18 姉妹、冒険者ギルドに行く
【王都ブラドノック】。
シーギスムンド・ヨエル・ヴァン・グランツ王が統べる【グランツ王国】の首都であり、王城を中心に入り組んだ市街で構成された難攻不落の要塞都市である。
もちろん入り組んだ、迷路化された市街だけではなく、王城を囲む城壁は三重であり、それぞれに堀が設けられ、そしてその間隔も千メートルを超えている。
第一の城壁内には王国軍の施設が並び、第二の城壁内には高位貴族の邸宅が並ぶ。其処から更に、全高五十メートル超の第三城壁の先――全幅二十メートルの内堀の先に在るのが、この国の中枢である王城なのだ――
「うん、まぁ、王都だしそんなモンよね」
【王都ブラドノック】に到着し、取り敢えずその概要を説明をして予備知識を与えようとするフロランスに対して、出た感想がコレである。聞く人が聞いたら激怒しそうではあるが、良い加減慣れたのかそれとも諦めたのか――きっと両方なのだろうが、ともかく、そんな感想を漏らすナディに「だよねー」とでも言いたげな表情で溜息を吐く。
「それに私は貧民だから、そんな説明されても腹は膨れないわ」
そして重要とする行動原理は、あくまでも食べ物であるようだ。ある意味では判り易い。色々と問題はあるだろうが。それと【ストレージ】にはちょっとした国の予算並みの資産があるのに、未だ自らを貧民と自称するナディである。まぁ食べ物の現物至上主義であるから、物理的に食べられない資産には興味がないのだろう。
「はぁ……ナディが王都の構造とか成り立ちに興味がないのは、たった今充分過ぎるくらい理解しましたわ」
そして拗ねたようにそう言うフロランス。だがそうしたところで、
「なんだ良く判っているじゃない。やっぱりフロウはおバカな貴族どもとは全然違うわね。そんなフロウ、大好きよ」
「お姉ちゃんの気性を理解した上で基本的な説明をすれどもしつこくしない。えっちだけどしっかり把握している。フロランスさすおね」
「褒められるのは光栄ですけど釈然としませんし嬉しくもありませんわ。それにレオノールはなにがあってもソレが枕詞になるんですのね!」
「えー、だって、本当に凄かったもん。アーチーとの初夜」
「防音が効いている筈の壁を超えて聞こえる魔力が籠ったえっちな声。そして精霊なのに憔悴しているというレアモノを見るのは極めて稀。えっちなフロランスさすおね」
途端に湯当たりしたように真っ赤になるフロランスである。実はその所為で幾度となく二人に揶揄われ、だが最後には嗜められてたりしていた。五月蝿くて眠れないから。
ちなみにそのアーチボルトだが、現在は純魔結晶製のカッティングを施した、直径3センチメートルほどのネックレスヘッドの中に入っており、そしてそれはフロランスの胸元で輝きを放っている。
あとそのお値段は、アーチボルトが宿っていない素の状態で白金貨一枚程度――つまり百億ニアくらいなのだが、それを「お祝い」と言われてポンと渡されたフロランスでも、流石に正しく理解は出来ていなかった。
その後、このネックレスヘッドを巡って軽く一騒動が起きるのだが、現状ではどうでも良いだろう。
そうして、結局フロランスとアーチボルトがくっついたことを祝福(?)しつつ、三人を乗せた馬車は第一城壁前の王都に到着した。
本来であれば先触れを出して直接ファルギエール邸へ向かうのだが、色々な事情が重なって到着時期が不明であったためそれも出来なかった。よって、色々と不安ではあるが、ナディとレオノールを一時的に市街に残してフロランスだけが戻ることにした。色々と不安だけど。
「良いですか。絶対に大人しく大人しく、大人しーーーーーーくしていて下さいね。絶対ですわよ。言っておきますがこれは二人が言うところの『フリ』とかじゃありませんわ。絶対に絶対の絶対ですからね!」
「うーわ、なんで其処まで念押すかなぁ。これでも私たちって大人しい方だけど」
「レオもお姉ちゃんも普段から大人しいからその心配は無用。念押しは心外」
「それは無自覚ですのワザとですの!?」
言われて、本心から判らないとばかりにキョトン顔で首を傾げる姉妹。どうやら無自覚の方らしい。
そんな姉妹の、全く同じ表情で首を傾げる方向と角度まで一緒な様を見て軽く「イラぁ」とし、だがいくらなんでも王都に来てまで非常識な行動は取らないだろうと希望的予測をしちゃったフロランスは、ファルギエール家の息が掛かる高級宿【オーベルジュ】を紹介し、証明のためのメダリオンを渡して、
「絶対に大人しく大人しく、大人しーーーーーーくしていて下さいね。絶対ですわよ!」
本日二度目の念押しをして戻って行った。あとアーチボルトはフロランスのネックレスヘッドに入ったままである。
「……信用ないなぁ」
「こんなに素直で問題行動と思しきことなんて一度もしたことがない。これは凄く心外」
揃いも揃ってスン顔な姉妹である。確かに二人は問題と思しき行動を取ったことなど、ただの一度もない。ただ世間一般的に、その規模と物量がデカ過ぎるだけだ。
「それはそれとして。じゃあ早速行こうか」
気を取り直してそう言い、二人は頷き合い、そして――
『冒険者ギルドへ!』
手を取り合い、その辺にある商店で買い食いがてらに情報収集をしつつ、王都の冒険者ギルドに行くことにした。まず宿を確保するという発想は無いらしい。宿の方ではフロランスから連絡が入って色々と準備中なのに。
そして二人は、道すがら情報収集と買い食いをしつつ、迷路化された市街を【マップクリエイト】と【マッピング】の魔法で難なく抜けて、
「おう嬢ちゃんたち可愛いな。どれ俺らが良いところに連れて行ってや――」
「【センス・イービル】【グラント・オブ・カース】【マナ・ディプライヴ】【アブゾーブ・マテリアル】【クリエイト・マナクリスタル】【アセンブル】【ストレージ】」
ついでに結構多くホイホイして巡回警邏の検挙率向上に貢献しながら、冒険者ギルドに到着した。
ギルドの横には「喫煙所」と書かれたちょっとした一軒家があり、そして外には魔術師らしき者が忙しく出てくる者に【デオドライザー】の魔術を掛けて料金を貰っている。
なんなんだろうアレは? そう思いながら二人はギルドの門を潜り、そして理解した。
ギルド内は明るく、そして清潔に保たれており、柔らかな照明とリラックス効果があるであろう香りが漂っている。そして壁には、禁則事項であろう項目が貼り出されていた。
それには、こう書かれている。
【ギルド内での私闘はギルマスに殺されたかったらやってよし】
【受付嬢へのセクハラをしたものは去勢する】
【受付士へのセクハラは本人が問題なければやってよし】
【年少や女子の冒険者への嫌がらせや妨害行為などをしたものは問答無用で資格剥奪の上で鉱山奴隷とする】
【ギルド内食堂での宴会は当日の夕方までに予約をすること。なお調理に自信のある者には調理場を開放する】
【ギルド内禁煙。匂いも不可。破ったら擦り潰す】
「……いつか何処かで見たわね」
「正しくそう。ガチムチギルマスがいるギルドのよう。でも彼処より過激」
そんな感想を漏らしつつ、うん取り敢えず見なかったことにしようと気を取り直した二人は、まず受付に行くことにした。
時刻は既に昼近くであり、朝イチのクエスト受注合戦も鎮静化したのかヒトも疎である。そして受付は五つあり、現在は一番から三番に職員が着いていた。
一番はメガネを掛けて黒髪を結い上げ、ピシッと制服を着たちょっとお堅そうな知的美人が。
二番は癖のある栗毛の物腰が柔らかそうな、ちょっとだけ制服を着崩している笑顔が素敵なイケメンが。
そして最後の三番には、角刈りでタンクトップのガチムチなおじさんがいた。
どれほどのガチムチかというと、某ガチムチギルマスが指数1のガチムチだとした場合、そのガチムチ受付は1.25倍くらいガチムチである。
たかが1.25倍と思う者も多いかも知れないが、そのコンマ25倍の差はガチムチにとっては重要であり、更にいってしまえばその差は歴然なのだ。
しかもそのガチムチ受付のガチムチはトレーニングで得たものではなく、明らかに実戦的な訓練で得たものだろう。
などとナディは戦慄しながらも瞬時に考える。ここ数年間ガチムチギルマスと一緒に仕事を熟していた所為か、どうやら無自覚にガチムチソムリエになっているようだ。
いつもやられっぱなしな某ガチムチギルマスが、初めてナディに一矢報いた瞬間だった。現場にいない本人にとっては「いや知らねぇわ」とツッコミが入るだろうが。
そしてそれはレオノールも同じようで、二人は言葉もなく視線のみで互いの意思を確認し、迷うことなく受け付けに向かった。
ガチムチおじさんの。
「ん? 俺のところに来たのか。大体は怯えてフィオレンツァかフィオレンツォの方に行くんだがな」
表情をあまり変えず、低音でそう言う受付のガチムチおじさん。
あ、このヒト体型と顔付きで損するタイプだ。などと全然関係ないことを考え、更にサングラスが似合いそうだなーとも考えるナディである。強面が強調されてもっと怯えられそうだが。
「それは良いか。此処が【王都ブラドノック】の冒険者ギルドだ。で、どんな用だ」
羽根ペンを持ち、椅子に座り直してそう訊くガチムチおじさん。体のサイズに受付席が明らかに合っていないため窮屈そうだ。
「えーとね、まず買取をお願いして良いかな。あ、私はこういうの者よ」
そう言い、タグプレートを差し出す。それを見てガチムチおじさんは頷いた。
「ほう。まだ若いのに【銀級】とはやるじゃないか。それで、どういった物を売りたいんだ」
「あー、此処じゃあちょっと出せないかなぁ。あとこれも、ね」
そしてついでに、フロランスから預かったファルギエール家の紋が入ったメダリオンを見せる。それで色々察したガチムチおじさんは無言で立ち上がり、それを見たフロアにいる明らかに初級であろう幼い冒険者たちを怯えさせた。
その瞬間、一番受付のメガネを掛けて黒髪を結い上げ、ピシッと制服を着たちょっとお堅そうな知的美人がスッと立ち上がり、フレームを持ち上げてメガネを直しながらその幼い冒険者たちの方へ行く。ヒールを履いてそうだったがそうではなく、パンプスであった。そしてその傍にしゃがみ込んでその頭を撫でながら、
「ごめんなさいね、ウチのガチムチが予備動作もなく立ちあがっちゃうから怖かったわよね。大丈夫だからね、後でよーーーーく言っておくから。でもアレでもとっても優しいのよ。夜なんか特に――」
「……おいフィオレンツァ、お前子供に何を口走っているんだ?」
「何って、アナタはガチムチだけど凄く優しいって伝えているんじゃないの。夜なんか特に優しいし早く子供が欲しいって言うワタシの意を汲んでいっぱい頑張ってくれるでしょ」
「優しいかは知らないが、俺が頑張るのはオマエを好き過ぎる所為だぞ。何を言わすんだ、それくらい判れ」
「はぅ……もう、アルノルトったら、いつになってもいつまでもワタシの心と――をキュンキュンさせるんだから♡」
そうして、突然イチャつくガチムチとお堅そうな知的美人である。今この瞬間、一体何を見せられているのだろう。そう思うナディとレオノール、そして幼い冒険者たちであった。二番受付のイケメンや他の一休みしている冒険者は慣れたもので、またやってるとでも言いたげにゲンナリした表情をしていたが。
そしてそんな、他所から見ると白けるだけな桃色展開が続き、逸早く正気に戻ったちょっとマセた初級であろう少年冒険者が、
「スゲぇ! コレがイチャラブ夫婦か!」
結構な声量でそう言い、それを聞いたギルド職員や食堂スタッフ、そして冒険者たちが一斉に頷いた。あの二人のイチャラブは日常茶飯事らしい。
「なるほど。こっちは強面ガチムチとお堅そうだけど実は優しい知的美人っていう、ぱっと見で損してるカップリングなのね」
「冒険者ギルドでは何故かガチムチがモテるという怪現象が起きる。正にギルド七不思議」
「何を言っている。それにそれはどんな七不思議なんだ」
「『冒険者ギルドには必ずガチムチがいる』『ギルドマスターはガチムチである』『ガチムチギルマスは脳筋ではなくインテリジェンスが高い』『ガチムチは受付嬢にやけにモテて言い寄られて根負けするか既成事実を作られて籍を入れる』『冒険者ギルド職員の女子はガチムチ好きが多い』『冒険者ギルドには見た目で性別判定不能な職員がいる』『冒険者ギルドには学園学院での成績は良かったけどバカが治らなかったヤツが最低一人はいる』」
「ほぼガチムチじゃないか。しかも不思議でもなんでもない。だが良い着眼点だ。なかなかやるな嬢ちゃん」
「突っ込むだけじゃなくて誉める……ですって! ナニこの新たなツッコミ手法!?」
そう淡々と答えるガチムチおじさんに、謎に戦慄するナディである。どうやら激し目な某ガチムチギルマスのツッコミに慣れてしまったらしい。
「ふふ。面白い娘たちだね。似ていないけど姉妹かな? 僕たちも姉妹だけど似てないから、ヒトのことは言えないけどね」
そんなナディに、二番受付のイケメンが身を乗り出し、両手で頬杖を突いて話し掛ける。その仕草や表情を見て何処ぞのサブマスに類するものを感じ、ちょっと身の危険を感じるナディであった。
「僕はフィオレンツォ。本名はフィオレンティーナって言うんだ。キミは……ふぅん、ナディかぁ。まだ十五歳なのに【
ガチムチおじさんの受付にあるナディの個人情報を盗み見てそう言うフィオレンツォ、もとい、フィオレンティーナ。冒険者のタグプレートには個人情報が書き込まれており、ギルドの特殊な魔術具で読み取れる。それは冒険者ギルド独自の技術であり、国からの要請であっても正当な理由がなければ開示出来ないことになっているのだ。
受付がそうして言っちゃえば台無しだが。
「はぁ……ナディちゃん、可愛いなぁ。一目惚れしちゃったよ。ヤバいなぁ、いろんなところがキュンキュンしちゃう。ねぇ、僕の恋人にならない? キミになら僕の初めてをあげても良いよ」
「要らないわよそんなの! ていうか聞いてるとアンタ女でしょ!? なんで同性の私を口説くのよおかしいじゃない!」
「愛に性別とか関係ないじゃないか」
「関係大アリよ! ちょっとなんでヌルヌルとカウンターから出てくるのよ! 其処のアンタら、笑ってないで止めなさいよ!」
画面から出て来る白装束で乱れ髪ななにかのようにヌルリと這い出るフィオレンティーナに戦慄し、状況を静観している冒険者たちに助けを求めるのだが、
「止めろっつっても」
「なー」
「受付嬢にセクハラしたら去勢されちまうし」
「だな」
「見た目イケメンだから許容範囲なんじゃねぇの」
「いやそれはあくまで男目線だよ。フツーに気持ち悪いからね」
「なるほどそりゃそうか。男同士とかゾッとしねぇもんな」
だーれも助けてくれない。まぁ、助けたとしてフィオレンティーナが「セクハラを受けた」と言えば色々と一大事だから。
それにしても。何処へ行っても変態に懐かれるナディであった。
「良い加減になさいまし。お姉様」
ヤバ目にそんな行動を取っているフィオレンティーナを、メガネを掛けて黒髪を結い上げ、ピシッと制服を着たちょっとお堅そうな知的美人――フィオレンツァが踏ん付けて止めた。ミニスカートからスラリと伸びる過不足ない無駄のない足と、ガーターストッキングのベルトがチラつくのがちょっとエロい。野郎の冒険者どもが一斉に前屈みになって女子の冒険者から白い目を浴びているが、それはどうでも良いだろう。
「う……ひ、どいなぁティノ。僕の恋路を邪魔しないでくれるかい」
「恋路の邪魔は致しません。ですが変態行為は止めます。見てごらんなさい。盛大に引いている上に怯えています」
「え、そんな。僕はただ愛を伝えたかっただ……」
「よーしオマエら。別室で話を聞くぞ」
そんな受付姉妹の遣り取りをぶった切り、ガチムチおじさんがナディとレオノールを別室に案内する。いつもの遣り取りなのであろう。妙に慣れているようだし。
それはともかく。
そうして案内された部屋の卓上に、
「コレを売りたいんだよね。多分オークションになると思うけど」
【
「……ほぉ。【
言いながら、棚からオークション出展申し込み書を取り出して卓に着き、事務処理を始める。意外にも癖字で、しかもちょっと可愛いかった。
あと書いてる姿がなんか精一杯体を縮めているようにも見えて、やっぱりちょっと可愛く見える。思わず「頑張ってるなー、良い子だなー」とか誰目線だよと突っ込まれそうなことを考えるナディであった。思考が本当におばあちゃんである。
「ん? 突っ立ってないで座ったらどうだ。あそうだ茶でも……てダメだな。ティノの茶は一級品だが今は説教中だ。ふ、相変わらず一生懸命で可愛いな」
「うーわ、このヒトも奥さんが好き過ぎるタイプだよ。人前でのイチャラブは控えた方が良いわよ」
そう忠告するナディだが、言われたガチムチおじさんのアルノルトは書類から顔をあげ、表情もなくじっと見た。
「え、なに?」
「いや。何故控える必要があるのかが不思議でな」
「は? ほら、人目とかあるでしょ。あと皆に見られてたら奥さんだって恥ずかしいんじゃないの?」
「いや? ギルド職員も冒険者たちも応援してくれているぞ。俺たちが結婚したときは自分たちのことのように喜んでくれたしな」
「公認だった……。あー、うん、皆が気にしないなら良いや……」
「そうだな、あとはティノがなかなか授からないのを悩んでいてな。心配した冒険者たちが、止めろと言ってるのに子宝のアーティファクトを手に入れるために危険なダンジョンに潜ったり――」
「は?」
「腕の良い医師を隣国から招こうと尽力してくれてたり――」
「えちょっと待って」
「あとは、大枚叩いて【薬師ナディージア・ヴォリナの魔導書】を手に入れてくれたヤツもいたなぁ。著者不明な変態日記だったが」
「え……ああ、うん。そらそうよ。書いた覚えないし……なんか色々申し訳なくなって来たわ……」
コレは本当に書いて残した方が良いのではないのだろうか。色々被害者が出ているのを鑑みるに、本気でそうするべきかも知れないと思うナディであった。
ちなみに【
「そんなだから、そういうのは気にしなくて良いからな――何か言ったか?」
「ううん、なにも。そっかぁ、奥さん授かり難い体質なのかな? 貴方は問題なさそうなの?」
「俺は多いくらいだから問題ない」
「あ、そう。じゃあ――」
そうしてナディは、過去の自分の血が騒いだのかちょっとした罪悪感があったのか、いずれにせよ何故かガチムチおじさんのアルノルトにそっち系のアドバイスをし始めた。途中で茶とお茶請けを持って来たフィオレンツァも交えて小一時間ほど熱く教授したのだが、内容がほぼほぼピー音が入るアレなので割愛する。
その最中のレオノールだが、既に知っているから聞いても意味がないため【ストレージ】の整理整頓をしていた。中身がほぼ食材だけど。
そしてそれが終わり、ナディからちょっと色々元気になるし盛り上がるエナドリ的な薬を貰い、実は聞きながらもオークションの処理をしていた優秀なガチムチおじさんのアルノルトがそれらを保管庫に厳重に封印する。ちなみに売れた後はファルギエール家の長女フロランスを受取人としていた。
これが原因でナディはフロランスにメッチャ怒られることになるが、きっとアホほど高値で売れるだろうし、そんなにお金を持っていても使い切れないから要らないと判断しただけだと言われ、反論に窮して結局受け取る羽目となった。
そしてそのお金を王都ばかりではなく周辺都市の貧しい孤児院や生活に困窮している者たちにために使ったのである。
結果、フロランスはそれら生活困窮者から讃えられ【聖女】と呼ばれるようになり、レオノールに「えっちなフロランスさすおね」と言われてムキーとなったとかならなかったとか。
あと【
こうしてそれが終わる頃に丁度ランチタイムとなり、ガチムチおじさんのアルノルトは二人にお礼とばかりに色々振る舞ってくれた。
そして――
「え……アルノルトって、此処のギルマスなの?」
「ああそうだ。アルノルト・アロイス・ド・シュウォルツ。あとこんなのでも【辺境都市ストラスクライド】の辺境伯だ。シュルヴェステルは元気か?」
「はぁ!? 辺境伯が自領をギルマスに任せてなんで王都のギルマスやってんのよおかしいじゃない! 責任者、出て来い!」
「なんでと言われてもな。王都の冒険者ギルドは実は本部なんだよ。それを任せられるのが俺しかいないと言わた。それと責任者はシーギスムンド・ヨエル・ヴァン・グランツ王だ。文句は俺にではなく直接言ってくれ」
「絶対言えない相手じゃない……はぁ、もう良いわ本人たちが納得しているんならどうでも。釈然としないけど」
予想を遥かに超える出来事が重なり、流石に脱力するナディであった。
その頃、某冒険者ギルドのギルマスルームで――
「おいアーネ。そういやナディが置いてって処分して良いって言ってた荷物、いつまで取って置くんだよ。良い加減邪魔なんだが」
「嗚呼、ナディの香りがする……嗚呼ナディ、これから自分はどうやって生きて行けば良いのか……」
「ポンコツになりやがって面倒臭ぇな、ったく。えーと、なにが入って――」
もしかして貴重品が残っているかも知れないと確認するシュルヴェステルの目に、それは映った。
わざわざ縫い付けた
「――あんのクソ姉妹ーーーー!」
血管がブチ切れるのでないかとばかりに激昂し、そして呆けているユリアーネに怒鳴る。
「アーネ! ギルマスとしての命令だ!」
「は? イヤですけど」
「今すぐ王都に行ってあのバカ姉妹にこのタグプレート押し付けて来い!」
「!」
「そして受け取らせるまで帰ってくるな!」
「承りました。偉大なるギルドマスター、シュルヴェステル・ローシュ・ド・ランボーヴィル辺境伯代理。この命に換えても、その使命を果たさせて頂きます」
「いや其処までは求めてねぇわ」
「今行きます! 我が最愛のナディ!」
「うお!? ちょ待て窓から出るな【龍化】すんな飛ぶんじゃねー! ヒトの話聞けやコンチクショー!」
そんな平和時間が流れていた……。
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