第34話 夏のイベント2

「挑発!」

「身体強化!」


 前衛のガントと俺で前線を維持するように戦う。他の前衛プレイヤーもモンスターの進行を止めるのように盾でぶつかり押し返す。盾がないものは殲滅に動く。


「あんまり前に出過ぎないでよ! 囲まれるわよ!」


「「おぅ!」」


 モー二の指示通り前に出すぎないように注意しながら敵を倒していく。


「そっち抜けた!」


 ゴシャ!


 打ち漏らした敵をメイスでモー二が粉砕する。

 メイス捌きがいつの間にか様になっている。


「ダークウェーブ」


 イブの遠距離魔法で遠いところの敵も片付けていく。


「みんな。なるべく温存するぞ。長期戦になるからな」


 フーマが声をかけながら敵を倒していく。

 魔法はあまり使わない方が良いだろう。

 MPがなくなったら前衛しか戦えなくなる。


 ズドォォォォォン


 遠方で凄まじい音がする。視線をそちらへ向けると、モンスターが空中に舞って光の粒子に変わっていく。


 あれは、トクラさんかな? この前のモンスター吹き飛ばしたやつやったんだなぁ。ホントにすげぇや。


 内心自分の事のように嬉しい気持ちになりながらモンスターを倒していく。


 どのくらい時間が経っただろうか。


 ひたすら倒し続けた俺は集中力が切れかかっていた。ガントが叫ぶのが聞こえた。


「フーマ! もう少しで午前の部が終わる! 温存する必要はねえ! 思いっきり行け!」


「おう!」


 ガントの有難い言葉に、気合を入れ直した俺はここから魔法を使い全力を出すことにした。


「身体強化! 身体加速!」


「そして、風神!」


 フーマの周囲一体が暴風に包まれる。


「フッ!」


 勢いをつけて踏み込み、敵陣ど真ん中に突っ込む。


「ハァッ!」


 気合いを入れて中段突きを放った。

 

 ズバァンッ!!


 目の前のモンスターの塊が宙を舞う。

 指導の成果で技のキレが増したようだ。

 魔法の力も相まって凄まじい数のモンスターを吹き飛ばしていく。


「セイヤァ!!」


 周囲を巻き込むように回し蹴りを放つ。


 ドパァンッ!!


 周囲のモンスター全てが吹き飛び光の変わっていく。


「ははっ。やべぇ。テンション上がってきた!」


 拳を突き出し、足を振り抜く度にモンスターの塊が吹き飛んでいく。吹き飛んだ先から光の粒子に変わる。


 空気が。


 変わった。


 ガァァァァァァーーーーー!


 遠くから咆哮が聞こえる。


 見ると一つ目のデカいモンスターがいた。


「なんだあれ?」


 疑問を呟くとガントが叫ぶ。


「あれは、サイクロプスだ! かなりデカいぞ!」


「なによあれ! あんなの倒せるわけ!?」


「あれ。無理。では?」


 モー二とイブが驚愕の声を上げる


「まずは、足から攻めるぞ!」


 多少怯みながらもガントが指示を出す。


 俺も魔法を維持したまま向かう。


「俺が先行する! 魔法で援護頼むぞ!」


 まずはサイクロプスのアキレス腱を狙う。

 肉薄すると後ろから回し蹴りを放つ。


 ズバァンッ


 手応えはあったが、ダメージの光は少ししか出ない。


「硬い! 少ししか傷付かない。ヤバイぞ」


「フーマ! 同じところをひたすら攻めろ! 俺が引きつける!」


 ガントに指示された通りひたすら同じところを攻める。


「フッ! フッ!」


 手刀と蹴りで傷を広げていく。

 ここで新しい魔法を試す。


風斬かぜきり


 手刀の先に風の刃が形成される。

 チェーンソーのように風の刃がグルグルと回っている。


「セイヤァ!」


 渾身の技が。

 サイクロプスの腱を。

 断ち切った。


 スパァン!!


 足の腱が切れ、サイクロプスが片膝をつき崩れ落ちる。


「グォォォ」


「よし! 今だ! 目に向かって攻撃しろ!」


 ガントが指示を出しながら魔法を飛ばす。


「エクスプロージョン!!」


 モー二もイブも魔法で援護をくれる。


「ホーリーレイ!!」

「ダークレイ!!」


 やつのHPが減っていく。

 ここぞとばかりに、周りのプレイヤーも一緒になって魔法を放つ。


 順調にこのままいけば倒せる。


 そう思った時


「グガァァァァァ」


 咆哮をあげ、腕を振り回し始めた


「下がれーーー!!」


 ドスンッ


 ドスンッ


 俺は咄嗟に避けたからなんとか難を逃れた。だが、指示が間に合わなかった。


 何人かのプレイヤーが巻き込まれ光に変わる。


 サイクロプスとの戦いは、ここからが本番だった。

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