20 姉妹、戦利品に落胆する

「爬虫類の肉ってね、クセのない鶏肉みたいで美味しいそうよ」

「そう。レオもそう聞いた」

「そうよね、そうなのよね。そうあるべきなのよ」

「レオもそう思う。そうあるべき」


レプタイルケイヴ】の第二階層。通称【水棲爬虫類階層】で、河川や湖沼から湧いて来るデカいトカゲやワニを狩ってドロップを集めながら、揃いも揃って溜息を吐く二人。いつもならばテンション高く狩り尽くす勢いで突貫するのだが、現在その勢いは見る影もない。


「なのに、なんで……!」


 相変わらず全身に冷気を纏い、その周囲に触れれば炸裂する極寒の魔法を展開させてはいるが、陰鬱に俯いて足取りも重く歩を進めながら、


「なんでお肉が出ないのよ!」


 血涙を流す勢いでそう言うナディ。そしてレオノールも、その結果に口惜しそうだ。ちなみに【ミラー】の効果は既に切れているが、再展開する気力すらないようだ。


 そう。第二階層では美味しそうな(?)トカゲやワニが大量に湧いているのだが、倒して落ちるのが魔結晶の他にはやっぱり牙や爪だったり、とてもツヤツヤしている綺麗な皮革品だったりするために、それらに価値を見出せない二人のテンションは駄々下がりであった。まぁ、勿体ないから拾うけど。


 そうしてあたかも路頭に迷う孤児のようにトボトボ歩き、第三階層へくだるセーフエリア前まで到達した二人は、その前に立ち塞がるようにウロウロしている10メートル超な真紅の大蛇を目視し、二人揃って胡乱な目を向ける。


「あ! おいヤベェぞ!」

「んあ? うわマジでヤベェ!」

「おおう、なんだあの嬢ちゃんたちは? どっちもすげぇ美人だし金髪の娘は更に可愛いぞ!」

「うわぁ、美人で可愛い。マジでヤベェ」

「いやそうじゃねぇよ! 目の前にもっとマジでヤベェもんが居んだろうが!」

「おい嬢ちゃんたちこっち来んな! 逃げろ!」

「そうだった! 嬢ちゃんたち早く逃げろ! ソイツは此処の階層主【アクアサーペント】のレア種【サーペントルージュ】だ!」

「【アクアサーペント】より凶暴でデカくて強いから手に負えねぇ! とにかく逃げろ!」


 などとセーフエリアにいる冒険者たちが、二人を見るなり大騒ぎしてそう叫ぶが、


「【マルチプル】【ピアッシング・ヘイル】」


 ナディが放つ多数化され貫通するひょうの雨に全身を貫かれ、秒で討伐された。


 そんな一般的には有り得ない現場を目撃しちゃった冒険者たちは大口を開けたまま茫然とした。

 滅多に出没しないであろうレアな階層主を、テンション駄々下りな無気力なのに瞬殺したナディは、そのドロップ品である立派な牙と骨格、そしてツヤツヤで真紅の綺麗な蛇皮を【ストレージ】に仕舞い込む。


「……お肉が出ない……」

「……あんなに大きくて美味しそうなのにお肉を落とさない。これは明らかにデザインミスか陰謀」


 ナディは判り易く落胆し、レオノールは誰へともなく文句を言う。そんな失意のままセーフエリアに入り、なんかテンションが上がらないためか重い足取りで東側にある泉の傍まで行く。そうして傍に着くや否や【ストレージ】からリクライニングチェアを取り出して各々座り、同時に深い溜息を吐きながら同じタイミングで同じ格好で頭を抱えた。


 そんな二人を目の当たりにした休憩中の冒険者たちは、先程の【サーペントルージュ】討伐で疲れたのだと判断したのだろう、誰も話し掛けずに見守るのであった。

 どちらも見目麗しく、迷宮潜行で荒んだオッサンやおにいさん、そしておねえさん冒険者の心に潤いを与えているし。本人たちは全く意図していないが。


 ちなみに第三階層へのセーフエリアにはロクデナシはいない。此処まで到達出来るのは本当の意味での実力者だし、そもそもそんな程度の低いヤツらは到達すら出来ないから。


 そうして二人で固まること暫し。またしても二人同時にムクっと起き上がり、ナディはおもむろに【ストレージ】からテーブルセットと特大寸胴鍋を取り出し、レオノールは食器とパンが大量に入っている大き目のバスケットを取り出した。


「よし、ご飯を食べて気を取り直して行くわよ」

「おー」


 などとちょっと気合を入れるのだが、戦果がそうなだけにやっぱりテンションが上がらない姉妹である。


 だがそれはそれ、これはこれ。


 腹が減ってはなんとやらとばかりに、寸胴鍋から具沢山なスープを装って食べ始める。ちなみに【オークディザード】での戦利品であるお肉をふんだんに使い、更に根菜を中心にとろけるまでよーく煮込んだナディ渾身の逸品だ。それがまた、メッチャ良い匂いであるため周囲の休憩中な冒険者たちが涎を垂らして注目していた。


 お金出せば貰えるんじゃね? とか相談する者もいるのだが、美人だし可愛いしでちょっと近寄り難い雰囲気を醸し出している二人に声を掛ける者はいなかった。


「ね、ねぇ。ちょっと良いかな?」


 そんな中、まだ年若い女子の冒険者が遠慮がちに声を掛ける。冒険者たちはそんな彼女を、勇者を見るようにキラキラした目で見詰めて見守っていた。ほぼオッサンどもなのに。

 それに気付き、口いっぱいに頬張りながら顔を上げるナディとレオノール。その姿がリスのようで可愛く、それでいて真剣な表情なのがちょっと面白くて思わず冒険者たちは吹き出した。


「あのね、もし良かったらなんだけど、そのスープ分けて貰って良いかな。あ、お金は出すから」


 そう訊かれて、リス状態のまま周囲を見回すナディとレオノール。その姿がやっぱり可愛いく面白く、顔を向けられた冒険者たちがちょっと吹き出しながらもホッコリした。


 そんなホッコリしている冒険者たちだが、そのスープの良い匂いで盛大に涎が垂れ、そして腹の虫が止まらない。


 その状況を見たナディはリス状態のまま天上を見上げてちょっと考え、ギョクンと飲み込んでから真剣な表情のままテーブルに皿を置く。その行動が拒絶を意味するのだと理解した彼女は、


「あ、ごめんね。不躾だったよね」


 慌てて謝罪し、


「そうよね、みんなだってお腹空いているわよね」

「今のは忘れて――え?」


 だが続くナディの言葉に耳を疑った。


 そんな彼女を尻目に、ナディは【ストレージ】から更にでかい寸胴鍋を取り出し、


「食べたい人は各自食器を持って並びなさい! お金? そんなの要らないわよ。お腹が空いたときはお互い様でしょ。え、食器がない? 仕方ないわね。レオ、やって」

「皆が望むのなら分け隔てなくそれを分け与える。何時でも何処でもどんなときもを体現する。さすおね」


 そうして食器を持って並ぶ冒険者たちにスープを分け与え、


「【クリエイト・ボウル】【クリエイト・カトラリー】」


 食器がない者にはそれとスプーン、フォーク付きで提供し始めた。冒険者たちの野太い歓声がセーフエリアに響き渡り、まだ狩りをしている者たちもその異変に気付いて駆け付け、同様に歓声を上げた。


「うわ! なんだこれメチャクチャ美味ぇ!」

「あったけぇ、美味ぇ、生き返るぅ」

「ホロホロにとろける肉とスープに溶け出している野菜の旨味が堪らねぇ。コレその辺の食堂じゃあ絶対食えんヤツだ」

「マジで美味ぇよぉ。てかこの肉、もしかして【オークディザード】産の高級肉じゃねぇか?」

「銀食器まで付けてくれるなんて……なんて良い子たちなんだ……」

「マジでそれな。この食器もスゲー良いもんじゃ……待て、これミスリル製じゃねぇのか?」

「あっはっは、ンなワケねぇだろうが……んぅえ!? なんだこの食器? オレのミスリルのナイフより光沢があるぞ!?」

「ああ、美味いよぉ。これは前にキミと一緒に行った高級レストランのスープより美味いよな」

「そうね、美味しいわ……てちょっと待って。あたい行ってないけど?」

「――あ」


 そうして冒険者たちはナディが提供したスープに舌鼓を打ち、


「スープだけじゃあ腹は膨れないわよね」


 続いて提供された、特大焜炉こんろと焼き網で魚介の塩焼き色々と、各種タレ付きお肉の焼肉を目の当たりにして更に歓声を上げる。

 そして何故か響き渡る「さすおね」コールに、レオノールはほくそ笑んだ。


「世界がやっと『さすおね』に気付き始めた。レオの計画は順調。とはいえまだまだ足りない」


 流石のナディも、レオノールの目指す先が不明でちょっと戸惑っている。だが、まぁ、楽しんでくれているのなら良いのかな? とも思い、考えるのを止めた。

 何処ぞのギルマスが見聞きしたなら、色々突っ込まれることだろう。


 ともあれ。


 迷宮のセーフエリアなのに食事会をおっ始め、当たり前にその場にいる冒険者全員から謝辞を貰った二人は、ちょっと機嫌が良くなって足取りも軽く第三階層へと続く竪穴の前に行く。そして例によって人目を気にせず強化魔法を掛けまくる。

 だが今回は、提供された食事を無我夢中で頬張る冒険者たちがそれに気付くことはなかった。


 疲労困憊で空腹な者たちは、美味しい食事があれば大抵のことは気にしないものだ。中にはその美味しい食事のせいで思い出の食い違いが生じ、大喧嘩になるカップル冒険者もいるが。


 こうして提供された食事に夢中な冒険者たちが気付いたときには、二人の姿は何処にもなかった。

 そんな奇跡のような出来事に遭遇した彼、彼女らは、あたかも幻のように消えた二人に最大の敬意を払い、以降慈悲深い聖女であるかのように語り継いだという。

 二人が残して行った特大焜炉こんろと焼き網、そしてミスリルの食器は、このセーフエリアの大切な備品として冒険者たちが共同管理することとなる。

 更に、これは後年になるが、土系統の魔術に一家言持ちの魔術師が、何をとち狂ったかこのセーフエリアに心血を注いで二人の精巧な石像を作ってしまうという、ちょっとアレなことを仕出かした。

 それが原因で最大の敬意は信仰へと発展してしまうのだが、当然のことながらその当事者というか原因というか、とにかくそれに二人が気付くことはなかった。


 気付きたくもないだろうし。


 提供された食事に感動しつつ、夢中で舌鼓を打つ休憩中な冒険者たちを尻目に第三回層へと進んだ二人は、


「お姉ちゃん。亀がいる。そして大きい」

「そうね。大きいわね。でも、それにしたって限度があると思うのよ」


 その辺をノソノソ闊歩する、眠そうな目の巨大な陸亀を目の当たりにして、言葉を失った。数は目測だが、十匹を超えているようだ。


 どのくらい大きのかというと、平均で5メートルくらいはありそうだ。具体的には、平家並みの大きさである。中には甲羅が縦長になっている個体もあり、こちらは二階建てに見えるほどだ。


 そんな特大陸亀が所狭しとノソノソ歩き回るのを目の当たりにしたナディは、


(まるで動く宅地ね)


 などと、見当違いだが当たらずとも遠からずなことを考えていた。


 当たり前だが、見当違いな感想を持たれているとは知りもしない特大陸亀は、地面に生えているシダ植物を食んでいる。個体がデカいのだから、餌となるそれらはすぐになくなりそうだ。

 しかしここはダンジョンである。食べたそばから次々と生えていた。その様は、まるで養殖場で餌を与えているかのようにも見える。


 一見すると平和にも見える光景なのだが、階層に現れた二人に気付き、一斉に物理的に目の色を変えて首を伸ばし、凝視した。


「ねぇ、レオ。私、なーんかイヤぁな予感がするんだけど」

「レオもそう思う」


 伸ばした首の向きをそのままに、身体の向きを変える巨大陸亀たち。それらの向きが揃い、一斉に身を屈めると、亀なのにいきなり高速で突っ込んできた。

 どうやらノンアクティブではなくアクティブらしい。


「攻撃色だった!?【ファスト・エビエイション】」


 その意外とも取れる行動に若干驚き、だが異様な雰囲気を感じて身構えていたナディが遅れを取るはずがない。

 瞬時に高速飛行の魔法を展開し、レオノールを抱えて垂直に飛ぶ。

 二人がいた場所に突っ込んだ巨大陸亀が、さらに次々と突っ込んで互いにぶつかり合う。


 しかしその程度どうにかなるわけもなく、傷一つない甲羅を震わせながら一斉に振り返り、同時に咆哮を上げた。


「亀のクセに吠えてんじゃないわよ!【マルチプル】【トラント・ソール】【ディメンション・サークル】【フロスト・デストラクション】」

「声帯がない亀が吠える。まさに不可解。【マルチプル】【カラント・ソール】【クリエイト・ニードル】【ディメンション・サークル】【ライトニング・バースト】」


 咆哮を上げる陸亀へ、ナディは空中で魔法を多数化させてから三十ほど重ねる。その結果、無数に展開された立体魔法陣から氷結させ破壊する冷気を放つ。

 そしてレオノールは同様に魔法を展開し、こちらはミスリルで針を作り出し、亀の頭に突き刺した。その針はナディにより極低温まで冷却され、続いて放たれた破砕する雷が直撃する。

 結果、冷気により生体としての活動を低下させられた巨大陸亀は、冷却され電気抵抗がほぼゼロになった雷の直撃にさらされた。


 いくら巨大で生命力が強く、防御力が高かろうと内側から高電圧で焼かれれば抵抗のしようもない。

 一斉に突撃した巨大陸亀は、二人が放った魔法によりまとめて殲滅された。結果に満足した二人は、どちらかともなくグータッチする。


 そしてお楽しみのドロップ品は、


「……そうね、分かっていたわ。そもそも亀って過食部位が少なさそうだもの」

「レオもそれは思ってた」

「でもね、せめて、亀の手くらいは落ちてもいいと思うのよ!」


 魔結晶は基本として、丈夫な甲羅と前足の爪、そして頑丈な嘴だけだった。目当てである亀のお肉はない。


「でも! 希望を捨ててはいけないわ! もしかしたら、低確率で手に入るかもしれないから!」

「いかなる状況下でも希望を捨てずに未来を目指す。さすおね」


 互いに励まし合い、希望を失わず、姉妹は第三階層を突き進む。


 余談だが、この階層には正しいとされている攻略法がある。それは、ただひたすら隠れて通過する、というものだ。

 したがって一般的な冒険者は、間違っても遭遇する巨大亀を残らず殲滅しようとはしないし考えすらしない。


【マルチプル】【トラント・ソール】【ディメンション・サークル】【フロスト・デストラクション】」

「【マルチプル】【カラント・ソール】【クリエイト・ニードル】【ディメンション・サークル】【ライトニング・バースト】」


 その「一般的」という枠からはみ出しているナディとレオノールは、遭遇する巨大陸亀を残らず殲滅しながら進む。そのドロップ品が防具に使える高級素材であるのに落胆しつつ、それでも目的の物お肉を求めて狩り続けた。


 首を伸ばしてひたすら噛みついてくる、比較的甲羅が柔らかい個体からは丈夫で鋭い亀の爪が。


 甲羅が岩の個体からはランダムで様々な宝石の原石が。


 亀なのに浮遊していて、水の塊を射出する個体からはレアドロップの浮遊石が。


 亀なのに二足歩行で俊敏に走る、亀なのに牙が生えていて火の玉を吐く個体からはその牙と火属性が宿る魔結晶が。


 それぞれ、人によっては狂喜するドロップ品なのだが、二人にとってのお宝ではない。


「ねぇレオ」

「なぁにお姉ちゃん」

「もしかしてだけど、この亀お肉を落とさないんじゃないの?」

「うん。レオもそれは思った」


 その結論に至った二人は、揃って失意のクソデカ溜息を吐いた。


「じゃあ、この階層はもういいよね」

「うん。もういい」

「それじゃあ、最後にあのでっかい亀を殴ってから先に進もう」

「賛成。あのサイズなら思い切りストレス解消できる」


 そうして二人は、地響きを立てながら徘徊する、小山ほどもある超巨大亀と対峙した。


「でも、でっかいなぁ。どうやって倒そうか。外からチクチクやっても時間がかかっちゃうよね」


 独白しながら討伐方法を考えるナディの袖を、レオノールは引く。


「お姉ちゃん。レオがやりたい。ちょっと試したいこともある」

「あら、珍しいわね。いいわよ、思いっきりやっちゃえ」


 いい笑顔でサムズアップするナディに同じくサムズアップで返し、超巨大亀に向き直ったレオノールは、【ストレージ】から剣を引き抜いた。


 それは、レオノールのみが扱える不死殺しの光剣【クラウ・ソラス】。


「【マキシマイズ・ソーサリーブースト】【ソーサリー・アクセラレーション】【ソーサリー・イクステンシヴ】【マルチプル】【ソーサリー・リバーブ】【ターム・オブ・ソーサリーアクティベート】【ソーサリー・ディレクション】」


 膨大な魔力を放出させながら強化魔法を展開させ、レオノールが自身を強化する。

 続けて――


「【光子力最大化シャイニング・ブースト】【光子領域シャイニー・リージョン】【グリーム・フォーム】」


 固有の能力である【光子力フォトン】を発動させた。


 レオノールの全身が純白に輝き、その光が固定し光の装束となる。


 純白の装束を纏い、白金髪プラチナ・ブロンドを浪打たせ、翠瞳エメラルド・アイズを輝かせるレオノールを、ナディは素直に綺麗だと思った。


 だがそれよりも。


「ねぇレオ。どうやってそんな魔法を覚えたの?」

「お姉ちゃんの【神装魔法】を見て応用した。きっと【光子力フォトン】でも同じことができると思ってやったらできた」

「ウチの妹、マジで天才だな」

「お姉ちゃんの【神装魔法】は覚醒能力の複合。だからレオの【光装魔法】より複雑。そもそも同時に使うのが不可能とされいる。不可能を可能にするお姉ちゃん。さすおね」

「いや、それを分析できちゃうレオの方こそさすがだよ。何この可愛くて天才な天使は」


 そうして互いを賛辞する姉妹である。


 ともかく。


「【サンカント・ソール】【 崩壊光放射カタストロフ・レイ】」


 五十重魔法を展開し、固有魔法である【崩壊光放射】を発動させる。それが多数化と残響の効果で膨大な数となり、【魔法条件発動化】により一つに収束された。


 レオノールの異常に高まった魔力に反応した超巨大亀は、巨大な足を止めて顔を向ける。

 そして明らかな敵意だと判断し、目を赤に染めて咆哮を上げ、地響きを立てながら方向を変えた。


 異変に気づいたセーフエリアにいる冒険者たちが、その恐ろしい咆哮に恐慌状態に陥るが、


「うるさい」


 レオノールは表情をひとつ変えずに【クラウ・ソラス】の切先を向ける。

 そして発動させ待機させている魔法を刀身に集中させた。


「【アクティベート】」


 魔法を発動させると、【クラウ・ソラス】の刀身が二つに分離展開して中にある芯があらわになる。


「【フルバースト】」


 そして放たれる、膨大な光。


 それは襲いくる超巨大亀の頭部を難なく撃ち抜いた。

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