第11話 疾風の日常
『ジリリリリリリリ……』
バシッ!
ムクっと起きる。
目覚まし時計の上に置いていた手をどかし。
軽く寝癖を直して、着替えると日課のジョギングに出かける。
今日は天気が良くて気持ちいいな。
朝から陽の光を浴びながら走り。
汗をかいて身体の脂肪を燃焼する。
河川敷を走って家に戻って来ると、中段突き、上段受けなど空手の基礎を一通り行って汗を流す。
「はっ! ふーっ。ふっ!」
一つ一つの動きがビシッと止まる。
丁寧に動きを確認していく。
頬を汗が伝う。
次は、型を流れるような動作で行う。
相手がいるかのような錯覚に陥るほど、臨場感のある型の演舞である。
突きから流れるように守りにいき。
上段からの攻撃を受けた後に飛び蹴りを放つ。
下段からの攻撃を受け蹴りを放つ。
一つ一つの型には意味があり。
その意味を理解しながら演武をしているのだ。
細かい動作も綺麗。
それは。
これまで積み重ねてきた修練。
その厚みを物語っていた。
「ふぅ」
一通り終わった後、シャワーを浴びて朝ご飯を作る。
今日も目玉焼き、サラダ。
タンパク質をとりつつ野菜をとる。
なんだかんだ言っていつもこのメニューになってしまう。
作るのが面倒臭いのと、選ぶのも面倒だから。
「おはよう。疾風。今日も早いな」
「おはよぅ父さん。父さんも目玉焼き食べる?」
「ありがとう。もらうよ」
二人は一緒にテーブルに座ると朝ご飯を食べ始めた。
父さんは朝は割と会う時がある。
たまに徹夜で居なかったりするから毎日一緒に食べるわけではない。
「昨日はVRゲームをやったんだって? どうだったんだ? 面白いか?」
「うん。予想以上に凄くて驚いたよ! 異世界に行ったみたいな感覚だった。草原があったり、街並みが中世ヨーロッパっぽくて、すごく綺麗だったんだ!」
思わず説明する声が高くなり、興奮してしまった。
なんだかニコニコして聞いている父さん。
なんか興奮しちゃって恥ずかしかったな。
「そういえば、母さんは?」
話を変えようとする。
それだけ恥ずかしかった。
「知っての通り、まだ寝ているよ。いつもの事だろ?」
母さんは朝が弱くて、仕事の日でもギリギリまで寝ていることが多いのだ。
普段はカフェで働いているので出勤が遅い為、それが日常と化している。
「「ごちそうさまでした」」
「父さん、置いておいていいよ。後で洗っとくから」
「いつもすまんな。よろしく。それじゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい!」
家を出る父を見送り、洗い物を済ませたら課題に取り組む。
夏休みだからと行って放っておくと、後で困るのが目に見えているため、日常的にやることにしているのだ。
悠斗なんかはいつも課題をやっていない事が多くて助けを求めてくる。
いつも俺が助けてやるのが恒例になっていた。
2時間ほどで終わらせると
「よしっと。今日の分は終わりっと。CWOを昼までやるかなぁ」
ベッドに横になりログインする。
――――――
――――
――
目を開けると、セカンテアの門の前にいた。
そうだ、昨日はここでログアウトしたんだった。
フレンドを確認してみよう……今日はまだ誰もログインしてないなぁ。1人で狩りに行って行ってみようかな。ファステアの方ならモンスターもそこまで強くないだろうし。
門を潜って森へと歩いていく。
おっ! あれは、人型のモンスターか。ゴブリンって奴かな? 3匹いるなぁ。奇襲を仕掛ければどうにかなるかな?
茂みに隠れながら近づいて行く。
3匹の背後に回ると小声でスキルを使う。
「身体強化」
白い湯気のエフェクトが出たことを確認すると、一気に仕掛ける。
一瞬で駆け寄る。
「ハァッ!」
1番手前のゴブリンの首へ飛び膝蹴りを放つ。
ボキッ!
――――――――
CriticalHit!!
――――――――
1匹は光の粒子に変わる。仲間をやられたことを察知した2匹のゴブリンが怒りをあらわに襲ってくる。
『プギッ!』
手に持っている棍棒を振り回してきた。
ブンッ!
横にかわし2匹を直線上に入れると、手前のゴブリンに中段突きを放つ。
ドスッ!
HPが3分の1減ってるなぁ。後ろのやつが来る前に片付けよぅ。
「フッフッッ!!」
左中段突きからの右の逆突を顔に放つ。
バシッ! バキッ!
前の1匹も光の粒子と変わる。
最後の1匹は距離をとって様子を見ながら、魔法を試す。
魔法は、イメージがこの世界に認められれば事象として具現化してくれる。なら、俺が考えていることも出来るはずだ。
フーマは集中しながらイメージを固めていく。
体の周りに風を纏うようにイメージし、体の周りに固定するようにイメージする。
ゴブリンが剣を振り上げて迫ってきた。
「ウインドアーマー」
剣が振り下ろされる。
ザシュッ
肩から腰にかけて赤い粒子が飛ぶ。
やっべぇ。魔法失敗した。回復薬を一気に飲み干す。
んー。なんでだろうなぁ。
試行錯誤しながら昼までレベル上げをするのであった。
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