第2章 日々思うこと ③

 そして週末がやってくる。


 ようやくやってきた休日。


 ゆっくり休んで、平日の疲れを癒して……などということが出来ようはずもない。


 土曜日も日曜日も仕事は休みだが、育児と家事に休みはないのだ。


 育児も家事も仕事だと考えることに、違和感や異論のある人もいるかもしれないが、僕は仕事と割り切った方が、気持ちが楽だった。


 結婚し、子どもが生まれた以上、必ずやらなければならない親という仕事。


 それが休めるのは休日ではなく、唯一子どもたちが寝たときだけだ。


 むしろ休日の方が大変だと感じることもある。


 土曜日か日曜日のどちらかは、大概奥さんの実家に顔を出している。僕の実家には二、三週間に一回ぐらいのペースだ。祖父母がいれば、子どもの世話に手を出してくれる人間も増え、多少息抜きができるが、自宅にいるときは子どもの相手をしつつ、家事もやらなければいけない。


 僕は休みの日にトイレ掃除とお風呂掃除をしている。

 それ以外にも洗濯はいつも通りしなきゃいけないし、奥さんは、普段子育てしているとなかなか手が出せないところの掃除や整理をしなきゃいけない。


 しかし、子どもも両親がいるから甘えたいし、遊んで欲しい心理状態にある。


 僕たち両親も、子どもに元気いっぱい遊んで欲しいから、庭で遊んだり、公園に行ったり、散歩したりと一緒に出掛ける。


 そればかりだと親が疲れてしまうので、テレビを見る時間もある。


 虎徹は特撮ヒーロー番組が好きでよく見ている。


 土曜日や日曜日の朝にやっているその類の番組は録画してあるし、最近は据え置きのゲーム機をインターネットにつなげ、会員だと無料で見られる映画やビデオから、好きな特撮ヒーロー番組を見ている。


 休日の一番の難関は、虎徹が眠くなってきたお昼過ぎだ。

 昼寝をすればいいのに、遊びたい気持ちが勝ってしまい、寝ない。


 あれもやりたい、これもやりたい。あれも見たいし、これも作りたい。


 ダンボールで工作したり、絵の具を出して色塗りで遊んだりもするのだが、親も疲れてしまって、なかなかすべてに付き合いきれず、イライラしてしまうことが多いのだ。


 他にも、お昼ご飯を食べにショッピングモールに行けば、そこでおもちゃが欲しいと駄々をこね、お菓子が欲しいともめる。


 だんだん親にも気持ちの余裕がなくなって、子どもを叱ってしまう。僕の場合、平日よりも休日の方が子どもを叱っていることが多いような気がする。


 時に親も反省し、子どものやりたい気持ちに向き合えるときもあるが、なかなか毎回というわけには行かない。


 僕がイライラしているときには奥さんが、奥さんがイライラしているときには僕が冷静になるように心掛けてはいる。それがうまく行くことも多いが、逆に相手が些細なことで子どもに苛立っている様子を見て、こちらの腹が立ってくるなんてこともある。


 そうして休日も過ぎていく。


 子どもへの愛おしさと苛立ち。


 どんなに愛おしく感じても、苛立ってしまうのだ。

 その二つの感情はプラスマイナスの関係ではなく、まったく独立して存在している。


 愛憎並び立つ。


 あるいは可愛さ余って憎さ百倍か。


 むしろ、互いに相乗効果すらあるのではないかと感じることがある。


 そんな子育てを、僕は自分一人では抱え込めないなと思う。


 僕は、子どもが好きな方だ。それでも難しく感じる。


 だから、奥さんがすべて抱え込んでしまうような状況だけは作りたくない。

 子育ては、夫婦二人が役割分担をしながら、時にフォローし合いながらすべきだ。


 僕の、この子育てに対する考え方が正しいかどうかは分からないし、それぞれの親ごとに考え方はあると思うのだが、そもそも子育てに正解はないとも思う。というか、同じ子育てをしても、子どもによって反応は違う気がするし、最終的にどんな子に育つかは分からない。


 だけど、昔から言われる『親の背を見て子は育つ』という言葉は真実だと、僕は考えている。自分がそうだったから。だから、きっと、子どもの事を真剣に考えて向き合っている姿勢は、虎徹にも忍にも伝わるはずだ。そう考えるようにしている。


 こうして一週間が終わった。


 また、明日からは、慌ただしい一週間が始まる。そして気が付けばまた休日。


 本当に、子どもが生まれてからの日々は、矢のごとく過ぎて行ってしまうのだった。

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