第37話 夏のイベント5
凄まじい音が響き渡るが衝撃が来ない。
目を開けると、そこには見た事のある背中だった。
「ふぉっ。ふぉっ。ふぉっ。情けないのぉ。こんな鬼におくれをとるとはのぉ」
「トクラさん。遅いですよぉ」
身体の力が抜け、フニャフニャと地面に座り込んでしまった。
『ガァァァァァ!』
吹き飛ばされていた鬼は怒りの声をあげて迫ってきた。
金棒をトクラさんへ振り下ろす。
スルッとトクラさんが受け流し、地面に金棒があたる。
地面を捲りあがらせる程の威力の一撃だった。
「ワシの弟子の分じゃ、受け取れい」
「
ズバァァァァン
内側から破壊された鬼はピクピクしている。
ダメージエフェクトは口から出ているためダメージは確実に負っているみたいだ。
「ふぉっ。ふぉっ。ふぉっ。本当に硬いのぉ。これでHPがまだ半分もあるんじゃのぉ」
そう。今の一撃でHPが半分も減った。
今度は逆に鬼が攻めてきた。
「ほっ。ほっ。ほっ」
鬼からの攻撃を受け流したり、避けたりしながら、鬼の周りを舞っているトクラさん。
トクラさんは流石だ。
あの猛攻を捌ききっている。
とても俺にはまだできそうにない。
弱音を吐いている場合でもないけど。
「フーマよ。見ておれ。一気に片付けるぞい」
ふぅと一拍間をあける。
トクラさんが集中を高めた。
空気が張り詰める。
おもむろにトクラさんが言葉を紡ぐ。
「
ズワァァァァァ
トクラさんの周りに無数の魔力が集まる。
俺はその気配を感じとり、驚愕した。
トクラさんを包み込んだ魔力が体を一回り大きくするように形成される。
一瞬、鬼に肉薄する。
トクラの腕がブレて見えなくなった。
「
ズッガガガガガガガガガガガ……
音がやむ前に鬼が光の粒子に変わる。
「ふぅ。終わったのぉ」
「ありがとうございました。助かりました」
やっぱりトクラさんには敵わないや。
頭を下げて礼を伝える。
「ふぉっ。ふぉっ。ふぉっ。精進するのじゃぞ」
「はい!」
そう肩を叩いて労ってくれた。
――――――――――――――――――――――
午後の部はこれで終了です。
時間の残りはありますが、唯一のレアボスが倒されたため、終了とさせて頂きます。
一時間後に集計結果からランキングを発表します。
――――――――――――――――――――――
「終わりましたね」
「では、ワシは行くからのぉ。またランキングが発表される時にでものぉ」
「はい」
手を振って去って行くトクラさん。
カッコよすぎる。
俺のヒーローだ。
「フーマ大丈夫か!?」
ガントが慌てて声を掛けてきた。
「あぁ。大丈夫だ。トクラさんに助けられたよ」
「そうだな! 凄まじかったな! 最後の攻撃!」
最後に繰り出した攻撃を思い浮かべながら苦笑する。
「あれは、真似できないなぁ」
「フーマはフーマだから、いいんだって!」
ガントに励まされてしまった。
「危なかったわね。あの人来るの遅いのよ!」
「遅い。苦情」
モー二とイブが文句を言っている。
「まぁ、来てくれなかったら危なかったから。感謝しないとなぁ」
フーマ達は雑談しながらランキング発表を待つのであった。
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