第5話:一夜明けた朝
俺の一世一代の告白をシオリに喰らわせた翌朝、とても都合が悪いことがあった。
朝起きて、リビングに来たのだけれど、昨日の誕生日の飾り付けがそのままだったのだ。
それはそうだ。この家には俺とシオリしか人間活動をしていないのだから。
父親は新規工場の施工管理とかいう仕事をしていて全国を飛び回っているためほとんど帰ってこない。母親は大学で研究をしているとかでいつも帰りが遅く、家には寝に帰って来ている様な状態だった。
当然、飾り付けを片付けるのは、飾り付けをした俺がするしかない。
この状態をシオリに見られる前に片付けてしまいたいところだ。
ただ、彼女は生徒会長。絶対に遅刻などしない。だから、俺がこの飾りを片付けている最中にリビングに入ってくる。
昨日の告白のこともあってとても微妙な空気が流れることが決定しているのだ。
それでも、片付けないという選択肢はない。
シオリが起きてくる前に片付けないと色々と興ざめだ。
彼女の前では涼しい顔をしてサプライズを行ったようなふりをしたい。白鳥は水面下で絶え間なく脚を蹴り続けている……は間違った情報だったか。あれは鴨の話だったはずだ。
シオリの前では涼しい顔をして、裏では全力で頑張っている……そんな男に俺はなりたい。
それにしても、飾り付けというのは片付ける時には単なるゴミだな。
準備の時にはあんなに手間をかけさせておいて、用を成した瞬間ゴミになるのだ。
花火に似ているような気がする。
そんな事はどうでもよくて、俺はテーブルの椅子をリビングのあちこちに移動させて、ドタバタしながら目線よりも上に取り付けてある飾りを取り外し、次々ゴミ袋に放り込んでいく。
これだけドタバタしていたらシオリが起きてきて、また冷たい言葉をいく事は必至なのだけど、片付いていないほうがカッコ悪いので俺はひたすらゴミをゴミ袋に入れる作業を繰り返した。
指定ゴミ袋の口を縛った時に俺は気づいた。
あれ? シオリが起きて来ていない。
俺の恥ずかしい姿(?)を見ないように配慮してくれたというのだろうか。
否! あいつはそんな優しさを見せる様な女じゃない。
俺の弱いところがあったら進んで見つけて指摘して指を指して笑いかねないヤツなのだ。
そんな彼女が、俺がリビングで醜態をさらしているのを見逃すわけがない。
急な風邪などの病気の可能性を考え、俺は2階の彼女の部屋に前に行きドアをノックした。
「シオリ? シオリ、起きてるか?」
ドアをノックしても、呼びかけても返事がない。
それどころか、部屋の中に物音ひとつしない。
益々病気の可能性を考え俺は少し焦っていた。
「シオリ、開けるぞ! 着替えているのなら直ちにベッドにもぐりこめよ!?」
万に一つもそんな可能性はないと思いつつも、わざわざ口にするのは保身のためだろうか。
そんな事を考えつつも俺はシオリの部屋のドアを開けた。
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