第58話 キメラ現る
テロリストの乗る船の最奥にて2人の男がテロの準備をしていた。迷彩服で髭面の男と特攻服のような龍の刺繍を施された白衣を着るアフロの科学者っぽい男。そいつらがいよいよテロをやらかそうとしていた。
ニャン吉たちが鉄の扉を開けるとキィという金属の擦れる音が響いた。その微かな音にパッと反応して振り向くテロリスト2人。扉を開けたのは、猫2匹とその背中に乗る鷹であった。
扉の後ろにワニと狼がいるとも知らず、猫に和むテロリスト。
「猫ちゃんかわいいねー、食べちゃいたい」
迷彩服の男がよく日焼けしたゴツい手をニャン吉に差し出すと、動脈が走る手首を噛みちぎられた。
吹き出す血に悲鳴を上げる男。それが突撃の合図となった。
トラ猫の寅太郎とワニの枯葉は迷彩服の男の両ふくらはぎに噛みついた。枯葉はこんなこともあろうかと海で練習していたデスロールをここでおみまいする。寅太郎の噛みつきも凄まじく、ニャン吉には遥かに劣るがサバンナのネコ科の動物と同程度である。
もう1人のアフロ博士へは鷹の伊賀と狼の餓狼が襲いかかる。伊賀は容赦なくその目、喉元、そして頭を鉤爪で重点的に狙う。自在に飛びながら緩急をつけて鉤爪で顔を裂いていく。餓狼はストレートに
両者、みるみる全身を血で染めていく。やがて、叫び声も弱々しくなってきて、その場に倒れ気絶した。
寅太郎は2人が気絶したかを確認するため、顔面にニャンションをシャーとかけた。猫の尿は非常に臭い。それでも無反応だった。
『よし、これで僕らの役目は終わった。後は、ポリ公にでも任しちょけ』
そういうと、寅太郎たちは踵を返した。
だが……その時、後ろでガラスの割れる音がした。パンッと勢いよく弾けて、何かが動いているようだ。恐る恐るニャン吉たちが振り返ると明らかに自然発生しそうにない生物が唸り声を上げて立っていた。
虎の身体に翼が生えて、尻尾が蛇となっている。全身ガラスカプセルの液体で濡れており、ニヤリと笑った。
『こ……こりゃ』
さすがのニャン吉も驚いて声にならない。それ以上に気になったのは……。
『ちっちゃいのう! お前産まれたばっかなんか!?』
その生物は子猫サイズで、ミーミー鳴いていた。
ニャン吉の側まで寄ると、パパと言ってすがってきた。目をまんまるにしてその生物を見るニャン吉。
予想外のことにその場にいた皆が固まった。取り敢えずニャン吉はその不思議な生き物を頭の上に乗せて連れて行くことにした。
『次回「発破」』
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