第2話 死の知らせ その弐
我が家では、前述した私の体験の他にも、〃虫の知らせ〃の現象があったので紹介する。
ある日の夜、突然木製の洋服タンスが鋭い音を立て、ひとり勝手に片方の扉が開いたことがあった。不気味に思っていたら、翌日父の友人が同時刻頃に死亡していたことが判明して驚いた。
また別な日の夜中、テレビが鋭く軋むような音をたてて父は目を覚ましたが、やはり知人が同日の時刻頃に亡くなっていたことを後になって知ったという。あまりそうしたことに関心のなかった父がこの時は神妙な顔つきで、こんなことがあった、と話していたのを覚えている。
私の母はそうした(?)体質なのか、後述でも掲載するが、昔から幾つか不思議な体験をしてきている。
私がまだ幼少の頃、親類のK子さんという女性が、十代の若さで病魔に冒されて亡くなった。痛みを伴う辛い闘病で、病室に見舞っていた母も、随分気の毒に思っていたという。
そうしたある日の夜、眠っていた母はそのK子さんが、目黒不動尊(当時の住まいの近くだった)の本堂へ登る長い石段のところで、白い着物を着てじっとこちらを見つめて立っている夢を見た。そしてどこかから自分のことを呼ぶ声で目が覚め、二階から階下に降りると、玄関口にK子さんの父親がいて、先刻K子さんが亡くなったことを知った。その日他に家人もいたが、夜中で一階に電話があったためかけても誰も出ず、家まで知らせにきたとのことだった。
きっとあれはK子さんが自分があの世へ旅立つのを知らせたものだったと、母は今でもそう言っている。
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