第48話 膨れ上がる勢力

 打倒鹿鬼組、極楽動物同盟。その先にあるのは理想郷なのか……。


 市内入りしてから2日目。ニャン吉の元には都市部に住む動物たちが集まってきた。


 ニャン吉の名前を出すのはさすがにまずい。代わりにリーダーとして立てたのは、元々縮景園の動物たちを束ねていた焦げ茶色のドーベルマンである。


 彼は元警察犬で空港の麻薬探知犬として活躍していたのだが……。ある時、料亭で薬物シャブシャブパーティーをしていた警視総監の鞄から麻薬を発見してしまったため、警察犬を即刻首になったのである。


 警視総監はその料亭で、ある会社の社長の馬鹿息子を無罪放免にするため、賄賂を受け取っていたのである。その馬鹿息子は成人式で灯油を撒いて火を放ったため、町は全焼したという事件である。


 ドーベルマンが首になった時の罪は「誤って警視総監様のお鞄に手をれて、お麻薬を無断で取り出した罪」である。権力の乱用も薬物の乱用もここに極まれり。


 首になったこのドーベルマンは年越しのカウントダウンが0になった瞬間に産まれたため、誕生日どころか誕生した年も曖昧であった。それで、戸籍が曖昧である怪しい存在というのが警察犬を追放された表向きの理由である。


 12月の誕生石はターコイズ、1月の誕生石はガーネットだったため、つけられた名前はタコネットである。警察犬だったため検非違使けびいしという姓を賜り、検非違使タコネットと名乗る。


 タコネットは各地を周り、警察犬時代に鍛え上げたその鼻で相手の虚実を見抜いていった。今度もその鼻で相手の魂胆を見抜いてから仲間にしていった。


 やがて、様々な動物に、様々な鳥、さらには爬虫類などが集まってくる。表向きはタコネットがリーダーであるが、もちろんニャン吉が裏のボスである。ニャン吉はニルヴァーニャ・ニャーランダーという偽名を名乗った。


 集まった動物たちの中に白と黒の混ざりの猫がいた。彼の名は、コミカルといった。


 3日目の朝、コミカルはニャン吉に宇品港へとついてきて欲しいと頼んだ。

『ニルヴァーニャ、この海にゃどんなもんが沈んどんかの』

『そりゃ、船の残骸とかじゃろ。後は知らん』


『ははは、この海を覗いとったら何か見えてこんかの』

『なんも見えんけどの』


 海を覗き込むコミカルに釣られてニャン吉も海を覗き込む。

『もう1回聞くがの、この海にゃどんなが沈んどんかの』

『どんなって』


 突如コミカルはニャン吉の足にロープを巻き付けてきた。

『なんするんや!』

『ははは、鹿鬼組潰すついでに極楽動物同盟も潰す気じゃろうがニャン吉』

 まさか本名がバレていたとはと驚愕するニャン吉。後ろ足の自由を奪われ、背中に海を背負う。


『お前本当は誰や!』

『極楽動物同盟の頭目、マタタビタバコの管理者、黒竹くろたけニャン兵衛べえじゃ』


 絶体絶命のピンチ。さらに追い打ちをかけるように猫たちによって縛られたワニが運ばれてくる。

『ワニ!? お前どしたんや』

『やられたわ。やっぱりマタタビタバコにゃ首を突っ込むんじゃなかったわ』


『次回「やられた」』

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