第6話 北条一・国際貿易

 第二次世界大戦中、北条一凜ほうじょうかずり署長の祖父は、かつて満州国に出兵していた。


名前を【北条一ほうじょうはじめ】と言う。

階級は陸軍中佐で作戦参謀の一員。

主に財政管理を任されていた。


 満州事変の後、やがて日本が敗戦国となり、即座にソ連軍が満州に向けて進行してきた頃、只一人、いち早く帰国準備していた北条の手元には金の延棒がごっそり乳母車うばぐるまに隠されていた。


「日本は負ける」


ドイツの科学者より北条一は

化学・物理学に基づいたオッペンハイマーの兵器的おとぎ話を早い段階で教えられており日本の軍部にも報告していて

中国の頼りない鉄道を主に脱出計画を立て

奉天から鞍山、大連から旅順の道筋に脱出のための中国人協力者を作っていた。


小さなイザコザこそ数回あったが南部式拳銃の威力でかわし

中国人に変装して、ひっそりと鉄道と馬車を使っての移動が主だった。

中国・ソ連軍に見つかることもなく

中佐の特権により金塊を難なく帰国船に乗せて日本へ脱出。


傲慢な日本帝国軍人の根拠のない虚言は罪深く

対、中国・ロシア前線で食べ物も弾薬もない日本軍の上官も部下も、満州の仲間も


 皆、死んだ。


 そして戦況により日本の僻地へきちに降り立った北条一は軍の金塊とともに行方不明となった。


金塊をのこぎりで小さくし、幾許いくばくかの現金に変えて、

日本の未来と自分自身の未来を考えては答えを出せずにいた北条の前に

突然、大日本帝国陸軍の元・部下を名乗る宇宙人グレイ三人が現れた。


名前は【ナ・ム・サン】とそれぞれ名乗った。


三人の異形の者は北条一に対し

「いま手元に有る金塊を百倍でも千倍でもしてみせる」

言うが早いか

北海道苫小牧のアイヌの地にあった掘っ立て小屋いっぱいに金塊を手品のごとく増やしてみせた。


 神々の住まう地下帝国『アガルタ』から来た三人には

情報のダビングやコピー・クローンなど、

お手の物のテクノロジーがあって錬金術は、造作もない作業だった。


「我ら三人は1945年にソ連軍の手により捕虜となった大日本帝国軍人だ。

そして捕虜収容所に向かう列車から三人で飛び降り、

脱走してシベリアの見知らぬ森で、迷いながら逃げる途中、

いきなり戦場に飛び出してしまい、未知の戦闘に巻き込まれ瀕死の重傷を負った時に、善意あるアガルタの使者に救われ、現在がある」と言う。


シベリアで戦闘した未知の敵は『月の使者』で対抗は北極圏地下帝国アガルタの神々

そして瀕死の三人に、ある提案がなされた。


「死にたくなければ、このグレイの体に魂ごと入れ」と


月の宇宙人に銃撃され元の体はもう持たない、ならば魂ごと、このグレイと呼ばれる人工生命体に入れと、アガルタの神々が三人の大日本帝国軍人脱走兵に道を示した。


 死んでしまうと、あの世からお迎えが来てしまう。


本当はアガルタのテクノロジーで人間の体を時間をかけて修復することは充分可能だった。


 後に「人間の体に入れ替わっても良い」アガルタの住人たちに

人型・日本人タイプのアンドロイドに魂の入れ替え提案されたが


なんと脱走兵三人は思いもよらない運命とグレイが月で経験した記憶やテクノロジー・タイムスリップ等の知識も同時に手に入れたのを気に入ってしまい


「俺たち、このままでいいです」


ナ・ム・サンの三人がアガルタの住人たちをニヤリとさせたのは、意外な展開だった。


三人の新しい生命体に【ナ・ム・サン】と名づけたのは

アガルタの地下帝国にすむ日本の忘れられた神々のひとり


『ヒロミチのみこと』であった。


 ヒロミチの尊は、かつて荒ぶる神と称されるスサノオの尊やヤマトタケルの尊の眷属けんぞくで格闘や武術に長けているだけでなく、伝承や粋な精神を重んじる洒落の効いた日本の神だ。


 月は何百億年も前から存在する人工天体で月の内部には希望する太陽系・銀河系の知的生命体が百万単位で住んでいるコロニーだという。


 月の裏側には、内部コロニーの出入り口が無数にあって、いろいろな種類の宇宙人が居住しており、地球上に住むすべての人間をひとり残らずモニターしている。


 地球上の人類は、あらゆる星で発生した罪深い魂たちの五感を用いた人型の器であり、そのため短い寿命の肉体を持ち、食欲・物欲を中心とし貨幣経済を根本とした世界を形成、各宇宙人の劣悪な魂の修行の場となっている。


 修行とは聞こえは良いが、結局のところ劣っている魂は何度でも試され、おしい魂たちも誘惑に負けるので魂の進化は非常に複雑で呆れるほど時間が必要だった。


月の住人は過去において神話に表されるように、人類の争いに加担して来た。

その結果、戦闘がエスカレートして何度も地球人類は滅亡してきた。


 古代の地球人にとって高度テクノロジーを駆使する月の住人たちは神に等しい存在であった。


 本当の全能の神は別にあったっとしても・・・


 月においてグレイは、地球人の言うところのアンドロイド。

人工知能を搭載し、動く心臓があり、論理的な判断のもとに行動し命令に従うアンドロイド。


 地球人類がナノ世界に目を向けていない時代。


人間の肉体が滅び脳が崩壊、全ての記憶が消えるはずなのに

その後の霊体には、生きた記憶が残っていて、懐かしんだり、悲しんだり、憎んだり、恨んだり、後悔したりして冥界・地獄へと行く。


 ということは物質とした頭脳がなくとも霊魂に、しっかりと記憶情報や感情があるということだ。

各星の宇宙人たちは、その霊界がどこにあって、どんな場所なのか調べていた。


だが、それは容易ではなく、全知全能の創造神ヤハウェにロックされているようだった。


 そして月のレプティリアンやアヌンナキと呼ばれる存在が地球人の肉体と霊魂の研究の段階で肉体よりも転生を繰り返す霊魂・霊体の構成や記憶に残酷な手術を加えようとした時・・・


 霊界の神々・そして地球の地下に王国を築くアガルタの神々に反感を買っただけでなく、月の住人グレイ・アンドロイドの頭脳が異常をきたした。


つまり地球人類の霊魂に対し倫理ある『秩序』を求めたグレイたちが月で反乱を起こした。


地球人にとって『善意あるグレイ』が多数のスペースシップを略奪して

月の裏側から地球の北極圏・地下帝国アガルタに亡命してきた。


その亡命してきたグレイ達には知性はあっても感情や魂が不完全だった。


太古の昔、月の住人が非人道的・非倫理的に実験を繰り返し地球の研究を始め人類監視モニターシステムの【月】を建造し置くことはできても・・・


 太陽系を作り地球を設計し自然の法則を生み出したのは月の住人ではなく、大いなる創造神【ヤハウェ】があることは各惑星の宇宙人たちも勘付いてはいたが、誰もヤハウェの存在を証明してはいなかった。


いにしえの地球人に神々と思われた月の住人は、偽りの神で

【ヤハウェ】ではない。


アガルタに住む、人類に忘れられた神々と量子コンピュータAIによる判断で

月より地球に亡命してきた三人のグレイ


『ナ・ム・サン』の体に偶然、瀕死の日本帝国軍人の魂が入り、北極圏の地下にある『アガルタ』からテレポーテーションして

三人が一凜署長の祖父・北条一にコンタクトしたのは

1945年8月5日だった。

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