第44話 極楽動物同盟
呉の廃工場を住処とするワニの情報屋から極楽動物同盟の情報を買う鹿三位。
もみじ肉をいくつも机に積んで、極楽動物同盟の情報を話すように急かす鹿三位であったが。
『極楽動物同盟か……』
『早う話してくれ。頼むわ』
顎に手を当てて黙りこくるワニ。しばらく考えてから、口を開いた。
『……3日ほど待ってくれえや』
『なんでや』
『さすがのワシでも……ちょっとの』
『ヤバいんはよう分かっとる』
『いや、そうじゃないんよのお。……恥ずかしい話じゃが、肝心な情報がまだ仕入れてのうて』
『マタタビタバコの頭目じゃろ』
『その通りじゃ……、それ以外のことなら今すぐでも分かるんじゃが』
『以外はだいたい知っとる』
極楽動物同盟とは、いくつかの組が連合した大組織である。各組長である頭目と呼ばれる連中を統括するのが大頭目であり、大頭目は日本猿のオスで名前は「
チャンガラがいくつかの組を率いているのは、広島の動物には周知されている。問題は、その頭目たち。特に怪し気なマタタビタバコを裏で販売している頭目については、鹿三位だけではなく鹿鬼組の誰も詳しく知らないようであった。
『マタタビタバコは闇が深いけえのう……』
『臆したんか?』
『馬鹿言うなや! 燃えてきたで!』
『なに!? どの辺が燃えとるんや!』
『お前なにいいよるんや鹿三位! 燃えとるんは心じゃ心』
『お……おお』
シカッピーはニャン吉にコソコソと囁いた。
『極楽動物同盟にゃ放火担当の頭目もおっての。昔地御前にある鹿鬼の粉紅葉倉庫に火を放っておおごとになったんじゃ』
『その頭目はどうなったんじゃ?』
『うちとヤツらの全面対決になる直前で、首だけになって送られて来たんじゃ』
『嬉しそうに語るの、お前』
契約が成立するとワニは事務室の窓からにゅるんと外へ出ていった。
ニャン吉たちも皆の待つ廃工場の外へ出ていった。
鹿三位はニャン吉へ言った。
『私はこれから文化会の連中を救いに行ってくるで。江田島から厳島に侵入するつもりじゃ』
『ほうか……』
『お前はどうするんじゃ?』
『……ちょっとやりたいことがあるけえ』
『分かった。じゃあ、3日後宇品港で会おうで』
『おう』
鹿三位は、鹿たちと味噌汁、チバリンを連れて厳島へと戻った。別れたニャン吉は1匹でどこかへ向かった。
『次回「ニャン吉の市内入り」』
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