第9話 初のエリアボス3

『ウガァ』


ズドンッ!


 発狂状態のビッグベアから凄まじい爪での一撃が放たれる。

 振り下ろされた爪を紙一重で避ける。

 爪の攻撃での風圧が顔を撫でる。


 近づけないな。

 この状態の攻撃は一発で俺は死ぬだろう。

 レベルがもっと高かったら良かったのかもしれないが……。


 そんなことを今考えてもしょうがねぇ。

 気合を入れないと。

 だが、このままでは攻撃ができない。

 何か手はないか。


 紙一重で攻撃を避けながら考える。

 考えろ。

 どうすればこの状態を打開できる?


 一瞬の隙はガントに頼めば作れるだろう。

 作ってもらったとして、俺は三割を削れるくらいの攻撃ができるか!?


 ……できるかじゃねぇ。

 やるんだ。


 そういえば!

 さっき試してた風魔法!

 試したみたいになにか攻撃性のある攻撃をすればどうにか出来るかもしれない。


 それに、このビッグベアは魔法攻撃に弱いという情報を昼に見たじゃねぇか。

 なら、使わない手はない。


 イメージかぁ……。

 どういう攻撃が強いか。

 遠く昔の記憶を遡る。


 前にロボが腕にドリルを付けて敵を攻撃してるのを見たな。

 あの時はヒーローに憧れてたっけな。

 それで空手を始めたんだよな。


 風をドリルみたいに腕に付けれたらいいかもな。

 土壇場だけど、やってみるか!


 ようはイメージがしっかりしていればいいってことだろ。

 風で腕にドリルを付ける。

 それは竜巻みたいに。


 先は鋭く尖っていて。

 ドリルみたいにグルグルとしている。

 勢いよく回っている。


 いける!


「ドリルサイクロン!」


 ギュルギュルギュルッと腕に緑色の風が回り始めた。


 イメージ……イメージ……


 風はドリルの形を成してきた。

 きたきたぁー!


 できた!


「ガント! 全力で攻撃するから、一瞬だけ、こいつを引き付けてくれ!」


「おうよ!」


 ガントは再びビッグベアの前に踊り出す。

 盾を駆使して攻撃を受け流し、剣でチクチク攻撃しながら、引き付けてくれる。


「こっちだこっちだ! ほらほら!」


 ガントが攻撃と声で意識をそちらに向けてくれている。

 ビッグベアが、ガントに気を取られて攻撃を仕掛けた瞬間が狙い目だ。


 そこを狙って一発で決める。

 それまでこのドリルの攻撃性を高めるんだ。

 もっと回せ!

 

ギュルギュルギュルッ!


 いい感じだ。

 もっと、もっとだ!


ギュギュギュギュゥゥゥゥゥンンンン


 きたきたきたー!

 もういっちょ攻撃力を上乗せするぞぉぉ!


「身体強化!」


 体から白い湯気があがる。

 これで身体能力も1.5倍だ!


 これで、正真正銘!

 今の俺の全力だ!


 ビッグベアがガントに気を取られて攻撃を仕掛けた。

 チャンスだ!

 行くぞ!


 ビッグベアに向かって駆け出す。

 迫ってくるビッグベア。

 まだあちらを向いている。


 無茶苦茶に暴れているが。

 ガントがなんとか気を引き付けてくれている。

 紙一重で避けながら。

 

ドン!


 ビッグベアが爪で地面を打ち、体制を崩している。


「フーマ、今だ!」


 ガントがビッグベアの攻撃をなんとか受け流して作ったこのチャンスを。

 無下にはできない!

 今しかないぞ!


 膝をおり力を溜めて一気に跳躍する。

 右腕の竜巻の風力もあり。

 速度が一段と速い。


 周りの景色がスローで流れていく。

 どんどん近づいてくるビッグベア。

 俺の腕のドリルは最大限の回転数をたたき出している。


 これは絶対に決めなきゃならない。

 最後のチャンスかもしれない。

 俺が決めるんだ。


 急所の狙い目。

 ビッグベアの首元が見えた!

 ここに叩き込めばクリティカルヒットで最大限のダメージをたたき出せるはずだ。


 ドリルの竜巻を纏った拳を後ろに引き絞り。

 力の限り腰を回転させて自身の回転力も加える。

 

 体勢が整わない空中であったが、今までの修練のなせる技だろう。

 お手本のような綺麗な中段突きが首元に放った。


「ふっ!」


ズギャギャギャギャギャギャンンンンンッッッ!


 ビッグベアの首からは光の粒子がドバドバと流れ出ていく。

 その粒子が段々と広がっていき。

 やがて体全体に広がり、ビッグベアは光となり空に溶けていった。


 着地し、呆然としているフーマ。


「勝った……のか?」


「フーマ、ほぼ一人で勝ったじゃねぇか! すげぇな! すげぇよ! ハッハッハッ!」

 

「フーマ、やるじゃないのよー! 見直したわ」


 後ろからにこやかに笑いながら近づいてくるモー二。


「ほぼ一人で……凄い。でも……ガントも……凄い。一人で捌ききった」


 さすがイブ。

 ガントもちゃんと褒めてる。

 褒めないと後で拗ねるからな。

 

 イブも近づいてきた。

 なんかイブには悪かったな。

 何もしないで暇させちまったな。


「いや、みんなのおかげだ。勝ててよかった。実は魔法を少し試してたんだ。上手くいってよかった」


「あれ凄かったよなぁ!? あんなの出来るなんてあんまり聞いたことねぇけど?」


 ガントがそういうと、イブが頷いている。


「たしかに……腕に……魔法……聞いたことない」


「そうなんだな」


 イブも俺の使った魔法の様なものは聞いたことがないみたい。

 普通は杖を媒体にして発動するんだとか。

 もしかしたら武術士特有なのかもな。

 

「ドロップ確認しようぜ!」


――――――――――

ビッグベアの肉×1

ビッグベアの毛皮×2

ビッグベアの魔核×1

――――――――――


「魔核?」


 魔核ってなんだ?

 何に使う?


「おっ! 魔核がドロップしたのか? レアだぜ! すげぇじゃん!」


「魔核は……杖とか…………アクセに使える」


 ガントが言うには凄いらしい。

 杖とかアクセにできるのか。

 だからイブが反応したのか。


「じゃあ、ドロップも確認したし、セカンテアに向かいましょう」


「「おう!」」


 四人はエリアボスの戦闘を終え、次の街へ進むのであった。

 次の街では何が待ち受けるのか。

 

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