第8話「うわ! 彩乃ママから、貴重なご意見! メモメモメモぉ!」
……という事で私は、お母さんへ『現状』を話した。
クールでかっこいい
休み時間は、颯真君の周囲がクラス女子達95%の壁で見えなくなってしまう事。
かと言って、授業中にメモを渡す勇気がない事。
「困った事に、登下校中も、休み時間にも、食事中にも、四六時中、颯真君の周囲には、大勢のクラス女子が居るのよ」
「ふうん、成る程ねえ」
「かといって、授業中はクラス女子95%の視線を感じるし、メモを渡すとか、下手な事をやったら、すぐチェックされて、授業中に何やってんのよ! とか、颯真君の勉強の邪魔しないで! とか、厳しく吊るしあげられそう」
「まあ、クラスメートが授業中にアプローチした凜を責めるのは正論だわ。学校は本来、恋愛じゃなく勉強する場所だからねえ……」
お母さんも授業中にメモを渡す作戦は反対だった。
ライバル達につけこまれるからって。
「ううう……という事で、私と颯真君は、転校してきた一番最初の日に挨拶して、少し話しただけで、それ以降は、コミュニケーションが全くナッシングなの……」
ここで遥が、はいと挙手をし、フォロー。
「彩乃ママ、当然私は、クラス95%の女子に入らない残りの5%女子のひとりなんですけど、客観的に見ても、あの壁を乗り越えて、颯真君へ突撃するのはきついと思うっす」
渋い表情をした遥の話を聞き、お母さんが考え込む。
「う~ん、そうなんだ。一回だけでも、凛が颯真君と話をして、彼のスマホの番号とメルアドを貰えば良いんだけどねえ……」
「確かに! スマホの番号とメルアドが聞ければね! 特にメルアドは、あまり夜中とかはまずいけど、基本的に時間は関係なく、メールを送れるからねえ」
と、遥も大いに同意。
「かと言って、チャンス狙いで、凛がぴったり颯真君にくっついたら、ストーカー扱いされちゃうし。そうしたら、本当に嫌われるしね」
ああ、お母さん、絶望的な事を言う!
私は……どうしたら、良いんだろう。
「仕方がない……凛は焦るかもしれないけれど、ここはじっくり、ベストなアプローチ方法を考えるしかないわね」
「ここはじっくり、ベストなアプローチ方法を考えるしかないかあ、うん、私も彩乃ママに賛成! 焦りは禁物だよ!」
「話を聞いている限り、颯真君にステディーな彼女は居ないみたいだし。ねえ、遥ちゃん」
「ですね! 綾乃ママ!」
颯真君には『彼女』が居ない!?
えええ?
ど、どうして!?
そ、そんな事が言い切れるの?
戸惑う私の視線を受け、遥が言う。
「だってさ、凛。クラス95%女子の誰かが絶対に聞いているって! 颯真君には、付き合っている彼女さんが居ますかって。居たら取り巻き女子達の数が激減するはずでしょ」
ここで、お母さんが合いの手。
「確かに! 遥ちゃん、ナイス! 良い読み!」
しかし、私は不安でならない。
「でも、もしかして、内緒にしているだけで、颯真君に……付き合っている彼女さん、居るかもしれないよ」
絞り出すように言う私。
そう、あれだけかっこいいんだもの。
彼女が居ない方がおかしい。
対して、遥がきっぱりと言い放つ。
「そういう可能性も大いにあるわ。もし颯真君に彼女が居たら、仕方がないよ。凛が果敢に
「そ、そんなあ……」
「さっき、お母さんが言ったでしょ、
「うう、その通りだけど、で、でも……」
最後は
そんな私にお母さんがアドバイスしてくれた。
「凜、でもでもだってはNGよ! 颯真君へ、いつでもアプローチが出来るように、貴女は自分磨きをして、スタンバっておきなさい」
「わ、私が? じ、自分磨き? スタンバっておく?」
「ええ、凛が颯真君から好かれるよう、自分の魅力を高めながら、いつでもアプローチ出来るよう、スタンバイするの」
「え? 私が颯真君から好かれるよう自分の魅力を高める? どうするの?」
「例えば、そうね……素敵な笑顔を見せられるようにする! 丁寧な言葉を使う! あいさつをしっかりする! ありがとう、ごめんなさい、をちゃんと言う! 話し上手よりも、聞き上手になる! ポジティブ思考を持つ! とかよ!」
おお、それ、私でも出来る地道な努力って事ね。
納得!!
「な、成る程!」
お母さんは更に、
「凜、外見も大切よ」
と、のたまう。
うわ!
外見って……私、全く自信ナッシングだよ……
思わずお母さんへ反論。
「あの外見って……私、顔はお母さん似で、普通に地味子なんですけど……」
「うっさい! 違うの! 顔が地味子とか、そういう事じゃない! 良いから聞きなさい!」
「は、はいっ! 聞きますっ!」
「まず清潔感を持つのが大事。肌、髪、爪、は特にキレイに! メイクはナチュラルで魅せる! 制服は毎日、アイロンがけをしてよれよれのものを着ないように! 制服以外の時のファッションは白か、パステルカラーの服を着る!」
「うわ! 彩乃ママから、貴重なご意見! メモメモメモぉ!」
「ま、待って! わ、私もメモぉ!!」
お母さんのアドバイスを聞きながら遥がまめにメモを取るのを見て、
私も慌ててメモを取ったのである。
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