第8話 初のエリアボス2

 パーティでことに当たるということはチーム戦になるということ。

 俺はチーム戦は初めてだった。


 だが、問題はなかった。

 ガントが前に出て指示を出してくれたからだ。

 

「まずは俺がボスを引き付ける! 今回のメインはフーマだから、あんまり一気に終わらせるなよ!」


「「了解」」


 指示を出しながらガントはビッグベアに向かっていき、盾を叩く。


「挑発!!」


 スキルが発動した。

 発動すると同時にビッグベアのヘイトがガントへ向かう。

 爪の振り下ろしを盾を使って受け流す。


 受け流しながらこちらをチラッと見る。

 今はビックベアが体勢を崩している為、少しの余裕が生まれた。

 

「受け流したあとの体勢が崩れている時を狙うか、後ろから狙え!」


「おう!」


 ガントの指示通りに後ろに回り込み、足を中心に下段蹴りや正拳突きで攻撃していく。

 ビックベアのヘイトはまだガントに向いている。


 少しづつHP減ってきてるけど、まだまだだな。このままじゃ埒が明かない。スキルを使うか。


「身体強化!」


 体から白い湯気のようなものがあがる。

 これで身体能力が向上したはずだ。

 手を握ったり開いたりしてみる。


 たしかに1.5倍位の感じにはなってるかもしれない。


 身体能力があがった上がり幅を正確に感じ取れるというのは凄いことである。

 実際、ゲームとしての仕様も1.5倍上がるように調整されている。


 自分の身体のことはよく分かっている。


「はっ! ウラッ!」


 左の突きから下段蹴りを放ちダメージを蓄積する。


 ビッグベアは足にダメージが効いているのか少し動きが鈍くなった。

 そして、足がプルプルとして膝が曲がっている。


 これは効いてるな。

 攻め時だ。

 

 ビッグベアの首に向かって跳躍し、渾身の回し蹴りを放つ。


ズガンッ!


――――――――

CriticalHit!!

――――――――


よしっ! クリティカルが出た!


「フーマ! 一旦下がれ!」


 ガントから指示が飛ぶ。

 その指示通りにバックステップでビッグベアから距離をとる。


 すると、突然ビッグベアが体を仰け反らせた。


 アイツ……何する気だ?


「耳をふさげ!!」


 慌てて耳をふさいで体に力を入れる。

 身体がざわめく。

 なにか来る。


『ガルルルルウゥアアアアァァァーーー!』


 衝撃波と共にビッグベアの咆哮が放たれた。

 身を固くして備える。

 ビリビリと塞いでる耳を刺激してくる。


 これは、やべぇ。

 耳ふさいでなかったらしばらく行動出来なかったかもな。

 危機一髪だった。


 これはガントがいなきゃ俺はここで敗北していたかもしれない。

 反省しないとな。

 なにか起こす時は予備動作があるんだな。


 人間も一緒だ。

 攻撃を撃つ前に筋肉が動いて分かる。

 わかる人は上級者と呼ばれる人達だが。


 それで次の動作が分かる様になると避けることも出来れば、カウンターを当てることも出来る。 


「オレがまた引き付ける! フーマは咆哮の前兆に気をつけながら、攻撃しろ!」


「ダメージ喰らったらすぐこっちに下がってきなさいよ! 回復するから!」


 前に出ながらガントが、後ろに控えているモー二が声を掛けてくれた。


「あいよ!」


 同じようにガントが挑発を使う。

 再びビッグベアに近づき、足が効いていたので今度は足を中心に攻撃していく。


 しばらく攻撃していると段々とHPが減ってきていることに気付いた。

 もう少しでコイツを倒せる。

 そう思ったらより一層攻撃に力が入る。


「もうすぐ三割きるぞ! 狂乱状態になるから、気をつけろ!」


 三割きるとまた何かあるのか?

 狂乱状態?

 なんだそれは!?


 そう思いながらも攻撃の手は休めない。

 ひたすら蹴りを入れる。

 すると、変化が訪れた。


『ウガァァァーー!!』


 ビッグベアが突然叫び出した。


 何事だ!?

 もうすぐ終わるってのに。

 これが狂乱状態ってやつなのか!?


 ビッグベアが体に赤い湯気を纏いながら暴れ始めた。


 突然の出来事に咄嗟に反応ができなかった。

 ビッグベアはいきなり後ろを向き、爪を振り下ろしてきた。

 目前に迫る爪。


 ヤバイ。これは当たる!


「くっ!」


 咄嗟に横に転がりこむ。

 だが、足を掠ったようで激痛が走る。

 ダメージを受けたところから赤い光の粒子が流れ出ている。


 ダメージ受けちまった。

 自分のHPバーを見る。

 半分以上も減っている。


 これは回復しないとヤバい!

 もう一発くらったら死ぬ!


「下がって!」


 モー二が焦ったように俺に指示を出す。

 ガントが再び挑発でヘイトを上乗せしてくれた。

 何とか足を引きづりながらモー二の近くに行く。


「スマン!」


「気をつけなさいよ! さっき発狂状態になるって言ったでしょ? あぁいう時は距離をとって削らないといけないの。勉強になったでしょ?  ヒーリング!」


 身体を暖かい光が包み、HPが回復する。


「油断大敵……最後まで…………ガンバ」


 イブがグッとガッツポーズをして応援してくれている。

 クソッ。情けないねぇ。

 攻撃を食らっちまうとは完全に油断した。


 イブに癒されるわ。

 このままくたばってられねぇよ。


「うしっ。もういっちょ行ってくる!」


 駆け出してビッグベアに向かっていく。

しかし、狂乱状態で縦横無尽に攻撃されるため中々近づけない。


 初のエリアボス討伐は終盤を迎えている。

 もうすぐだが、無事に討伐できるか。

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