第4話 夕のいとこ
日曜日当日、夕と温海と出かけるために待ち合わせをするけど
今日は珍しく、わたしの家の最寄り駅が待ち合わせ場所に。
わたしの家は夕と温海の住んでいる街と学校のちょうど中間。
だけど、家を出るのが遅いわたしは夕と温海とは違う電車なので
登校時は一緒ではないけど、帰りは一緒だけどわたしの方が先に着くから
あまり2人と長くいられないけどね。
しかし、出かけるのになんで家の最寄り駅なのかな。
夕と温海の家の最寄り駅と比べたら、小さい駅で駅前には
コンビニと小さいスーパーがあるぐらいで、後は住宅地でお店がないし。
それに、今回は学校の最寄り駅であるわたしの住む市の中心駅に行くから、
2人が乗る電車に乗る予定だったけど、夕が昨日待ち合わせ場所を
急に変えたから何かあるのかな。
夕と温海が乗っている電車がつく5分前に駅について、改札前で待っている。
日曜日なので降りる人が少ないけど、電車が来る前に改札を通ったのは数人だけ。
夕と温海が乗った電車が着くと、やはり数人が通ったぐらいであったけど
その後に夕と温海が来たのであった。
「やっほーふたりもと」
わたしが手を振ると、温海が恥ずかしそうにしてる。
「もう、恥ずかしいからそう言うのやめてよね」
「わたしだけだから別にいいじゃない」
「そうだけど……」
「温海ちゃんは恥ずかしがり屋だからね~」
「そ、そう、わたしは恥ずかしがり屋なの」
温海が顔を赤くしてるけど、ああもう温海でご飯三倍はいけるなぁ。
なんていうか、お約束の可愛さを出してくるよね。
これがあるから、温海は好きだよ。
「ねぇねぇ、温海を誕生日プレゼントで貰ってもいいかな?」
「駄目だよ~誕生日プレゼントはわたしとセットだから~」
夕がそう言うと、温海がしまったと言う顔をしたけど……もしかして
誕生日プレゼンって2人なの!?
お兄ちゃんが読んでたラブコメ漫画で「わたしがプレゼント」って話が
あったけど、まさか2人がそんな事をするなんて。
もしかして、わたしの家の最寄り駅にしたのは……わたしの家で
裸エプロンやお風呂で身体を洗ってくれるって事なの!?
「2人も気持ちはわかるけど、さすが2人の裸エプロンやお風呂で身体を洗うのは
いくらわたしでもまだ早いし、温海がそんなことできると思わないよ。
それに、今日は両親が家にいるから無理だよー」
わたしが照れながら言うと、温海が「何言ってる?」って目でこっちを見てる。
「あのね、そんな訳ないでしょ」
温海が呆れてため息をつくけど、2人がプレゼントって言うのは本当なんだ。
「ごめんね~文乃ちゃん。わたしと温海ちゃんがプレゼント
って言うのはわたしたちと一緒にお出かけするって意味だよ~」
「そうだよね、温海がエッチな事する訳ないし、どちらにしても両親がいるから無理だからね」
「なんか、その言い方だと、ご両親が居なければやったみたいだじゃない」
「今日家族いなんだ……っていったら、そう言う意味でしょ?」
「どういう意味よ?」
何時もなら恥ずかしくて「どどどど」としか言わない温海だけど
今日はなんかツンモード。
ま、日曜の午前中に駅の改札の前で周りに人がいないと言っても
こんな話をしたらツンモードになるよね。
「温海がツンモードだからこの話はやめるけど、何でここで待ち合わせなの?」
「あ、その事だけどね~」
ここを待ち合わせにしたのは夕のいとこが結婚をするので、結婚祝いを
両親の代わりに行って欲しいと言われてたからだそうだ。
そのいとこが今日、実家に戻ってきてるそうだけど、夕の両親はどうしても
外せない用事があって夕に頼んで渡して欲しいとなったからだった。
「ごめんね~、いとこの家はこの駅が最寄りなんだ~」
「そうなんだ」
「駅から歩いて10分ぐらいだけど、方向は文乃ちゃんの家と違うからね~。
今日は文乃ちゃんのための日だけど、両親の頼まれ事だから~ごめんね~」
「親の頼まれ事じゃ仕方がないよ」
「ありがとね~それじゃ~行こうね~」
駅を出て夕のいとこの家に向かう。
駅前の道から大きな国道に出て、国道の隣を流れる川の桜並木を歩く。
この桜並木は国道に沿って2㎞以上続くので、桜が咲く頃はとても綺麗で
桜の名所となっている。
「ここの桜は綺麗なんだよね」
「ここの桜並木は知ってるけど、桜の咲くころには来た事ないわ」
「わたしはいとこの家に行った時に~車の中から見たぐらいかな~」
「わたしは休みの日に散歩がてら見に行ってるよ」
夕と温海がわたしの家に来るようになったのは、放課後キス事件以降だから
桜が咲く頃には来た事ない。
「来年の桜の咲く頃、皆でお花見に来ようか」
「そうね、是非したいわ」
「その時は~いとこも誘ってもいいかも~。わたしと同じ年のいとこもいるから~」
夕は結婚するいとこの妹さんが同じ年だそうだ。
学校は違うけど、お盆や年末年始に今もあっているそうだ。
「月ちゃんっていうけど、年上の彼女さんがいるんだよ~」
「へーそうなんだって……え、そうなの!?」
思わず流そうとしたけど、夕のいとこも百合カップルだったとは。
「去年から付き合ってるそうだけど、彼女さんとはまだあった事ないんだ~」
夕はニコニコしながら言ってるけど、わたしだけじゃなくて温海も驚いてる。
「ねえ、温海も今の話知ってた?」
「いとこが文乃の家の近くに住んでるのは知ってたけど、彼女さんが
いるって事はしらなかったわよ」
夕の後ろで温海と小声で話すけど、温海も知らない事だった。
「夕のいとこと会うのはあたしも初めてだし」
「そうなんだ」
温海も夕いとこには会った事ないそうだけど、どんな子なのかは気になる。
夕のいとこの家に到着して、チャイムを鳴らすと20代のお姉さんが
出て来たけど、この方が今回結婚する夕のいとこさんだそうだ。
「夕ちゃんいらっしゃい」
「
これは両親からの結婚祝いになります」
「ありがと、夕ちゃん。おじさんとおばさんは用事で来られなから
夕ちゃんが持って来てくれるって言ってたけど、わざわざ悪いかったわね」
「いえ、友達の家の最寄り駅で、待ち合わせをしていましたから」
「そう。本当は上がって欲しいけど……彼女さんとお友達が気を使うか」
彼女さんと言ってたけど、温海と付き合ってる事は話してあるようだ。
「これから出かけますので。ところで、月ちゃんはいますか?」
「月は今日は彼女とデートなのよ。あの子が女の子であれ、恋人を作るとは意外だけどね」
どうやら、同じ年のいとこの月さんはデートで留守らしい。
ただ、夕といとこの月さんが同性と付き合っている事を気にしてないみたい。
「そうそう、夕ちゃんの彼女はどっちなの?」
「わたしの彼女の温海はこちらです」
夕は温海の手を引いて陽さん紹介する。
「大牧温海です、よろしくお願いします」
「あなたが温海ちゃんね。小さくてかわいい子ね~。わたしの妹にしたいかもね~」
「駄目ですよ。温海ちゃんはわたしの彼女ですから」
「冗談よ。温海ちゃん、夕ちゃんと付き合ってくれてありがとね」
「こ、こちらこそ、わたしと付き合ってもらって恐悦至極です」
温海は緊張してるけど、陽さんも夕と似た感じみたいでやはりいとこだな。
「となると、そちらはお友達なのね」
「川奈文乃といいます」
「駅が最寄りってことは、どこに住んでるの?」
わたしは住んでいる所の地名を言うと、地元だけあってすぐに分かった。
「そこなんだ。歩いてくるとちょっと遠いけど、来られる距離よね」
「はい、この辺りは桜が咲く頃に散歩で毎年来てます」
「それだと......月の事見た事あるかもね」
陽さんはスーパーのある交差点近くで、桜並木のベンチに座っている
女の子を見た事ないかと聞かれたけど、そういえば3年ぐらい前からベンチに座って
ぼーとしてるだけのかわいいというか、綺麗な女の子を見た事あるけど
それってまさ……。
「綺麗な女の子なので覚えていますが、もしかしてそれが月さんですか?」
「そう、それが月。月って面倒くさがりというか、動くのが億劫な子で
学校から帰ってこないから心配して探しに行ったら、ベンチに座って帰るのが面倒って言ってのよ」
「そ、そんなんですね」
夕のいとこがそんなキャラとは思わなかった。
夕はおっぱいの大きいほんわかお姉さんキャラだけど
ほんわかどころか、動くのは面倒なのはすごいな。
ただ、物凄く綺麗な子で、桜並木を夕のいとこの家の辺りまで来るのは
年に1回なんだだけど、それでも記憶に残るぐらいだからね。
ただ、そんなに面倒くさがりだと思わなかったけど。
「今も面倒くさがりだけど、昔と比べたらかなりよくなったわ。
これも彼女ができたからなのかな」
陽さんはしみじみとするが、夕が時計を見てそろそろ行く事にした。
「すみません、わたしたちはそろそろ行きます」
「そうね、遊びに行く途中だったよね。
夕ちゃん、ちゃんと受け取ったからおじさんとおばさんによろしく言っておいてね」
「わかりました、伝えておきます」
「それと、温海ちゃん、夕ちゃんと付き合ってくれてありがとね。
あと、文乃ちゃんも家か近いから、夕ちゃんと温海ちゃんと一緒に遊びにきてもいいわよ」
「わかりました」
「陽さん、ご結婚おめでとうございます。では、わたしたちはこれで失礼します」
「気を付けて遊んできてね」
「「失礼します」」
夕のいとこ家を、駅へ戻るけど……夕が普通にしゃべってる所を初めて見たけど
夕ってちゃんと喋ると見た目通り、お姉さんみたいだなぁって思った。
でも、いとこの家からはなると、いつものしゃべり方に戻ったけどね。
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