第21話:犯人
「お兄ちゃん!」
シオリの部屋に突撃してきたのはヨムだった。
なぜ、隣の家に住んでいるヨムが、うちのそれもシオリの部屋に突然現れた!?
「お兄ちゃん!」
「ヨム……」
「これはどういうこと!?」
「いや、シオリが突然意識を失って……」
そう言うと、ヨムは部屋の中を見渡した。そして部屋の中を見渡すと例の本で視線を止めた。
彼女は静かに近く付くと、その本を広い静かに開いた。
「なあ、ヨム。これは……」
「これはシオリちゃんなんだよ」
ヨムが本を拾い上げ、大切そうに胸に抱えた。
彼女の言った言葉の単語単語は理解できるけど、その意味が分からない。
「この本がシオリ?」
「そう、これはシオリちゃんの記憶で、心で、シオリちゃんの想い。それが身体から離れたからシオリちゃんは倒れちゃったんだよ」
どこかの魔法少女はソウルジェムに魂を移していたっけ。
「シオリちゃんはお兄ちゃんに告白されたのにすぐに答えなかった。本当は嬉しいくせにっ」
ヨムは部屋に立ったままシオリの本をパラパラとめくりながら話し続けた。
俺は床に座り込んだまま。シオリはベッドの上に倒れたままで意識がない。
そして、改めてヨムの方を見た時、目を疑った。
(バリッ!バリッ!)
ヨムが例の本から2ページほどを破ったのだ!
「ちょっ!お前!それ!」
「いいの。これが最適解」
ヨムは無表情で静かに答えた。
「でも、それはシオリの記憶ってお前が言ったんだろ!それを破ったら!」
「それはお兄ちゃんが悪いんだもん!」
『だもん』って……。
「お兄ちゃんがシオリちゃんに告白なんてするから!」
「お前、なんでそれをっ!」
ヨムの方を見たら驚いた。
あのヨムが目に涙をいっぱい浮かべているのだ。いつもひょうひょうとしている彼女から考えたら想像できない表情だったのだ。
「ななななな……」
「こんなものっ!」
ヨムは例の本を部屋の隅にたたきつけて部屋を走って出て行ってしまった。
「や、ちょっと待てって!ちょ、これ!」
俺は出て行ったヨムの方とベッドの上に倒れたままのシオリのどちらを先に対応したらいいのか分からず、おろおろしてしまうのだった。
そして、俺はここで気づいた。シオリの本を取り上げたのはヨムだということ。
当初全ての本を奪われて、シオリは全ての記憶を失っていた。
だから、別人のようだったんだ。あれは、素のシオリだったのかもしれない。
そして、理由は分からないけど、その本をヨムはシオリに返した。
でも、俺が告白した日からの記憶を破ってどこかにやってしまったのだ。俺が告白するまでの記憶だけを返した……。
シオリが記憶を失った原因は……いわば、今回の犯人はヨムってことか。
だから、シオリは俺が告白した日以降の記憶がなかったんだ。
オレが変な落書きをしてしまったから、変なシオリになってしまっていた。
俺は部屋の隅に落ちている本を手にとってみた。
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