第33話 夏のイベント1
イベント開始の日の日曜8時50分。ファステアでは大量の人で溢れていた。
プレイヤーがそれぞれのクラン毎に集まって始まるまでの様子を伺っている。
というか牽制しあっている。
「ふぉっ。ふぉっ。ふぉっ。活気があっていいのぉ」
「楽しみだわ! 思う存分暴れるからね!」
北門の前には武十館のメンバーで集まっていた。テンカさんが目をギラギラとさせて獰猛な笑みを浮かべている。
「緊張するなぁ。師匠達の闘いも見れるし楽しみだ!」
「そうだな。前のトクラさんの闘いを見る限り、かなりの無双状態になりそうだけどなぁ」
楽しそうに落ち着かない様子のガント。
俺はこれからのトクラさんの無双になりそうな気配に遠い目をして同意する。
前の様に闘われては自分達がポイントを稼げないのではないかと、心配していた。
こんな事ばかり考えていてはダメだ。
弱気になるな!
トクラさん達を超えるように頑張るんだ!
自らを鼓舞して心を奮い立たせる。
「トクラさんもだけど、テンカさんもヤバイと思うわよ……」
「あれは。やばい。恐い」
モー二とイブも遠い目をしながら呟く。お忘れかもしれないが、モーニとイブもゲーム内ではテンカさんに指導を受けていた。あの戦闘狂に扱かれたであろう事は容易に想像がつく。
「武十館として、出るんだ。負けないように頑張ろう。気合い入れないと」
「おう!」
「そうね!」
「うん!」
ガント、モー二、イブが同意する。
時間が迫ってきた。
そろそろ、モンスターの大侵攻が始まる。
ドドドドドドドドドドドドドドドド……
腹に響くような音を唸らせながらこちらに迫ってくるモンスター達。目の前には地平線を埋め尽くすようにモンスターが迫ってくる。
黒い影が迫ってくるように見え、まだ前方のモンスターでさえ、なんのモンスターか分からない。しかし、凄い数と言うのだけは、一目瞭然だった。
「ハハハッ! すげぇ数だなこれ! 防衛出来んのか!?」
ガントが呆れたように笑う。
たしかにこの数を見たらおられ達だけなら諦めていたことだろう。
だが、今は違う。テンカさんとトクラさんという強力なプレイヤーが仲間に居る。この二人がいる今、俺たちにできないことはない気がする。
「プレイヤーもこれだけ居るんだ。負けないさ。それに、トクラさんとテンカさんが負けるところ想像できるか?」
「ハハハッ! たしかにな! 想像できねぇわ!」
プレイヤーも門の前方を埋め尽くすくらいの数が待機している。
皆一様に獰猛な笑みを浮かべて負けることなど微塵も考えていないようだ。頼もしい。こんなに沢山のプレイヤーと一緒に戦うことなんてなかった。
このイベントもしかしたら凄い楽しいかもな。トクラさんとテンカさんの無双にも期待してる。俺達も討伐数稼ぐぞ。
『ウォォォォォォォォォン』
すぐ前方に迫ってきたのは、ウルフ系モンスターだ。
「そろそろ魔法の射程に入るから、デカいの行くぞ!」
魔法を打つべく構えて叫ぶガント。
それにモー二、イブが続く。
「私もいくわ!」
「私も。負けない」
モンスターが射程に入った。
他のプレイヤーも一斉に魔法を放つ。
「メテオ!!」
「ホーリーレイ!!」
「ダークレイ!!」
火を纏った隕石が飛来し、光の塊が横凪に走る。闇のエネルギーが着弾して膨れあがる。
他のプレイヤーの放った魔法もモンスターの群れに着弾してそれぞれが分厚いモンスターの壁をぶち抜いている。
カッッ!!
ズガァァァァァァァァァァンンンッッ
前方を走っていたモンスターがドンドンと光の粒子に変わっていく。上空に吹き飛んでいくモンスター。ダメージにより光に変わっていく。
その光が幻想的でこれからのイベントを彩る死のイルミネーションだった。
「っしゃぁ!! 行くぞぉ!!」
ガントが駆け出して行く。
それに俺とモー二とイブも続く。
まだまだいるモンスターの群れにプレイヤーが突っ込んでいく。プレイヤーたちは各々の武器を手に取り駆ける。
拳で向かうもの、剣、斧、槍など武器を使う者。思い思いの武器を手に討伐へと駆け出す。
こうして、イベントの火蓋が切って落とされた。
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