第3話 婚約破棄の当日

 入学式当日、


 何と、ライツ帝国の皇帝と皇妃、皇太子が出席した。

 さすがに、おかしいだろう?

 皇子が入学したわけではない。進級しただけだ。

 しかし、入学式に出席する。


 手勢を引き連れて、王都郊外で野営。


 フランツアは膝を付き。胸に手を当て、礼をした。


「父上、母上、兄上、遠路はるばる有難う存じます」

「フランツア、お役目ご苦労」


 僕は皇帝に話しかけられた。


「君がホラズム王太子だね。期待しているよ。良い婚約破棄をしてくれ。もし、リサ殿が、ホラズム殿に執着したら、私たちが責任を持って、連れて行ってあげよう。鍛冶職として働いてもらいたい」


「ご迷惑をおかけします。しかし、リサですよ。無能ですから、鍛冶職としてはちょっと・・」


「まあ、それは・・・」


 また、5分、遅れて、ノース王国の女王と王配陛下と、王太子がやって来た。

 魔道師団をつれて、我国の演習場で野営をしたそうだ。


 さすがの、グレースもカテーシをして出迎える。


「女王陛下、お父様、兄上、ご助力有難うございますわ」

「オホホホホ、いいえ。貴方は良くやっているわ。序列をあげてさしあげますわ」


「貴方が、ホラズム王太子ね。良い婚約破棄をなさい。リサ殿が・・・いえ、もう、いっそのこと、婚約解消になさい。違約金は、我国が払ってさしあげますわ。

 貴国の国家予算1年分ぐらいは払いますわ」


「え、リサですよ。そんな価値ありません。控えめに言って無能です。その資金を我国に投資して下さい。ニホン刀を優先的に売りますよ」


「死・・ね・・・オ~ホホホホホ、冗談ですわ。約定どおり。リサ殿に決めて頂きましょう」



 何だかな。皆、必死すぎて、笑えるくらいだ。


「殿下!大変です!ドワーフ王が来られました!」


「「何だって」」


 筋肉質で小柄な男が、わずかな伴を連れてやってきた。


 ドワーフ王ワシム陛下、


 我国に来る理由は、1つしか無い。

 ロバートの工房だ。

 これには、ロバートが喜びを隠せない。


「ワシム陛下、私は鍛冶職のジョブを得たロバートと申します!是非、我が工房に来て頂きたい」


「・・・貴殿、失礼であろう。陪臣の分際で、いきなり、陛下に話しかけるとは・・」


 ??ロバートじゃ無い?

 じゃあ、誰だ?


「何故、来られたのですか?」


「フム、神の子に会いに来た。リサ・ムラタの入学式であろう・・・お忍びだから、話しかけないでもらいたい」


 ・・・神の子?何を言っているの?



さすがに、ロバートはかみついた。


「ワシム陛下、何を仰ってるのですか?我国一番の鍛冶職は私です。あの女の工房に行きましたが、私の方が上です」


「そうか、見て、どう思ったか?」


「ありきたりで、見習い数人を使うだけで、大量生産は不可能です」


「あのな・・・そもそも、生産チート、珍しくて、良いものを沢山作れる。・・・そんなものは、カスだ。

 2流、3流、4流・・・いや、5流だ。点数がつけられない」


「なら、教えて下さいよ」


その時、

ライツ帝国、ノース王国、蛮族の面々は、ドワーフ王に抗議する。


「「「ワシム陛下!」」」


(つまり、価値を知らせるなということか・・・まあ、あの娘は、過小評価され過ぎているからな。さて、婚約破棄の茶番でも見ようか)


「新入生の入場ですわ!」


拡声魔法が響き。上級生の案内の元、新入生たちが、続々と入ってきた。


「・・・以上が、男爵家~次は、子爵家になります!」




「リサ・ムラタはどこに?」


「来られてないのか?」


 ・・・・・


「新入生は以上です!」


 ザワザワザワ~~~


「おい、馬鹿王子、どうなっている?」


 ・・・え、馬鹿王子、フランツア、口が悪いな。ニホン刀売ってあげないよ。


「さあ、分らないよ。無能だから、道に迷ったのじゃない?」



「ねえ。リサ殿は、一体、どうしたの?いくら、何でも、来ないってことはないでしょうね」


 グレースまで、眉間にシワよ寄せている。


 リサは、


 婚約破棄をするまでもない女だったということ。


「皆、もう、いいだろう?これから、キャサリンを婚約者として紹介する。皆、講堂に集めている贈り物は、お礼として受け取らせてもらうよ」


「国王陛下御夫婦のご登場でございます!」


 父上と母上が、会場にまで、来られた。


 父上は、誇らしげに宣言する。



「・・え、皆様にお伝えすることが、あります。ホラズムの婚約者は、ファモール伯爵家令嬢キャサリンに交代しました。さあ、二人ともこっちに来なさい。


 尚、ムラタ男爵家リサは、お役目不届きにつき、増税!税金が払えず男爵位は剥奪、貴族籍抹消、領地没収、工房は解体しました。工房の材料のレンガは賠償金としてもらいました」


「皆様、拍手をお願いしますわ」


 パチン!パチン・・・



 ライツ帝国、ノース王国の面々は、王に詰め寄るが、王とホラズムは余裕だ。



「大丈夫です。ロバートの工房は、すでにニホン刀をストックしてあります。見本で配っていますよ」



「おい、我々が欲しいのは、ニホン刀ではない。ムラタ刀だ。あれは、一本、大金貨数十枚で(数千万円)で売られている。

 素材が、粘り気のある鉄鋼なのだよ。しなりがあることによって、強度が段違いだ」



「そーよ。盾ごと、鎧ごと切断する威力で、強度があるから、刃は細いわ。軍部が、いえ。女騎士でも扱いやすくて、皆、欲しがっているのよ!」



「え、でも、ニホン刀はそんな値段でしょう?ムラタ家は、あまり生産しません。

 ロバートのニホン刀も中々ですが、あれは、多量生産できますから、少し、お安く出来ますが・・」



「はあ?あれは、ニホン刀の中の数打品じゃないか?良くて、金貨数枚(数十万円)だ!」



 ザワザワザワ~~



 入学式が中止になった。



「で、馬鹿王、工房を解体したって、煙突の長さは?中の構造は?記録させているのよね?」



「あれは、川原にあって、景色を悪くするから・・・」


「じゃかあしい!あれは、鉄鋼を作れる製鉄所よ!」


「鉄って、皆、同じじゃないの?」


「「「違うわ!ボケ!」」」


「ねえ。馬鹿王子なのに、婚約破棄も出来ないでゲスか?」


 え、皆、何を怒っているの?


 刀なんて、皆、同じじゃ無いの?


「それだけじゃないわ!リサは・・・」


「うむ。ここからは、私が話そう・・」


 ドワーフ王ワシムが語り出した。







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