第2話 - ヒーローの真実①

 、、、っと。普通の人間だったら、この辺で見るのを辞めるんだ。大迫力の戦いに満足してね。でも、僕は違うんだ。あんまり話したくないんだけど、とにかくワケ有りってこと。ここから出る気にならず悶々としていた。そしたら、手負いのソルジャーがビル裏に入っていくのが見えた。これは丁度いい、ヒーローの裏側が見れるぞ。そう思って、ついて行くことにした。


 傷だらけのヒーローが行く場所はどこだと思う?病院に行くことはできないよ。自分の身元を晒すことになるからね。だからって、そのまま放置じゃ死んでしまう。頼りにできるのは、闇医者だけってワケさ。

 ビル裏をフラフラと抜けて、少しボロっちいアパートに着いた。二階に登って奥まで進み、最後の力を振り絞るという勢いで、ゴンッ、、、ゴンッ、、、と扉を叩いた。そして、そのまま膝から崩れ落ちて気を失った。


 薄暗い部屋の中、硬そうなベットの上で、ソルジャーが意識を取り戻した。隣には、ヨレヨレ白衣で無精ヒゲのおじさん(いかにも闇医者って感じ)が座っていた。

『気が付いたかい、ソルジャー。治療は済んである。この点滴が終わるまでは、安静にしておくんだね。』

 パンパンに膨れた点滴の輸液を見るに、まだ二時間ぐらいは寝たきりになるだろう。腹に巻かれた包帯には、痛々しく血が滲んでいる。

『なあ、ソルジャーさん。もう辞めにしないか?こんな、いつ死ぬかも分からんような無謀なことはよ。』

『何度も言わせないでくれ。果たされるべき正義が目の前にあるというのに、辞めるワケにはいかない。』

『ソルジャーさん、、、。』

 今まで何度も、このやり取りをしているらしい。それでも、まだ闇医者は何か言いたげな顔をしている。これを言うとプライドを傷付けてしまう、、、といった様子だ。闇医者は覚悟を決めるように、タバコに火を付ける。そして、吐き出す煙と共に口火を切った。

『なあ、ソルジャーさんよ。あんたは、、、ただの男だ。マイティのように、何かを授かって産まれたヒーローじゃない。喧嘩が強いだけの、ただの人間なんだよ。』

『フッ、喧嘩が強いってだけで、十二分じゅうにぶんに授かっているよ。この強さを正しく使いたいのさ。』

 ソルジャーは、予想していたかのように淡々と答えた。普通なら怒鳴ってもおかしくない程、酷い言われようだった。この果てしなく寛大な心こそが、彼のヒーローとしての本質なのだろう。

『それに、私が死なない為に、ドクターがいるんだろ?』

『気の良いヒーローだね、全く。』

 ドクターの顔から緊張感が解れ、二人の間に穏やかな雰囲気が訪れた。

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