「馬鹿王子のくせに、婚約破棄も出来ないのか?」となじられ、国が滅亡した話

山田 勝

第1話 婚約破棄の準備

 婚約破棄って、宣言した方が没落するよね。

 陛下や王妃殿下が出て来て、王子を叱って、血の分けた息子を断罪して、ただの貴族の娘の婚約者の方についたり。


 大公、隣国の王子がしゃしゃり出てきて婚約者に、「では」、と求婚したりと、


 または、婚約者に不思議な力があって、断罪返しをされる不安があるよね。


 これは、調査不足と調整力が足りないのが原因だよ。


 僕の婚約者、リサ・ムラタは、男爵家だ。始祖は、三代前の異世界からの転移者で、鍛冶職を家業としている。


 リサ自身は、加護もジョブも無い平々凡々の鍛冶マスターだ。


 不思議な力はない。


 それは、OK


 で、父上と母上は?

 これも、OKだ。


 何故なら、僕の真実の愛の相手、キャサリンの一族は有能だからだ。



「転移者も三代続けば、ただの人、ムラタ家も切り時か」

「ええ、キャサリンの母は私の同級生、女は、愛嬌が一番よ」


 そして、キャサリンの兄、ロバートは、鍛冶のジョブを授かっている。

 この国では、ニホン刀の製造は、リサの祖父が始めたが、もう、製造は、この国の王家の工房でも作れるようになった。


 そして、多量生産も可能になり。


 ロバートは、ニホン刀は、最大、日に30本、整備は、100本は出来きる能力を持っている。


 対して、リサは、1日5~10本程度製造がやっとか?領地を与えて作らせるほどではないかな。


 現場に視察に言ったが、一目瞭然だ。


 リサは現場では、仕事の指示はあまりしない。

 作業員に、あれが、危ない。これが危ないとぐらいしか言わない。


『ここ、危ないです!物を置かないで下さい』

『殿下、ここには入らないで下さい!』


 そして、刀を叩くのも数が少ない。


 ああ、こりゃ、ダメだなと思ったよ。


 対して、ロバートの工房の方は、この国の優秀な鍛冶職人を部下にし、彼らをしっかり統率して、指示を出している。


『う~む。後、3回、いや、2回半叩け!』

『ここは、もっと、あらい石でといでくれ』


『『はい!』』



 この婚約は、お祖父様が約束されたらしいけど、

 もう、時代にそぐわない。


 ここまで、婚約者の能力は問題無し、父上、母上の了承も取られた。


 次は、隣国の王子に相談だ。


 この国の貴族学園には、大国から留学生が来ている。

 何故なら、我国のニホン刀は、そこそこ売れているからだ。

 だから、興味があるのだろう。


 彼に事情を話して、邪魔をしないでもらおう。

 大国からの留学生に声を掛けた。同級生だ。ファーストネームで呼ぶ許可を受けている。


「やあ、フランツア、話があるんだ。今、時間ある?」


「勿論、君との会話が最優先事項だよ」


 フレンツアは、ライツ帝国の第3皇子にして、僕と同い年で、同じクラスだ。

 婚約者はいない。

 我国で探すとか言っていた変わり者だ。


「フレンツア・・実は、婚約破棄をしようと思うのだが・・」


「何だって?!あの今年、貴族学園に入学される婚約者殿のことか?詳しく聞きたい。こっちの空き教室で聞こう」


 彼は、僕の話を何時間も熱心に聞いてくれた。


「これは、君と僕の話だけの話にしよう。さあ、取りあえず受け取ってくれ」

「金貨・・・こんなに沢山、有難う」


 フレンツアは、僕に沢山の金貨をくれた。

 僕の小遣いの1年分だ。

 さすが、大国だ。


 ・・・・


「ねえ。ホラズム、昨日、フレンツアと、空き教室で、騎士にドアの前で番させて、2時間14分話していたみたいだけど、何を話していたのかしら」


「グレース嬢・・・」


 彼女は、大国、ノース王国の王女だ。我国に留学に来られている。

 大国だから、話しておいた方がいいか。


「実は、婚約破棄をしようと思って」


「・・・ここでは何ですから、ガゼボに行きましょう」


 彼女も僕の話を何時間も熱心に聞いてくれた。


「分ったわ。協力するわ。私の名刺に一言添えるから、これを浮気相・・・真実の愛の相手と一緒に、王都の我国の商会の支店のドレス店に行きなさい。ジュエリーとセットで、無料で、20セットほど、あつらえてくれるわ」


「有難う」


 ☆次の日


 蛮族の族長の娘、スランがやって来た。

 彼女の部族は我国に帰順している。


「ホラズム王子、一昨日、フランツア皇子と空き教室で、2時間14分話して、昨日、グレース王女と、ガゼボで2時間17分話したでゲス。一体何を話したでゲスか?」


 ・・・ああ、こいつは、蛮族だからいいか。


 僕は婚約破棄をすることを話した。


「なるほどでゲス。婚約者が暴れたときに、わっしらが抑える役をやるでゲス」


「スランありがとう」

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