第45話 ニャン吉の市内入り
鹿三位が率いる鹿たちに味噌汁とチバリンも同行する。文化会の連中を救うスパイミッションである。そんな中、1匹別行動をするニャン吉。
鹿三位たちと別れた後、ニャン吉は何を思ったのか広島市内の中心地を目指す。
中区の町に入るとさっそく縮景園へ。広島県立美術館の真ん前にある縮景園は、都市部にある自然といったところで緑豊かな庭園である。木々の中を通り、池に架かる橋を通って、集まっている動物たちへ話しかける。
『よう、なんしよんや』
『なんじゃあ、われ! しごうされたいんか!』
気さくに話しかけるニャン吉へ警戒の目を向ける。
お近づきの印にと、魚屋の魚を動物たちに振る舞った。すると、ブツブツ文句を言いながらも魚を貪り食う野良犬や野良猫。さらには、烏や鳶などもいる。
新鮮な魚に喜びを隠せない獣たち。
『おう、白猫。こりゃどっから獲ってきたんや』
『そりゃ、俺の仲間になるんじゃったら教えちゃるで』
『ほう、おもろいのう。仲間になってもええがどうやってやったんか見てからじゃ』
『じゃあ、ついて来いや』
面白半分で動物たちは、ニャン吉についていく。
縮景園から南下して紙屋町という町の本通りという商店街へと来た。ニャン吉は魚の売られている店の前で立ち止まる。動物たちには遠くから見ておけと指示を出しておいたため、建物の影からニャン吉の動きを見ている。
『あの白猫なんする気や』
『なんかやらかしたら、あんなんほっといて逃げるで』
デパートの中へ、さも当然と言わんばかりに堂々と入っていくニャン吉。出入り口の辺りには、生の魚が陳列している。
ヒョイと魚が入れられたガラスケースの上に飛び乗ると、縮景園のゴミ箱で拾った針金で器用にケースの鍵を開ける。そして、中から数匹魚を咥えてケースの上に取り出した。
『あの白猫……何匹盗む気や』
『あれじゃただの泥棒猫じゃろうが』
『あんなん持ち運べんで』
ケースの上に並べた魚たち。それに気付いた魚屋の主人。邪王猫な笑いを浮かべるニャン吉。すると、あろうことかニャン吉は魚屋の魚を爪でほじくっていくではないか。
「お……お前なんしよんや!」と怒声をあげる魚屋。
ニャン吉は魚屋の魚を1匹ずつほじくってズタボロにしていく。魚を見るも無惨な姿に変えるとニャン吉は、伸びてくる魚屋の主人の手をスルリと逃れてエスカレーターから2階へ上がっていく。
白猫を捕まえようと、魚屋の主人がエスカレーターの登りを駆け上がって行くが、その時すでにエスカレーターの下り側へと飛び移っていたニャン吉。彼は悠々と正面玄関から出てきた。
それから、ゴミ箱へ廃棄されたズタボロの魚を動物たちに回収させて作戦終了。
『うまくいったじゃろう。相手に魚を捨てさせるんがポイントじゃ』
『……おどれはクズじゃ』
『次回「噛みついて」』
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