第7話 決意

 何だか釈然としなかった。Kさんはどこに行ったんだろうか。俺は次第に怖くなってきた。俺の知らないところで何かが蠢いている。Kさんの次は、陽キャで似たようなバックグラウンドを持つ俺の番かもしれない。


 俺は退去を考えるようになっていた。自宅がまだ都内にあり、住んでもいないのに、固定資産税や水道光熱費を払っている状態だった。そのシェアハウスは数カ月滞在して、居心地がよかったら自宅を賃貸に回そうと考えていたのだ。今は人に貸したりしなくてよかったと思っている。入居者がいると、なかなか退去を言い出せないからだ。


 俺はさりげなく身の回りの荷物をまとめ始めた。会社に来ていくスーツと私服が何点かしかなかった。住民票も移しておらず、毎週自宅に帰っていたが、そのことを管理人には話していなかった。特に聞かれなかったし、興味もないと思っていたからだ。


 俺は住宅ローンを返し終わっていないのに、賃貸するなんて何を馬鹿なことを考えていたんだろう。最近は勘違いが多くてやばい。


 結局、俺は何がしたかったんだろう。暇で時間を持て余していたんだろうか。それとも寂しかったのか。その両方だろうと思う。俺は寂しがり屋なのに、それを認めたくない。俺は人からすぐに切り捨てられる。Kさんの時が初めてじゃない。だから、誰かを好きになってはいけないのだ。もう、傷つきたくない。


 結局、俺が外に出会いを求めても、いいことは何もない。変な人と出会うだけだと悟った。俺は半年足らずで退去を決意した。Kさんのことは気になるが、俺に対しては、そこまで思い入れがなかったというわけだ。俺は仲がいいと思っていたけど、相手にとってはただの飯友に過ぎなかったようだ。


 俺は心にぽっかりと穴を抱えたまま、新しい環境から去る決意をした。


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