第10話 初のVRMMOをやってみて

「ようこそ! セカンテアへ!」


 門番に迎えられながら、門を潜って街へ入っていく。

 ビッグベアを倒した俺達はその足でそのままセカンテアに来ていた。


カンッカンッカンッ


 鍛治をしている音が聞こえる。

 ここセカンテアでは武器や防具を作成する施設が充実しており、大部分のプレイヤーはここで装備を整える。


 そうか。

 ガント達もここで装備を整えたのかな?

 だといたらかなりいいもののはずだ。


 職人さんに作ってもらうってことはオーダーメイドみたいなもんだろ。

 NPCにお願いして作ってもらう方法もあるが。

 

 ここは生産職プレイヤーも拠点にして活動している者が多いってネットで書いてた。

 昼に一緒に調べてたんだよな。

 次の街がどんなとこなのか。


「じゃあ、ここで装備でも作ってもらうか! 俺もこの街で作ってもらったんだ!」


 やっぱりガントの武器と盾はこの街で作ってもらったものだったんだ。

 俺もなにか作ってもらえるだろうか。


「ちょっと! そろそろ夜だし、私達はログアウトするわよ! 装備はまた明日にしましょう?」


 モー二が焦ったようにガントに言う。

 たしかにそうだ。

 もう夕食時だ。


 ウチも母さんが帰ってきてるかもしれない。

 降りていかないとうるさそうだ。


「たっ、確かにもういい時間だな。また明日にしよう! フーマ、ごめんな! 初日なのにとばしすぎたわ!」


「こっちこそ、楽しかったから夢中になっちゃってたよ。モー二の言う通りだし、今日の所はログアウトしよう」


 たしかに飛ばしすぎなのかとしれない。

 初日からセカンテアに来た人などいるのだろうか。

 攻略組と呼ばれる人達は来たかもしれないよな。


 このゲームの掲示板にも居るんだが、攻略組と呼ばれるほぼゲームに時間を費やしている人達がいるらしい。


 何時間やったかがステータスみたいな感じになっていて、あまり良くない。と掲示板に書き込んでいる人がいた。


「んっ。眠い……また明日」


 そういうと光に変わっていった。

 一瞬何が起きたのか理解出来ずに戸惑った。

 だが、なんてことは無い。

 イブが先にログアウトしてしまったようだ。


「あっ、待ってよ! フーマ、また明日ね!」


「あぁ、今日はありがとな!」


 慌てて続くようにモー二もログアウトする。


「じゃあ、俺らもログアウトするか! また明日なフーマ!」


 ガントも光に包まれていく。

 

「おう! ホントにありがとな!」


二人で同時にログアウトする。


――――――

――――

――


浮遊する感覚の後に目が覚める。

ヘッドギアを外すと周りは真っ暗になっていた。


「ふぅ。体が固まってるなぁ。」


 昼と同様にストレッチしながら体をほぐすと、ベッドの上でさっきまでのゲームを思い起こす。


 風の受けた感触。

 そして草木や鍛治をやっているちょっと焦げたような匂い。

 そして、日の温かさまで感じる。


 あのリアル感。

 半端じゃない。


 あれは凄かったなぁ。

 ホントに異世界に行ったみたいでゲームって感じも全然しない。

 体の動きも違和感なかったもんなぁ。


 ヤバいな。

 これは、ハマりそうだ。


 高鳴る胸を少し深呼吸して落ち着ける。

 気持ちを高揚させながら、リビングに行くと母さんが料理を作っていた。


「あぁ。母さん、帰ってきてたんだね。ごめん。何もしてなくて」


「いいのよぉ。いつもしてもらってるしぃ。この前話してたゲームをしてたのぉ?」


 この前、流石にゲームを買うにあたって母さんに話をしていたんだ。

 買うのは俺の金だけど、一応あのゲームを買うには未成年は親の承諾が必要だったんだ。

 

「そっ。悠人とやってた」


「悠人君には感謝しないとねぇ。空手以外の事するなんて今まで無かったからぁ。ありがたいわぁ」


 母さんはゲームを俺がやると言い出した時。

「いいじゃない! やりなさいよぉ」といった。

 普通の親はゲームなんて止めなさいって言うもんなんじゃ無いのだろうか?


「そう? ゲームをやっていいなんて親が言って良いもんなの?」


「あら? どうして? いいじゃない。気分転換になるなら。どうだったの? ブイアールだっけ?」


 母さんは機械に強くないからVRMMOと言っても理解は出来ないし。

 説明をするのはかなりの困難を極めるのだ。


「うん。ビックリした。まるで異世界だよ! すげぇんだ! 風は感じるし、魔法だって撃てる! 草木とか焼ける匂いだってするんだ!」


「あら、そうなのぉ? そんなに疾風が興奮するなんて。空手以外で初めてじゃない? 私もやってみようかしら?」


「い、いやぁ。母さんにはどうかな……」


「どうして? 何かやっては行けないことでもある訳?」


「いや、別にないけど……」


「さては……女の子も一緒にやってるの?」


「……」


「図星ね……まぁ、いい事ね」

 

 それ以降は突っ込んで聞かれなかった。

 たわいない会話をしながら、ご飯を口に進める。

 何故かご飯がいつもより美味しく感じる疾風であった。


 やっぱり精神的に参ってたのかなぁ。

 ここ最近空手のことばっかり考えて、鍛錬鍛錬ってコンを詰めすぎてたのかもな。


 風呂を済ませ、自分の部屋に戻りベッドに横になりながら今日のことを考える。


「想像以上にゲームって凄いんだなぁ。まだまだ、夏休みだし、その間は楽しむかな」


 最近は感じられなかった充実感を胸に抱きながらゆっくり眠るのであった。


――――――

――――

――

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