第2話 婚約破棄の練習

 クラス、いや、学校一丸となって、婚約破棄をするように、動き出した。


「これは、これは、グレース第2王配の王女殿下殿」

「あら、フランツア第3皇子殿下殿・・・」


「婚約破棄が終わるまで、休戦ね」

「チィ、仕方ない」


 文化大国のノース王国から、劇作家が呼ばれ、演技指導もされた。


「いい。台本は、音と態度で覚えるのよ。多少の読み間違いはいいから、断罪のシーンをするのよ」


「グレース嬢、分ったよ。何、何?

『リサ・ムラタ、貴様は、真実の愛を邪魔しに貴族学園に入学しに来たな。よって・・・』

 あれ?」


「まあ、どうしたの?台本の練習の時は、迷いがあってはダメよ。頭を更に空っぽにしないとダメですわ・・」


「グレース嬢、リサとの婚約は生まれる前の、お祖父様の時代に遡る約束、大して、キャサリンと出会ったのは、4歳の時だから、それを裁くってことは・・・

 つまり、真実の愛は、過去に遡って、処罰出来ることで、

 この場合の、お祖父様に婚約をするように仕向けたリサのお祖父様が悪かったってことに過去を改変するんだね」


「オ~ホホホホホホ、その通りよ。真実の愛は、過去に遡るのよ」




 フランツアからは、態度、雄弁術を教わった。


「こう、頭ごなしに、相手の話を聞かずに、恫喝するのだよ


【婚約破棄をする!国外追放だ!】、さあ、言ってみよう」


「あれ、フランツア・・」


「な、なんだい。君は王族、相手は男爵令嬢だから、いつものように傲慢に行かなければいけないよ」


「違うんだ。国外追放なら、馬車を用意して、速やかに出て行かなければいけないかな」


「さすが、ホラズム!馬車は俺に任せてくれ!リサ嬢は我国が引受ける」

「まあ、それは、ノース王国が引受けますわ!」

「ゲス!リサ様が暴れたら、抑えるのは、わっしらの役目でゲス!」

 三人はケンカを始めた。

 この学校で、僕をのぞいて、最も影響力のある三人だ。


 しかし、3日後、話はまとまったみたいだ。


 講堂に積まれた荷物を見て、キャサリンは喜びを隠せない。


「キャー、グレース様!!これは、何?!ドレスと宝石の山に、イケメン従者を、あたしにくれるんですかぁ?」


「オーホホホホ、このドレスとジュエリーの山と、このイケメンは、私の義弟ですの。本来なら、今年入学で、リサ様と同級生になるはずでしたわ。

 リサ様が、ホラズムに執着しないようにするために連れてきましたの。断罪されて、傷心のリサ様は、講堂においてあるドレスの山につられて、こちらに来る算段ですわ」


「ええ、リサをつるエサ?作戦終わったら、あたしに頂戴、そしたら~ホラズムに言って、ニホン刀を優先的に納めるようにいってあげるわ」


「まあ、考えておきますわ」


 ・・・何だと、このドレスと宝石は、ノース王国の本国、王都本店、王室御用達のものだ。

 我国に来ている支店のよりも数段質が良い。


 リサが僕に執着しないように、ここまでしてくれるとは・・・


 一方、フランツアの方は、

 キャサリンの兄、ロバートが浮き足立った。


「これは・・・この鉱石の山に、最新の武具や鎧、それに、金貨の山に、健康美人の女騎士団・・と、イケオジ?え、とこれを私にくれるので?」


「いや・・・リサ嬢は、鍛冶職と聞いている。ホラズムに断罪され婚約破棄をされて、ホラズムに執着しないように、鍛冶職が欲しそうなもの集めたのだよ。金は工房を建てるための資金だ。

 ホラズムのことを忘れて、こちらにくるようにする作戦だ

 イケオジは、私の伯父、大公殿下だ。つまり、スパダリ作戦だ」


「伯父上、申訳ございません。列国の令嬢方に名が響いているイケオジですから」

「いいや、フランツア、正しい判断だ。国益のためなら、伯父でも使うべきだ」


「分りました。しかし、作戦が終わったら、それを下さい。頂けたら貴国優先に、ニホン刀を納めるように、義弟に意見具申します」


「・・・アハハハハ、そうか、考えておく」


 全く、困った者だ。どちらも、私に取り入ろうと必死だ。

 ニホン刀、

 確かに、剣の間合いの外から攻撃が出来て、槍の攻撃を、柄ごと切断出来る。


 攻防一体、

 刃物の最高峰とも評されるが、


 代わりに、斬る技術が必要。

 騎士のロングソード隊とか、全軍の刀剣を入れ替えるほどには普及していない。


 我国の他にも、ニホン刀を生産している国があるが、まあ、スキマ産業だな。

 スキマ産業の中で、我国が一番だ。


 パタパタパタ!

「ヒヒヒヒ~~~ン!」


「あれ、スランたちが、馬を講堂に、って、あれは羽が生えている。妖精馬じゃないかぁ?」


「ゲス、ゲス、我国の草原の奥地で、寝ているところを捕まえましたゲス!この馬は、心の綺麗な人を見ると、『お兄ちゃん』『お姉ちゃん』と言葉を発します。

 リサ様が、婚約破棄をされた後、妖精馬を見て、こちらに来るようにするでゲス」


 俺は、思わずこの国の王太子として、スランに命令をした。


「さすがに、これは、リサごときにもったいないだろう。この馬は、心の綺麗な人に、幸運と富を授けると言われている。

 この馬、一頭で戦争が起きたことがあるぞ。さあ、私の婚約祝いに献上してくれ」

「ゲッ、クソお、ゲス!ゲス!まずは婚約破棄でゲス。二兎追うものは一兎をも得ずでゲス!」


「ああ、分った。婚約破棄が終わったら、頂こう」


 人生、順風満帆だ。


 僕はとても、頭が良いし、キャサリンとロバートは有能、


 ちょっと、変わった奴らだけど、気の良い友人もいる。


 毎日、断罪と婚約破棄の練習をし。


 遂に、完璧になった。



 ☆総合予行


「ちょっと、皆、ここで、待て、ここで、未来の王妃、私の婚約者を紹介する」


 リサ役の女生徒が壇上に上がろうとするが、俺は手で制す。


「殿下、いったい何故?私は婚約者ですわ」


「フン、貴様の先祖は、転移者でありがながら、祖父に拾われて、男爵位を授かって、身を粉にして働かなければならないのに、あろうことか。毎日、研究と称して、遊び歩いているな。爵位を返上し、国外追放だ」


「オ~ホホホホホ、殿下、ニホン刀の生産はどうするのですか?あれは転移者でなければつくれませんわ」


「真実の愛の相手、キャサリンの兄が、もう、ニホン刀を作れる。鍛冶職の加護が付き。日産30ふりはつくれるぞ!」


「ええ、そんなーー殿下、私は見捨てないで下さいませ!」


【婚約破棄をする!国外追放だ!】

 パチパチパチ!!


「さあ、明日だ。明日で、キャサリンをお披露目出来るぞ」


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