第二話 未熟な剣聖、宮本伊織
武蔵はアリーゼの魔法を見て
一方の少年少女たちも武蔵と同じ思いだったのだろう。
誰一人として叫び声もわめき声も上げず、
「やはり
しんと静まり返った室内において、老人は
「恐怖を抱かせてしまったのならば謝罪しよう。しかし、
そう言うと老人は
すぐに続きの説明はアリーゼが
「けれども皆様が一様に恐怖を感じる必要はありません。この召喚の儀によって召喚された者には、強大な魔を討つべく最初から上級職と魔法の素質が与えられると聞いています。すなわち、皆様にも私が見せた魔力を使った【
魔法が使える。
この言葉を聞いて、再び少年少女たちがざわつき始めた。
「本物の魔法が使えるだって」
「これってもしかして、私たち魔法使いになれるってことなの?」
恐怖の表情は残っていたものの、一部の中には声色を
だが、少年少女たちとは違って武蔵の心境は
本物の魔法を使う人間が実在していることが信じられなかったのだ。
しかしそんな感情以外にも、ある別の感情が
この
そのような武蔵の心情など知る
「ただし、今の状態では皆様にどのような職業があるのかは分かりません。そこで
「ステータス・オープンですね!」
ざわついていた全員の意識と視線が一人の人間に集中する。
そこには一人だけ天高く右手を上げ、嬉しそうな笑みを浮かべていた一人の少女がいた。
すっきりと通った
他の少年少女たちよりも姿勢が良いため、それこそ
「まさか、ステータスのことを知っている者がいるとは思いませんでした。よろしければ、あなたのお名前を
「はい!
ドクン、と武蔵は自分の
宮本伊織と名乗った少女が同じ宮本姓のせいだったからなのか、女だてらに武芸者の肉付きをしていたからのかは分からない。
どちらにせよ、このとき武蔵は伊織になぜか妙な親近感を抱いた。
そんな心境の武蔵はさておき、伊織とアリーゼは会話の続きをしていく。
「では、ミヤモト・イオリ様……そして他の方々も左手の
ちなみに、とアリーゼは満面の笑みを浮かべた。
「召喚魔法の
アリーゼの説明を皮切りに、少年少女たちは言われた仕草に加えて、おそるおそる「ステータス・オープン」と口にしていく。
「うおっ! マジか、これ!」
「すごいすごい! 本当にゲームみたい!」
少年少女たちは、先ほどの魔法による恐怖を上回るほどの興奮を示した。
当然である。
左手の
「それでは皆様の職業を確認させていただきます」
アリーゼは一人ずつ少年少女たちに近づき、半透明な板の中身を確認していく。
「素晴らしい! どの方々の職業も上級職のものばかりではありませんか!」
父上、とアリーゼは声を
「すぐにでも全員を学院に入学させるべきです。魔法に対する知識や経験がないにもかかわらず、この職業ならば学院で基礎を学ぶだけで我がアルビオン王国の多大な戦力になりましょう」
「ふむ、アリーゼの言う通りだ。魔法使いは一騎当千とも呼ぶべき偉大な存在。それゆえに魔法使いの育成と強化こそが国を
「それでは早速、学院への入学手続きを――」
「待て、その前にまだステータスの中身を確認していない者たちがいるぞ」
アリーゼはハッと我に返った。
未だステータスの中身を確認していない人間を交互に見る。
一人は宮本伊織と名乗った少女。
もう一人は集団からやや離れた場所にいた武蔵である。
アリーゼは老人に対して軽く頭を下げた。
「申し訳ありません。あまりの出来事に確認の
アリーゼは
「失礼いたしました。ミヤモト……イオリさん……でしたよね? ステータスを出していただけませんか?」
「それが全然出ないんですけど」
「え?」
首を
そして
「ステータス・オープン!」
他の者ならば瞬時にステータスと言う半透明の板が出現したのだが、伊織の左手の
それこそ伊織は何度も「ステータス・オープン」と繰り返すものの、室内に伊織の言葉だけが
「もう結構です」
何度目のステータス・オープンと繰り返したときだろうか。
アリーゼは先ほどとは打って変わったような無表情となり、低く冷たい声で伊織の言葉を
「ミヤモト・イオリさん……今度は左手ではなく、右手で同じことをしていただけませんか?」
「右手で?」
伊織は言われた通り、今度は右手の
すると伊織の右手の
「これが私のステータス」
ようやく出現したステータスに喜びを感じたのも
「私の職業は……み、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます