第36話 夏のイベント4
お昼を食べ終わった後、再びログインする。
ガントが寄ってきた。
「フーマ!お前ランキング見たか!?」
「いや、見る暇なかったけど?」
興奮しているみたいだが、一体どうしたんだか。
「暫定一位だったぞ!」
「一位? 誰が?」
「フーマがだよ!」
「俺が!?」
ランキングは貢献度で算出されると言っていた。俺の午前中の頑張りが反映されたったことか。
でも、一位は驚いたな。
「まっ、レアボス倒したんだから当然よね!」
モー二がやって来て自慢げに言い放つ。
「なんで、モー二が偉そうなんだよ!」
ガントがバカにしたように笑う。
「いいじゃない別に!」
「モー二。かわいい」
イブもモー二を弄っている。
「さあ、始まるぞ!」
空気が変わった。
空から何かが降ってくる。
ズガァァァァァァァァァァン
爆風が襲う。
「なんだ!?」
ゾワァァァァァァァァ
「くっ! 凄いプレッシャーだ!」
あまりの威圧感に膝をついてしまう。
周りのプレイヤーも膝をついて顔を歪めている。
ゆっくりと歩いてくるそれは。
頭に角が生えている。
口からも下顎から鼻の当たりまで牙が生えている。
それは鬼、まさしく鬼だった。
「一体だけ?」
プレイヤーは騒然とする。
「おい! 一匹ならなんとかなるんじゃねぇか!? 攻めろ! 攻めろ!」
「みんな! 魔法をうて!」
プレッシャーに打ち勝ったプレイヤーが協力して倒そうと魔法を一斉に放つ。
ズドドドドオオオォンンンッッ
次々に放たれた魔法が炸裂する。
土埃で視界が覆われる。
しばらく様子を見ていると土埃が晴れてきた。
そこには無傷の鬼が立っていた。
「無傷かよ!?」
「おい! 無傷とかチートだろ!」
「チート?」
俺はなんの事かわからずにガントに聞く。
「狡いことして強くなってるってこと? かな」
「ふーん」
チートと言うならトクラさんやテンカさんがそうじゃないかな?
そう思うが口には出さない。
「トクラさんとテンカさんは何処かしら?」
「あそこ」
イブが指さすと座ってお茶を飲んでいた。
「何してんのよ! あの人達!」
目と顎で合図をしている。俺達に行けと。
「俺達に行けって言ってる」
俺はトクラさんの動作から読み取り、皆に告げる。
「いよぉっしゃー! 行ったろうじゃん!」
ガントがノリノリだ。
「前に出るぞ」
他のプレイヤーも向って行ってるが、次々に金棒に殴られ、吹き飛んで光の粒子に変わる。
鬼と目が合う。
『ガァァァァァァァーーー!!』
ビリビリッ
凄いプレッシャーだ。これは気を引き締めないとやべぇ。初っ端から全力だ!
「身体強化! 身体加速! からの風神!」
今の俺の全力で行く。
「いくぞぉ!!」
一気に加速して鬼まで駆け出していく。
周りの景色がゆっくり流れる。
「ウラァ!」
飛び膝蹴りを繰り出す。
バキィッ
金棒で弾かれる。
「まだまだぁ!」
腕を狙い手刀を放つ。
金属同士がぶつか合った様な音を響かせて、手刀は腕に弾かれた。
「マジか!? 無傷かよ。」
何事も無かったように金棒で殴りつけてくる。
ガァァンッ
ガントが盾で弾いてくれた。
「フーマどうだ!? 行けそうか!?」
「やってみるけど、期待すんなよ?」
一旦下がり、集中する。
「
手刀の周りに風の刃が形成される。
力を込めて踏み込み、一瞬で鬼に肉薄する。
鬼の金棒が振るわれる。
迫る金棒。
それをギリギリで身を翻して躱す。
「フンッ!」
ギャリギャリギャリ!
首にはいった。
「ガァァァァ!」
金棒を持ってない方の拳で殴りかかってくる。
それには反応できずに顔を殴られてしまった。
「ぐぁ!」
鈍い音が頬から伝わる。
そのまま吹き飛ばされた。
「ちょっと、大丈夫? ヒーリング!」
「サンキュー! モー二!」
鬼のHPを見ると少しだけ減っているが、急所を攻撃した割に全然効いていなかった。
どうするかなぁ。
思慮を巡らせて考えていると。
「ガァァ!」
鬼が肉薄してきた。
休ませてはくれないか。
「くぅ!」
振り下ろされる金棒。
紙一重で避ける。
顔を掠めた。
ズガァァンッ
すぐ横の地面を凄まじい力で叩きつける。
続けざまに攻撃を繰り出してきた。
ドスッ!
腹を蹴られる。
今度は頭を捕まれ。
ガァァンッ
地面に叩きつけられた。
「うぐっ」
「フーマ! 逃げて! ヒーリ──」
──ドスッ
俺を掴んだままモー二を蹴り飛ばす。
「クソッ! オラァァ!」
ガントが盾でシールドバッシュを放つ。
鬼には直撃した。
だが、鬼はビクともしない。
「ガァァ!!」
俺は持ち上げられ、ガントに叩き付けられた。
グシャッ
「「ガッ!!」」
俺達三人が倒れ、イブは立ち尽くしていた。
近づいてくる鬼。
「ダークウェーブ!」
魔法が当たるが。
鬼は歩みを止めない。
ガンッ!
金棒で吹き飛ばされる。
「キャァァ」
三人の元へ吹き飛ぶ。
「大丈夫か!?」
声を掛けるがその顔は恐怖に陥っていた。
「恐い」
恐怖で立てないようだ。
俺が前に出る。
HPはレッドゾーンである。
俺は最後の力を振り絞る。
「風撃!」
拳に風の塊を纏わせ。
「ハァァ!」
顔面に放つ。
バキィッ!
鬼が拳に向かって頭突きをしてきた。
鬼が笑う。
金棒が振り下ろされる。
目の前が暗くなった。
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