そして、今私はわかりました。なぜ彼らがそこまでの大金を集めたのか……彼らは私が王女の婿になることが気に食わないから私を貶め入れるために今回の告発を行ったのです。今回の事件の真相はこうです……彼らは私が婿になるのがなんらかの理由で阻止したかった。そこで私に冤罪の内通疑惑を作りたかった。その協力者としてそこの敵国の彼女と組んだ。そして今回の自作自演な事件を犯した。その際、金貨の総額の額面を強く見せるために<怪盗ルッツ>を使って得た大金をあたかも私が埋蔵金から抜き取ったと見せかけた。そう言うことです』

悔しいけど反論の余地が出てこない。確かに今気づけば金貨の総額の額面と埋蔵金の総額が違いすぎるし、あの不倫相手と元夫との接点なんて証拠がない。逆転で逆にレビンソン様の評価が落ちてしまう。

失敗してしまった。


『何も反論がないのかなレビンソン?』

勝ち誇った顔でゲスの不倫元夫は聞いてくる。

『……』

レビンソン様も反論がないよう。


『エルくん…………君は本当に彼女を知らないのかね?』

会議中ずっと黙っていたフードを被った男性が急に聞いた。


『はい?』

『私はオリハル・クル・レミレイツだ、確か君の家による遅く押しかけた日だったね。少しだけ君の屋敷で彼女と話したきがするよ。今でも覚えている。礼儀方がなっていなくてとても不快だったのでね…………そんなことはどうでもいい、 で、本当はどうなの彼女と接点ないの?あそこまで自信持って関係はないて言ってたけど』


『それは……』


『怪しくない?もしかしてさっきの話は創作?確かにレビンソンくんのも、ちょこちょこ変な点があるけど、君のは全てが嘘にしか聞こえないな。この件はもう少しじっくり調べた方がいいね。レビンソンくんこの件我々全体で調査をしようじゃないか』

そうオリハル様は聞いてくる。私たちのは確かに爪が甘かったけど確実に元夫と不倫相手の女は繋がっている。今はダメでもこれなら確実に彼らの悪事がわかる。

『はい、お願いします』

私はすぐにオリハル様の質問に答えた。


『なら、そうしよう……それで良いな?エルくん』

『え、ち!、わかりました』

元夫は焦りと苛立ちで機嫌悪く答えた。




(ガタン)

『緊急のお知らせです!!』

兵士の一人が会議室に飛び込んできた。


そして、

兵士の後ろに、一人の見覚えのある女性が現れた。


『皆様大事な会議中に申し訳ございません。私は王立中央銀行紙幣局局長のアリヤと申します』

偽札調査の時の依頼者アリヤさんだった。彼女は私を見るなりニコリと微笑んでくれた。


『早速ですが私が参ったのは偽札製造と金貨流出についてです。つい最近、そちらの彼女のライカ探偵団様のおかげで偽札工場の発見ができました。そして今回その偽札を製造を指揮した人物がわかりました。それはそこに居らっしゃいますエル・クル・ハリスです。そして貴方はその製造した偽札を他国でも通貨として使える金貨に変換し、国外に運ぼうとした。』


『ば、バカな!そんな早くわかるはずが……』

元夫は絶望と驚きの混ざったような声でつぶやいた。


『まあ、驚くでしょうね、何せ貴方の息が掛かった捜査組織が私たちの邪魔をしていましたからね。でも私にはそれなりに友人がいるんです。警備局の人間とかのね。先日大量の金貨が発見されたと情報が来たのでもしやと思いましたら、案の定その金額のほぼ全てが貴方の製造した偽札で換金された金貨だってわかりました』


『エル・クル・ハリス!貴方を偽札製造で逮捕します!!』

アリヤさんははっきりと聞こえる声でそう言った。


(ガタ)

『クソ』

アリアさんの宣言を聞いて元夫は膝から崩れ落ちた。


『クソ…………クソ……クソ!みんなしてブスの味方をしやがって……許さない!ああああああああああああ!!!』

ぶつぶつ呟いていたと思っていた元夫は私に向かってナイフを持って私に襲いかかてきた。



『ああああああ』

どんどん近づいてくる



(ドン)

ナイフが私に当たる直前に誰かに押された感覚と鈍い音が聞こえた。


『え……う、うそ』

目の前には元夫に刺されてナイフの先が少し横腹を貫通しもなお元夫を抑えるレビンソン様の姿があった。

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