第6話 不思議な声 その壱

 これは私が高校二年生の時に実体験した出来事である。信憑性のため詳述する必要があり、やや長文になるので、三回に分ける。


 私は幼少の頃から怪談の世界に興味があったが、同じくそういうものに少なからず興味を持つ友人や先輩と親しくなって、まったく興味のないクラスの連中まで引き込んだ挙句、「超科学同好会」なる部活動が展開された。

 「超科学同好会」と言えば随分大袈裟で、その活動内容で中心になったのは、カセットテープに怪しい物音を録音する、というものであった。

 私が通っていた高校は都立の職業高校で(今では某バラエティ番組でロケ地にされている)、その録音場所に選ばれたのが「製図室」だった。

 「製図室」は増築された校舎のいちばん端にあり、周辺を鬱蒼とした樹木に囲まれているせいか、昼間でも薄暗く、何となく不気味さが漂っているというのが、その選定理由だった。

 カセットデッキはタイマー録音できる当時としては優れもので、持ち主の友人が実験のたびに混み合う電車の中をわざわざ運んできた。

 放課後その「製図室」に、夜中の二時から三時まで自動的に録音できるようにカセットデッキをセットする。そして翌朝授業開始前に集まり、興味津々、何の音が入っているかそのテープを再生して聞き入った。

 実際に録音されたテープには真夜中の静けさの中、風が木々を揺らす音、何かがぶつかる音、正体不明なものまで様々な物音が入っていた。当然心霊的な音を期待している訳だが、そこまで説得力のある音が入っていたとは言い難い。

 今から思えば人によっては珍妙としか思えないことを、アオハル真っ只中の連中がこぞってすることでもないから、皆段々飽きてきていた。

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